召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

うどん五段

文字の大きさ
上 下
92 / 132
第四章 生まれ変わるジュノリス大国とジュノリス王!

92 ジュノリス王との対面と、暗黒時代を作る二人の候補との出会い。

しおりを挟む
 ジュノリス大国は広大な土地や農地もあり、また魔物も多い為冒険者をよく見た。
 魔物の素材もそれなりに出回っているのだろうが、国内で循環しているのだろうか。
 小説などで見るダンジョンも複数あり、そこで鉱石が取れたりもするらしい。
 冒険者はそうやって金を得る。
 また鉱山でも魔物が出るらしく、鉱山夫達もある程度強いが、それでも難しい場合は冒険者を派遣して倒して貰ったりしているらしい。
 ラスカール王国にも鉱山はあるが魔物が出たと言う話は聞いていない。
 無論ダンジョンもない。
 そこが大きな違いだろう。
 あればもっと稼げる道はあるのだが、ない物は仕方ない。

 テリサバース宗教は聖女がいて、未来を視ることが出来るらしい。
 法王もいるが、聖女の言葉を聞いて法王がそれを他に伝える事もあるのだとか。
 次世代となる二人を見つけたのも聖女だが、彼女は苦言を示していたのだと言う。

【王太子がいた時代であれば輝く未来があったであろうが、彼等が王に着いた時、国は暗黒の時代を迎えるであろう】

 そう言っていたのだと言う。
 だが王太子がいない今、国は暗黒時代に突入しかけているそうだ。
 こればかりは仕方ない。
 そのきっかけを作ったのは言う間でもなくジュノリス陛下だ。
 国が暗黒時代を迎えるのを見ているしかないのだろう。

 そんな移動も終わりを告げ、城の部屋に通されると着替えを促される。
 陛下たちも着替えをしているそうで、俺とカナエは何時もの良いスーツに身を包み、お互いに気乗りしないが「頑張るか」「そうですね」と苦笑いをした。
 そして侍女が呼びに来るとシュウとノスタルミア女王とラスカール王と共に移動し、謁見の間へと通される。
 恭しく頭を下げ、面倒だなぁと思いつつも表向きの顔を作り「面を上げよ」の言葉に俺達は顔を上げた。
 途端ガタリと立ち上がったのはジュノリス陛下だった。
 俺とカナエを指さし震えながら――。


「ア、ア、アルフォードにカナリア!?」


 そう叫んだのだ。
 それ程までに似ているのかと思ったが、女王陛下が「落ち着いて下さい、ジュノリス陛下。こちらにいるのはそちらが呼んだアツシとその婚約者であるカナエです」と言うと、震えつつ王座に座った。
 だが目線は此方にあり、信じられないと言う表情をしている。


「して、その二人が件の異世界人か」
「後三人程いますが、皆手が離せない状況でしたので私と婚約者のカナエと参りました」
「そうか……声までアルフォードと同じなのだな」
「………」
「そなた達のスキルは聞き及んでいる。レアスキル持ちであると」
「「はい」」
「この世界にはない物を引き出すことが出来るそうだな」
「「はい」」
「うーむ……。我が力も似ているのだが、我らの力の場合【お取り寄せ】と言って異世界より品を取り寄せることが出来る。それに近しいのだろうか」
「それに近しい力とだけ申し上げます」
「ほう?」
「また、俺のスキルは【拠点】というもので、このスキルを使いダングル王国から避難してきた獣人の為のストレリチア村を作りました。」
「と言うと?」
「住民が住む家や商売をする為の店舗は勿論の事、農業用のハウスや家畜用の畜舎や貯蔵庫などを作りました。温泉旅館や貴族の皆様の別荘も作り好評をいただいております。」
「優れたレアスキルを持っているのだな」
「恐れ入ります」
「そちらのカタリアはどうなのだ?」
「カナエで御座います。私も陛下のような【お取り寄せ】に近い力を持っており、私の知識では【お取り寄せ】は食べ物関連が多いですが、私は食べ物関連の他に化粧品や楽器などの商品を選ぶことも可能です」
「どちらも優れておる」
「「恐れ入ります」」
「優れたレススキルに異世界の多大なる知識か……」


 そう口にしたジュノリス陛下に、女王陛下が口を開いた。


「その知識は幅広く、我が国でも特産品となる品を作る為のアイディアを出してくれたりもしております。国内循環だけではなく、国外循環を視野に入れた素晴らしい知識でした」
「ほう、それだけではあるまい? ラスカール王とシュナイダー王の国も大きく変わりつつあると言うではないか」
「それも、アツシ様の知識によるものです」
「国を富ませたければまず国民を富ませろと言う考えは目から鱗でしたし、先にノスタルミア女王陛下のおっしゃった通り、国内循環と国外循環を知った時は衝撃的でした」
「レアスキルだけではなく、国をまとめ上げる為の知識も持ち合わせているのか」
「「「はい」」」


 このままでは少々不味いかなと思い、俺からも言葉を返す。


「とはいえ、私が居た世界で、私は子供達に勉強を教える教師でした。その為の初歩的な知識しか持ち合わせておりません」
「初歩的な知識でこれ程まで変わるのか?」
「その知識をどう生かすかは本人たちの努力とやる気次第と考えております。いい方向へと進んでいるのでしたら、間違いなくラスカール王とシュナイダー王の手腕によるものでしょう」
「ははは! 中々に謙虚な男なのだな、アツシと言う男は」
「恐れ入ります」
「我が国は王太子であるアルフォードが亡くなってから、次世代となる者がいなくなった。これはワシの所為だと理解している。故に劣化版だが力を使える者を二人候補に出したが、テリサバース宗教からは【暗黒の時代が訪れる】とまで言われてしまった。何故あの時アルフォードの婚姻を認めなかったのかと悔やんでも悔やみきれぬ」


 そう言って立ち上がると手をパンパンと叩き、二人の男性が謁見の間に入ってきた。
 二人は俺を見てギョッとしていたが、挙動不審になりつつ礼をし、俺を見ては目が泳いでいる。
 なんだこの感覚は。


「陛下、呼ばれて参りました」
「ですが、何故アルフォード王太子様がいらっしゃるのかお聞きしたく……死んだ筈では?」
「その者はアルフォードではない、ノスタルミア王国より参ったアツシとその婚約者、カナエ殿だ」
「では、異端諮問に掛けてこ奴らを消すのですね!」
「良かった!」
「馬鹿者!!」


 そう謁見の間に広がったジュノリス陛下の声に二人はビビりまくり震えあがった。


「そなたら……まるでアルフォードが生きていては困るような口ぶりだな」
「「そそそそ……そのような事は」」
「そなた達が跡目を継いだら暗黒の時代が訪れると言われているのが嫌でも分かるのう」
「アツシ殿に対して初対面でそのような物言い。我がラスカール王国としてはジュノリス大国を中央の国として認める訳には参りませんね」
「全くですね。無能とはこういう輩の事を言うのでしょうね」
「「む、無能だと!?」」


 自分達よりも幼いシュウに言われ顔を真っ赤にしている二人だが、ヘイリオスとヴォルダークと呼ばれた二人は俺を睨みつけつつ「何で生きてるんだよ」と呟きながら悪態をついている。
 確かにこれでは暗黒時代まっしぐらだろうな。


「この国が暗黒時代にならぬ為に、この二人にラスカール王やシュナイダー王たちの国を持ち直させた話をしてくれはしないだろうか?」
「お断りさせて頂きます。それは時間の無駄と言う物でしょう」
「「な!?」」
「やはりそなたもそう思うか?」
「言っては何ですが、まるで私が生きていては困ると言う素振りでしたし、二人を色々調べたほうが宜しいのでは? 本当にアルフォード王太子は自殺だったのか、他殺の可能性はないのか」


 その言葉に二人はビクリとし、恐る恐る俺の方を見ている。
 後者の方が高いと見ていたのだが、危険察知がビンビン来ている。
 それは多分シュウも同じだろう。
 シュウのスキルは悪意察知に危険察知だ。俺よりも詳しいかも知れない。
 すると――。


「恐れながらジュノリス陛下に申し上げます」
「どうした、シュナイダー王よ」
「私には、悪意察知と危険察知と言うスキルがあります。先程のアツシ様の話のあとからお二人がアツシ様に向ける【悪意】は普通とは異なります。今一度、王太子の死を調べ直した方が宜しいかと」
「な、何を言い出すのだ!」
「俺達が王太子を殺したとでも言いたいのか!?」
「可能性の話です。もし無関係であれば堂々としていれば宜しいのに、何をそんなに慌てているのです? 可笑しいではありませんか」
「「な!」」
「まるで人を殺める為に指示を出した事のあるような悪意の出方ですよ」
「な、なんという無礼な!! たかが獣の分際で!!」
「ヘイリオス!! ダングル王国は獣人の国である事を忘れたとは言わせまいな!!」
「しかし……っ!」
「ダングル王国を獣風情の国、と言うのが貴方の考えなのですね。ジュノリス王よ、私はこの者が王となる事は認めません!」
「なぁ!?」


 王になるには三つの国の国王の許可が無ければ王に選ばれることは無い。
 ここでヘイリオスと呼ばれていた次世代の暗黒時代を迎える王となる予定の者が一人いなくなったことになる。

 ショックで狼狽え座り込んだヘイリオスは呆然としているが、もう一人のヴォルダークは慎重派とみたいが、どうやらそれも違うようだ。
 クスクスと笑い自分に次の王座が回ってきたと思っているようだが――。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...