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第三章 ラスカール王国とダングル王国に光を!!

88 国にとって、民に取っての経済の回し方。

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 ある程度の人数がいて、それぞれが国民をしっかり見れる、声を聞けるものならば、国の発展は望めるのだ。
 理想的ではあるが、それが出来る重鎮と言うのは少ない。
 二人の国が、もっと風通しのいい環境で国を回して行ければいいが……。
 そう思っていると――?


「でも私、ダングル王国の会議を見学していて思ったけど、利権絡みなのかどうか知らないけど、まだ政治慣れしてない若い王を自分達の好きに動かそうって言うのが透けて見えたわ」
「え」
「愚王にしたいのよ。周りの古狸は。賢い王では困るって言うのを嫌でも感じたわ」
「若くて何も知らないから、好き勝手言って思い通りにしようって奴っすか?」
「ええ、シュウ君が反論しても『上手く丸め込めれば』みたいな感じがして凄く嫌だったわ」
「俺もそれは感じた。だからこそのこの勉強会だ」
「そうだったんですね」
「俺がシュウを連れて行く時、明らかな敵意を向けられた。どう追い出してやろうか。どう使い倒して捨ててやろうかと言う感じだったな」
「!」
「何ともきな臭い国だね、ダングル王国と言うのは」
「君の国も人の事を言えないよ」
「はい……」
「分からないから頼みっぱなしでは何時か足元をすくわれるぞ」
「う、そうですね……」


 そう反省する二人の頭を撫でると「反省は終わり、次に生かしなさい」と先生らしく伝えると、二人は「「はい!」」と口にして「互いに頑張ろう!」と頷き合った。


「それに重鎮は多くなくていいんだ。ある程度の専門家が居れば事足りる。確かに知識は武器だが、使い方を間違えた古狸が多すぎる。もう少し新しい風を入れないとな」
「若い人たちの事ですか?」
「古狸の所為で歯ぎしりしている者達はいるだろうな。そう言う者達の方が真摯に国を進めていける事も多い。若い故に暴走しがちだが、それを纏められる利権の少ない重鎮が居ればそれに越したことは無いが、あくまで理想だ。だが、専門家がいるだけで重鎮達、特に古狸は歯軋りして言う事を言えなくなると言うのもまた事実」
「「専門家」」
「それに特化した専門の知識を持っている者達だな。鉱山なら鉱山に詳しい専門家。畜産なら畜産に詳しい専門家。俺が知ってる人だとダングル王国の畜産ならブースさん、ラスカール王国の農業なら農業ギルドのビスコスさんか? 知り合いが少ないから二人よりもっと知識を蓄えてる人がいるかもしれないが、だったら二人に紹介して貰えばいい。ラスカール王国の方には俺は参加していないので分からないが、少なくともダングル王国の場合は重鎮が多すぎる。しかも考えが古すぎて新しい時代になろうかと言うのに時代について行けていない。それならいっそ、新しい風を入れて風通しを良くするのも一つの手だろう」
「「新しい時代」」
「新しい時代と言うのは、君たち若き王の事だよ」


 そう伝えると二人は感極まった顔をして、お互いを見つめ合い頷いた。


「専門家が居れば重鎮たちの声は変わるでしょうか?」
「少なくとも、頭の中の都合のいい住民しか見ていない彼等にとっては痛手だろう。その上で必要なしと考えれば入れ替えを順次していけばいい。古狸の息の掛かってない真摯に国をと思う者はそれなりにいる」
「俺もそう言う人達と一緒に仕事がしたいです」
「私もだ」
「ならまず専門家を見つけて会議に入れることから進めてみると良い。専門家の意見は貴重だ」
「「はい!」」
「それに特に現地に行って調査をしている専門家が良い。机に座りっぱなしで本の知識や数字ばかり見て考えてる奴より、実際に現地に行って調査した者の言葉は重い」
「そうですね」
「確かに言えている」
「俺は今後専門家を交えて会議します。その上で反論する重鎮は抜けて貰います」
「俺もそうしてみよう。新しい風を入れて時間だけが過ぎる会議ではなく、実のある会議がしたい」
「なら、そうしていくのが良いだろうな」


 二人の意見に俺も同意すると、「国に帰ったらやる事が出来た」と目をキラキラさせている。
 やはり古狸共との延々と同じ事の言い合いは疲れるだけだろうからな。


「話しをさっき少し話した、第三段階の輸出と輸入に進めるぞ」
「「はい」」
「輸出は自国の物を他国に売り、輸入は他国の物を買うことだ。輸出に出すのはその国の特産品が多いが、畜産が上手く行けばダングル王国が他国、それこそラスカール王国やノスタルミア王国に肉を売って外貨を稼ぐと言う方法だな。ラスカール王国ならば冒険者が持ってくる魔物の素材を他国に売ると言うのも一つの手だ。」
「「なるほど」」
「ラスカール王国の場合、ノスタルミア王国のボルドーナ商会を通して輸入をしていると言っても過言ではないだろう?」
「確かにそうだが、それでも国全体が欲しいだけのものが入ってくると言うのは少ない。そもそも貴族連中が逃げ出した後で」
「だからこそ今がチャンスだ」
「と言うと?」
「貴族連中が居ない今、ボルドーナ商会にもっと沢山の品を注文して輸入し、国民に還元すると言うやり方もある。民が潤い一部の者達が儲かって行けば、その内豪商と言われたりして行くだろう。その豪商が出来たら、今度は他国に自分たちの物を売りに行きたいと少なからず思う筈だ。そしたらボルドーナ商会の様に他国に輸出していくことも可能になる。商売相手はなにも貴族でなければならないと言う決まりもない。相手の必要としている物を把握し、その土地柄に合った物を輸出するのも一つの手だ。畜産が盛んなダングル王国にラスカール王国が魔物の肉を売ろうとしても中々売れないだろう?」
「「確かに」」
「上手く言えば、第二段階までは国内で循環する事、第三段階では国同士が循環していく事なんだ」


 そう教えると二人はノートに書き始め思わぬ視点での思わぬ方法と言う感じにとらえているのだろうが、国同士の循環と言う言葉はそれだけでも利点はある。
 国同士が助け合い、循環して行けば戦争と言う悲劇も起きにくいし、睨みあうと言うのも少なくなると伝えると、二人は「それは大事ですね」と答えていた。


「国同士が友好国となり、争いが起き無くなればそれだけで民は安心するし、輸入や輸出もしやすくなる。争いで土地が荒れる事もないし、働き手が兵役などで理不尽に失われる事もない。物価も下がり民はお金を落としやすくなる場合もあるだろうし、欲しい物を買おうとする者達も出てくる。友好国ならば金貨一人20枚も出さなくとも、安値で行き来可能になるだろうし、お互いの国の境に休憩所となる村を置くことも可能になる。宿を置いたり乗り換えの為の馬車を多く用意したり。それでまた雇用が生まれ、他国の人たちも入りやすく、問題も起きやすくはなるだろうが、分かり合って行く事もまた大事な事だ」
「確かに我が国では魔物による乗り物が必須になりますし」
「私の国では馬車が必要になる」
「そう言った意味では、互いを助け合いつつ輸入と輸出が進んでいくのだと思うぞ」


 そう伝えると二人は納得したようにメモをとり、暫く考え込んでから「まずは自国民の安定の為に動くことが先決」と最初に戻る事が出来た。
 第三段階目に入るにはまだ時間は掛かる。あくまで目安であって、今すぐの事ではない。
 だが、頭の隅に入れて置くだけでも随分と違ってくる。


「この様に国内は循環し、国外とも循環していく様に今後進めていくといいさ」
「先生ありがとう御座います」
「未知の知識もとても多かった。それに国王が知らないでは済まされない事も多いのだと理解できる」
「国王とて全て自分で出来るかと言うとそうではない。だからこそ信用できる人材と言うのは大事なんだ」
「そう言う意味でも専門家ですね」
「そうなるな」
「君たち別の世界から来た人間は、それを普通に誰もが勉強するのだろうか」
「するっすね」
「しますね。当たり前の知識だと思います」
「別の世界とは凄まじいのだな……民がそれを知っているなんて」
「だからこそ学校と言うのがあるし、それを教える先生が沢山いるんです」
「専門知識を持った先生と言う奴だな。俺のような教師はそれを生徒に教えていくし、教師の上の者たちはもっと専門的な知識を持って活動するし、その上は国を支える為の専門家になる」
「「ほお……」」
「俺の知識でもまだまだ序の口と言う奴だ」


 そう言って苦笑いすると二人は「そんなことは無い」と話してくれたが、実際学校に行っている者ならば嫌でも勉強する箇所でもある。
 何も知らない所からのスタートならば、驚くのも無理はない話だ。
 そこで丁度3時となり、授業は此処までとなった訳だが、ナノもやってきて全員でおやつタイムを楽しむことになった。

 ナノには新しい先生を俺がお願いしておいたことを伝えると喜んでいたし、シュウも「あの先生は威圧感が凄いから辞めて貰おうね」と笑顔で伝え、ナノの顔にも笑顔が戻った。
 明日からの授業となるが、場所は使っていない部屋を潰して専用の部屋を作ろうと思う。
 ダンスの部屋と礼儀作法の部屋があれば十分だろうし、難しい事ではない。
 楽器が必要だと言うのなら楽器も用意すればいいだけの話だ。
 ラスカール王も皆と一緒に食べているオヤツに感動仕切りで大変だったが、「ボルドーナ商会に是非色々と頼もう」と目を輝かせていたのは言うまでもない――。

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