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第二章 女王陛下からの依頼で、獣人の避難所を好き勝手してやります!!

60 ついにストレリチアも王家御用達の店になる!!

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 時間は10時45分……。用意が出来たカナエと俺が靴を履き、ニノにお留守番をお願いしてから頷くと瞬間移動して城の前に到着。
 そのまま城の門を潜り中へと早歩きで向かい、城の中に通されると謁見の間の前で立って待たされる。
 一応献上品は持ってきているが、どうなるか。
 急な連絡だった故に何か起きたのかも知れない。
 そんな事を思いつつ、「ストレリチアのアツシ様とカナエ様お入り下さい」と言われたので中に入り、恭しく片膝を付いてしゃがむ。
 すると――。


「今回は急ぎの用があるのです。ですがその前に、献上品は持ってきましたか?」
「はい」
「持ってきております」
「受け取ろう」


 そう言うと俺は籠に何とか入れた『ストレリチア村で取れた果物シリーズ』を取り出し、カナエは空間収納から極上のピアノを取り出した。
 これには宰相も「おおおお……」と口にし、陛下から「顔を上げなさい」と言われて顔を上げる。


「実にいい物をありがとう。所で、香辛料についてですが」
「その事について、一つお願いがございます」
「ん?」
「私達で香辛料を持ってくるので、店を構えると言うのは、なしでお願いしたいのです」
「ふむ……よいよい、それで良い」


 良かった……取り敢えずは店を更にと言うのは避けられた。


「そなたとは、いや、ストレリチアを王家御用達店にしよう。その代わり、香辛料だけでなく、酒、菓子、美容品等を定期的に運んで欲しいのだ」
「分かりました、ご注文伺った分だけ持ってきます」
「うむ、宰相? 取り決めを」
「畏まりました。まず値段についてだが、ボルドーナ商会に卸していた値段での交渉を願う。またシャンプーなどの美容品はボルドーナ商会に頼んでいるので持ってこなくて結構。その代わり、ストレリチアで売っている美容品、酒、菓子を注文してから一週間以内に配送を頼みたい」
「「畏まりました」」
「まずは今回お願いしたいのは此方となる」


 そう言って手渡された商品のリストの多さに頭がクラリとしそうだったが、落ち着け……。
 王家御用達になるってこういうことか!!
 塩砂糖胡椒は予想通り、凄い量だがトラック一台満タンにすれば運べる量だ。
 酒、菓子や紅茶類は貴族の大人買いよりは多いが左程大差はない。運べるだろう。
 美容品に関しては、各種一か月分とあり、これはカナエにお願いするしかない。


「できそうか?」
「出来ます。ですが……全て今日中にと書いてあります。先程は一週間以内とのお話でしたが?」
「うむ、実は明日、オスカール王国に行く事になっていてな?」
「「オスカール王国!?」」
「そこで自慢してやろうかと思ってな?」
「はぁ」
「そこで、今日頑張って貰いたい」
「「ブラックすぎる」」
「その代わり、王家の権限で、アツシとカナエとキクチには月に一度、温泉一泊二食をプレゼントしよう。その日は王家からも言われているので仕事は無し……どうだ?」
「「承ります」」
「うむ、そう言うと思った。ストレリチア村の温泉旅館の女将には既に伝えてあってな? 断られたらどうしようかと思ったわ」


 前もって用意周到な……。


「それに、塩コショウだけではないだろう? よく見るといい」
「ん?」
「あ、レシピ本とコンソメに鶏がらスープの素に中華スープ、出汁の素とアゴ出汁の素も書いてある!」
「あ!」
「是非それも持ってきてくれるな?」
「くっ!」
「先生、一ヶ月に一回は必ず休みですよ!」
「――! 承ります! では契約を交わして急いで動きたいのですが!」
「此方にて契約書です」


 流石宰相仕事が早い!
 時間はないがきちんと契約内容を読んでサインをし、血印を押すと『ストレリチア王家御用達店』と言うのがついた。
 ついに俺も御用達店か……。
 感慨深いものがあるが、急いで用意しないとおやつ時間になる。
 契約書の控えも貰い、俺とカナエは陛下に頭を下げるとその足で謁見の間を出て瞬間移動し、トラックの前に飛ぶ。
 すると子供たちがワラワラとトラックとバイクを見て興奮しており――。


「悪い! 陛下から今から急ぎの仕事だ。菊池も手伝え」
「はいっす!」
「俺とカナエはトラックにありったけの塩と胡椒と砂糖を段ボールの山積みにしていく。菊池はもう一つにこの依頼書にあるお菓子、酒、スープの粉類をドンドン箱で載せていけ」
「はいっす!」
「時間がないぞ! 急げ!」
「「はい!!」」


 こうしてニノが練習の為に作ったと言う塩、砂糖、胡椒の入った段ボールをドンドン積み上げて行き、荷台一杯になった所でドアを閉め、菊池の手伝いに行くと後は調味料だけだったので、一人ずつ担当して段ボールで載せていく。
 菊池はコンソメ、カナエは鶏ガラスープと中華スープの素、俺はスティックの出汁パックをドンドン箱で頼んで乗せていく。
 無論アゴ出汁もだ。
 くそう……女王陛下め、千里眼で見ていたな……厨房を!!!やっぱり暇なのか!? 俺のスキルに千里眼を防ぐ方法はないのか?


「全部載せたっす!」
「よし、カナエは化粧品も大丈夫そうだな。本当に一人で運転出来るな?」
「うん、私有地で乗り回してたからこの車は平気」
「菊池は俺の隣に乗れ」
「はいっす!」
「城に向かうぞ!」


 こうして昼1時に俺達は城に出発し、業者用の入り口を教えられてそちらに向かい、人を呼ぶと空間収納持ちがドンドン荷物を運んでいく。
 俺達も空間収納に入れて運ぶのを手伝い、城の胃袋と言うべきか、その隣にある倉庫に段ボールがドドーンと置かれ、本も別箱に入れておく。


「すまんね、陛下が無理を言っただろう」
「本当に」
「これがスープの本か。こっちがチュウカの本で、こちらがダシの本と……。
「あと、陛下に言われていませんが、これは今回は気持ちと言う事で是非お試し下さい。今後共よろしくと言う事で」


 そう言って出したのは、『醤油』の二種類が入った段ボール。
 先ずこれがあれば出汁の方は問題ないだろう。


「次回からもご入用であれば料金を頂きますので」
「分かった、私から陛下に伝えておこう」
「では、俺達は此れで」
「ああ、王家御用達店おめでとう」
「「「ありがとう御座います」」」


 こうしてトラック二台を消して、俺とカナエと菊池の三人で瞬間移動して拠点前に戻り、トラック二台を駐車場に出してホッと安堵の息。


「安堵したいが……菊池、悪いが子供たちのおやつ時間が近い」
「急ぐっす!」
「俺とカナエは着替えてスーツはロスターナさんに任せよう」
「そうね……疲れたわ」
「夜は二人で銭湯に行くか?」
「そうね、今日は銭湯に浸かりたいわ。最初の手紙では休みが明けたらとあったのに。急にどうしたのかしら?」
「そうだな、避暑地の話もなかったし………。向こうの国で何かあったのかも知れないな?井上と水野は元気でいるのか………」
「ま、私と先生は追放されたし、菊池は死んだ事になってるし、放置しましょ? あの国にいい思い出はないし、菊池は兎も角あの二人は嫌よ」
「まぁ、確かに性格に難ありだが」
「難がありすぎるのよ、あの二人は」
「そうか……」


 フウッと息を吐き、カナエがこれだけ嫌うと言う事は余程なんだろう。
 ポンポンとカナエの頭を叩くと「明日も銭湯に行くか?」と聞くと「日帰り温泉が良いわ」と反対に返され、なら明日は日帰り温泉で、今日は銭湯と言う事になった。
 そんな平和な会話をしていた次の日――。

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