召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

うどん五段

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第二章 女王陛下からの依頼で、獣人の避難所を好き勝手してやります!!

58 王家も欲しがるストレリチア村の避暑地!

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 朝から美味しい旅館の料理に舌鼓し、支払いを済ませてカナエと共に拠点に帰ると、菊池がツツツっとやってきて俺の耳元で「ヤッタんすか?」と聞いてきた為、笑顔で耳を引っ張り「お前は何を言ってるんだ?」と怒ると「すみませんでしたー!!」と叫んでいた。
 その様子に笑う子供達に久々に見る面々に、やっと拠点に帰ってきたなとホッと安堵したのは内緒にしておこうと思う。
 その日も朝から菊池は頑張ってダグラスと一緒に納品をし、俺とカナエはついに――。


「完璧すぎるほどに完璧だ」
「ええ、二階も凄いです……」
「お値段も凄いけどな」
「御屋敷一軒軽く建ちそうな値段になりましたもんね」


 そう――楽器屋を一日フルに使って作り上げたのだ。
 二階にはフルート等の場所を取らない楽器を用意し、一階はピアノと言った大きなものが並んでいる。
 目を引くグランドピアノは触れないように通行止めの美術館とかにあるロープとポールを用意した。
 お値段はお屋敷が一個買える程の値段。
 ふう……と息を吐きつつ二階に行くと、『割ったり壊した場合は弁償』と書かれた注意書きの前に、多種多様のオルゴールが並ぶ。
 陶器から宝石のついたカメオのオルゴールから宝石箱になるオルゴールから武骨な木製のオルゴールまで。
 とは言っても、安いカメオのオルゴールなのだが、この世界では高級品に見えるらしい。
 お値段は高いが、欲しい人は買うだろう。
 後はリウスさんに話をして従業員を用意して貰っている筈なので明日伺って雇えばOKだ。
 無論店と拠点とは繋げている為、ドンドン扉部屋が扉で埋まっていく。

 そろそろ拠点の見た目を変えた方が良いかも知れない。
 明日明後日は丁度休みだし、拠点の見た目を変えてもっと大きなものにしよう。
 人数も増えたし個室も男性なら欲しい。
 トイレも多めに欲しいし、お風呂も大きくしたい。
 大きめのタウンハウス……と言えば良いだろうか?
 それを目指してみようと思う。
 無論敷地内に入る大きさだが、中は広々と言う奴だ。
 それだけレベルが上がったので、何とでも出来る。

 村でしこたま貴族の家を契約しまくっていたら、俺のノスタルミア王国版スキルも上がり始めた。
 お陰でかなりの数のスキルが溜まり、ついに出てきたのが【スキル統合】と言うもので、ストレリチア村のものでもストレリチア各店のものでも、スキルであれば何処でも使えるという結果になった。

 無論直ぐに取ったのは言う間でもなく、これならもし仮に他国に行く事になっても問題はない。
 ホッと一安心だ。
 また一からスキル上げ直しとか流石にやってられない。
 とは言っても、他国とは言え行く気は無いんだが……何時かは行かねばなるまい。
 そう思い溜息を吐きつつ家に帰ると、ディアが駆け込んできて手紙を手渡してきた。
 ――女王陛下からだ。
 なんだ、折角の休日が返上されるのか?
 ブラック反対なんだが?
 そう思いつつ空間収納からペーパーナイフを取り出し封を開けて中を読むと――。


『そろそろストレリチア村の野菜や果物を献上するべきでは? あと、香辛料の店も欲しいのう。王家には是非とも御用達の店として香辛料を納めてはくれまいか? あと王家の避暑地も作りたいので、休みが明けたら来るように。無論、忘れ物はあるまいな? ピアノとか?』


「「「……脅されてる」」」


 思わず言葉が出てしまったが溜息を吐いてカナエに一番高級なピアノを出して貰い、これは献上品の一とする。
 次に「持って行ってください」と沢山渡された農作物も献上品の二とする。
 最後の王家の避暑地……ドーナ様に相談だ。


「ディア様、金曜にドーナ様に時間を作って貰ってくれ。王家が避暑地を希望だと伝えれば大丈夫なはずだ」
「お父様なら釣りをしていた! 行ってくる!」
「悪いが明日は子供達とのサービスデイでこちらの拠点を大きくする日なので行けないとも!」
「わかった――!!」


 そう言って駆け出して行ったディア様に、手紙を見て頭を抱えて溜息を吐く。
 いや、もうこの際いたしかたない。
 あのストレリチア村は正にユートピア。
 王家の避暑地が無い方が可笑しい。そう思う事にした
 さすがに避暑地の土地家屋まで献上しろとは言わないたろう……。


「明日ここの拠点はタウンハウス風にしようとは思うんだが、細々しいのは余り好きじゃないな。見た目はタウンハウス系にして、中をストレリチア村にあるドーナ様の屋敷みたいな感じで広々と取ろう。となると二階は一人一部屋欲しいから……」


 今後人が増える事は無いとは思うが、20部屋分あれば心持ち余裕が出来る。
 子供達も大きくなってきたら1人部屋が欲しいと言い出すだろうし、一部屋ずつはそんなに大きくなくとも、不自由のない程度にはしてやりたい。
 身体の大きなダグラスを基準に考えればいいな。
 大人班はシングルベッドからセミダブルベッドに格上げだ。
 まぁ、カナエと菊池もシングルからセミダブルにしてあげておこう。
 緑も多い方がいいし、そう言えばナノのペットのニノはどうなったのだろうか。
 ウンウンと悩みつつ仕事場に入ると、目に飛び込んできたのはニノの素早いアイテムの入れ替え速度。
 嘘だろ!? ニノが輝いて見える!!


「ニノ、お前仕事が出来たんだな」
「あ、先生」
「ニノちゃん凄いのよ~。一人で化粧品詰め替え三つとも全部してくれるの。お陰でとっても売り上げが上がったみたい。お陰で手が空いたから女性用シャンプーと男性用のシャンプーの詰め替えは私がしているわ。でもニノちゃんには負けるわね」
「輝いてるもんな」
「オシゴト デキテ ウレシイ ウフフ!」
「喋ったし」


 そう言えば生後二日目で喋れるってあったな。
 初めてニノの声を聞いたが意外と低くてビックリした。
 なんかラスボス感のある声色だったぞ。
 そしてニノ、お前雄だったのか? 凄く声が悪役の長って感じだったが。


「ニノ オシゴト シタラ ナノ ヨロコブ! ニノ シアワセ!」
「うん、ニノがいっぱいがんばってくれるから、ナノとってもたすかっちゃう! ありがとう、ニノ!」
「キュン」


 ニノにとってナノは恋する相手なのか……な?
 幸せそうにナノの近くで仕事をするニノを邪魔すまい。
 だが給料はどうする。魔物だぞ?


「ニノ、給料はどうする」
「オカネ イラナイ」
「そ、そうか」
「センセ」
「ん?」
「ナノ ツレテキテ クレテ アリガト」
「ん、どういたしましてだ」


 ナノがニノを選ばなかったら、どうなっていたか分からない。
 故に俺も命の恩人なのかも知れないな。
 俺達がいない間は菊池がおやつタイムもやってくれていたようだし、その菊池も今ではすっかり既存の店を回りきるだけの体力もついた。
 ぬるま湯から脱したか?
 後で菊池のスキルボードも見せて貰おう。
 変なのに使ってなきゃいいが。

 ちなみに、生えてきたスキルはネットスーパーだけでは無かった。
 俺もドラッグストアや酒屋や宝石店が生えて来たが、下着専門店やCDショップは生えて来ず、紳士服店や家電量販店が生えて来た。性別や日本での生活も影響するのだろうか?
 スキルが余った分だけ生えてきた感じもする。
 性別や日本での生活も生えて来た店に影響している気がする、これ以上生えるのかどうかは分からないが……取り合えず今は止まっている。
 スキルを並べるとズラリとあるので、もう後は好きにやっていこうと思った。
 変にきっちりやる必要は無さそうだ。

 ただ、あれからノスタルミア王国に避難してくる獣人は後を絶たず、今あの獣人の国であるダングル王国がどうなっているのかは分からない。
 この辺りも陛下に会った時に聞いておこう。
 まぁ、避難してくるのは有難いが、その分農地も増えて潤った村にはなっているが……。


「取り敢えずまた店か」
「次は香辛料とかのお店ですか。でも香辛料だけだとイマイチですよね?」
「ん――。王家御用達ともなればストレリチアに箔はつくが、塩コショウ砂糖だけの店ってのがな? 地味すぎる、味はあるが味気ない。いっそ店ではなく、香辛料は纏めて王家に卸しているってだけの事実と箔があればな。注文を受ければお出しします的な。その辺りは交渉だな」
「値段交渉ですよね」
「王家を敵に回すのは得策じゃない。ボルドさんに流しているだけの値段で卸そう」
「怖いですしね」
「城にストレリチアの品と農産物を卸しているって言うだけの名声は欲しいが、ストレリチアと言えばキャンピングカーだろ?」
「車ってそう言えば買えませんでしたっけ?」
「あ」


 その言葉に俺とカナエはネットスーパーで車を検索した。
 確かに売っている。
 有名な運ぶトラックから大型トラックまであるが、ノスタルミア王国の道を考えれば、中型トラックまでが精々だ。
 ただし――運転できるのが俺しかいない。


「私、車の運転出来ますよ」
「は? 校則違反だろう」
「免許を持っているとかじゃなくて、私有地内の運転なら大丈夫なんですよ。バイクも行けます」
「だが中型だぞ?」
「私大型も乗ってましたけど? コンバインとかトラクターとか大型トラックとか」
「……二人で運転して帰りは瞬間移動」
「いけますね」


 となると、ますます拠点をどうにかしたい。
 二台の中型トラックを購入するのは簡単だが、駐車場は欲しい。
 出来ればトラックも見た目を変えたいが……せめて『ストレリチア』とか書いてあったり、ストレリチア村のマークがあったり。
 そうそう、ストレリチア村の品物には、ストレリチア村のシールが付いているのだ。
 あの花が描かれたシールが。
 それを店の看板にもしているのだが……トラックもそれがオプションで出来たらいいな…。
 問題は――。


「車っすか?」
「おかえり菊池」
「ただいまっす。俺バイクなら運転できるっすよ?」
「校則違反」
「固い事なしっすよ~!」
「まぁもう異世界にいるから別にいいが、そうか、菊池はバイクが運転出来るのか」
「ピザのバイトしてたんで、ちゃんと原付の免許も取りました。無免じゃないです!!」
「わかったから。バイクが乗れるのは助かるな!」
「実は王家から――」


 と、俺達が車を見ていた理由を話すと「ええええええええ!?」と驚かれたが、致し方ないだろう。


「王室御用達って、今の所ボルドーナ商会だけっすよね?」
「そうだな」
「そこについに、ストレリチアが仲間入りっすかぁ~~~!?」
「そこは交渉次第だ。所で菊池」
「はいっす、なんすか?」
「君のスキルボードを見せてくれ」
「え……」
「よもや、見せられない状態にはしておらんだろうな?」


 そう迫ると流石に俺の怒りが通じたのか汗を流しつつ「み、見せるっす」と見せてくれた。
 それをカナエもチェックする。すると――。



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