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第一章 要らないと言うのなら旅立ちます。探さないで下さい。

09 いよいよ出発! キャンピングカーを走らせ色々あったが無事ノスタルミア王国へ!

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 ――翌朝。
 まだ眠っているシュウを起こさないようにベッドから降り、顔を洗って歯磨きをしているとカナエも起きてきたようだ。
 シルクのパジャマは最高だった……。
 昨日は全員シルクのパジャマを寝て、最高に贅沢をした気分だ。
 髭剃りまで終わって顔を整えて男用の化粧水をつけると、カナエがクスクスと笑っている。


「おはよう、どうした?」
「先生寝癖ついてて可愛い」
「むう、俺の髪は結構撥ねるんだ」
「無造作ヘアーって奴ですね」
「それが許されるのは若い奴までだぞ」
「良いじゃないですか、此処は異世界ですし」
「まぁ、そうだな。朝ごはんを食べたらキャンピングカーで一気にノスタルミア王国にまで行けたらいいが、何分距離が分からない。数日は掛かると思ってくれ」
「分かりました」
「ただ、俺達が行く方法は、入国料が高いんだ。一人に付き金貨10枚かかる」
「結構大きいですね」
「多分、そっちの道を行くのは大きな商家か貴族くらいだろう。だから余り気にせず走ろうと思う」
「そうなんですね」
「貴族に売れと言われても売れるものではないしな」


 そう言って部屋に戻り、着替えを済ませるとシュウが起きてきた。
 まだ寝ぼけているが可愛らしい寝ぼけ姿だ。


「おはようシュウ」
「おはようございます」
「顔を洗って歯磨きしといで」
「はーい」


 寝ぼけ姿のシュウは意外と可愛い。
 子供らしい姿で笑顔が零れるが、どうやらナノも起きてきたようだ。
 二人揃って顔を洗い歯磨きをし、部屋に戻って着替えを済ませるとリビングにやってきた。
 その間カナエは朝ごはんの支度をしていて、ネットスーパーをフルに使い出来るだけ手作りのご飯を作ろうとしてくれる。
 朝はロールパンのサンドイッチに野菜たっぷりのコンソメスープだった。
「頂きます」をしてから食べ始めたのだが――。


「昨日は野菜成分が少なかったので、ちょっと反省したんです」
「いや、だがこのスープは美味いぞ」
「お野菜苦手だけど美味しいです」
「おいしい~」
「スープの出汁が違うんでしょうか……シッカリ味があって旨味があって」
「こっちの料理を食べたことは無いが、どんな感じなんだ?」
「正直、この料理を食べた後だと……貴族の料理を食べたくはないですね」
「そこまでか」
「もしお二人が食べる時があるなら、覚悟はした方がいいかと」


 そこまで念押しされ、俺達はこの世界の食生活について一つの不安が過っていた。
 俺達と別れた、井上に水野に菊池の事だ。
 日本の食生活に慣れていたら、此方の世界の食生活は辛いだろう。
 まぁ、もう彼らは巣立ったんだ。
 気にするだけ時間の無駄か。
 食後の珈琲を飲みつつそんな事を考えていると、気合を入れて「よし!」と口にする。


「食器を洗ったら早速キャンピングカーで出発しよう。余り長居すると碌なことが起きない気がする」
「分かりました。先生の危険察知ですね?」
「ああ、早めに洗って貰えるか?」
「もうすぐ終わりますから」
「分かった。二人は自分の着替えを持っておいで。俺の空間収納に入れておくから」
「「はい」」


 こうしてバタバタとし始め、二人分の着替えを空間収納に入れると洗い物を終わらせたカナエと共に外に出て拠点を消し、四人で街道を歩いて、国から真っすぐ向かうジュノリス大国方面は人が多かったが、ノスタルミア王国方面は人通りも無く、少し離れた所でキャンピングカーを出し三人が乗ったのを確認して車を走らせる。
 道路は石畳なので撥ねるかと思いきや、そうでもない。
 意外とキャンピングカーの性能は良い様だ。
 カナエは二人に使い方を教えてくれたようで、助手席に座ってきた。


「シートベルトは着けてくれよ」
「つけますとも。こっちの街道は人気が無いですね」
「一人金貨10枚なら流石にな」
「そうですね、遠回りしてでも安い方に行ってからがお財布に優しいですし」
「が、俺達はそうも言ってられない」
「シュウちゃんたちがいるからですか?」
「それもあるが、井上たちが何かしてきそうな気がしたんでな。危険察知だ」
「ああ……」
「子供たちは何をしてる?」
「今はリビングで寛いでます。初めてのキャンピングカーで驚いてるみたいで」
「そうか、昼休みになったら俺も昼飯食いに行くから、その時は車を停めるし、空間収納からアイテムを出して詰め替え作業をして貰おう」
「そうですね、その時は私も後ろに移ります」
「頼んだぞ」


 そう言いながら車は結構な速度を出して走っているが馬車も人通りも見当たらない。
 国の面積がどれ位あるか等は分からないが、只管車を走らせる。
 CDが聴ける車だった為、カナエはネットスーパーで自分の好きな歌手の歌を購入し、音楽を流し始める。
 これに反応したのは子供達だ。


「凄い、この動く家っておうたも流れるのね!」
「ははは! ナノはこういう歌好きか?」
「好き――!」
「確かに音楽を聴きながらと言うのは良いですね」
「眠くならない音楽なら大歓迎だ」
「確かに運転してると眠くなるってお父さんが言ってました」


 腕時計をチラッと見ると、朝八時から走り出してまだ一時間。
 暫くは音楽を聴きながら休憩タイムだなと思いながら走り続け、昼になった時点でも人気は無く、車の中での食事となった。
 前もって早めに料理を始めていたカナエのお陰で、シッカリとした食事がとれて満足だし、その間にと開いたスペースに昨日の続きをして貰うべく道具を出して子供たちに頼むと、二人は直ぐに作業を始めた。
 このペースで簡単なものからドンドンお願いしよう。
 一時間休憩を取ったらもう一度運転席に座り車は走りだす。
 今日一日でどれだけ走れるかは分からないが、結果二日目に突入し、二日目ともなると馬車を見ることが増えてきた為、街道ではなく余り整備されていない地面を走った。
 それでも揺れは殆ど無く、やはりこのキャンピングカー凄いと思いながら走る事九時間。
 昼のおやつを食べ終わる頃塀が見えて来て、車を停めて室内に入ると手を洗い顔を洗ってから「此処からは歩いて行こう」と告げ、俺達は外に出るとキャンピングカーを消してから歩き出す。
 走った距離にして九州から大阪くらいの距離だろうか……意外と大きい国だったんだな。
 そんな事を考えながら馬車用の入り口と、申し訳なさ程度に作られた人用の入り口があり、俺達は人用の入り口に向かうと――。


「一人金貨10枚だよ」
「こちらに用意してます」
「ん? よく見たらその子供たちは獣人じゃないか」
「獣人の入国は認められてるはずですが?」
「獣人なら追加金貨5枚だ」
「理由は?」
「アンタ何も知らないんだな。最近獣人がノスタルミア王国に流れ込んでるんだよ。戦争が始まるかも知れないからって。それで入国料が高くなったんだ」
「なるほど、では二人分追加で金貨10枚で宜しいですね」
「ああ、構わない。入国を許可する」
「ありがとう御座います。それで、首都はどちらの道を進めばいいですか?」
「この街道を真っ直ぐだ。途中小さな村や町もあるがな」
「ありがとう御座います」


 こうして無事ノスタルミア王国に入国できた俺達は、ホッと安堵の息を吐きまた暫く歩きながらさっきの言葉を思い出す。
 ――戦争が始まりそうだと言っていたな。
 だが、大国がそれを良しとしてない筈だ。
 取り合えずは安全なノスタルミア王国に入った事で大丈夫とは思うが、少し離れた場所でキャンピングカーを出すともう一度走り出す。
 道中野党に襲われている貴族がいたりとか、商人が襲われていたりとか、そう言うハプニングも特になく、平和な道が続いていた――。




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