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第四章 国民の為の諸々も終わり、自分の引き際を知る。

52 動き出すテリサバース教会。

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 リゾート開発の人員を少し割いて、市場の開発から手を付けた俺は、暑さを凌ぐための対策やオアシスがどれくらいなのかを見に移動用の馬車に乗って視察にも行った。
 その最小さい小屋を作って貰い、そこに箱庭の扉をロスターニャに作って貰ったのだ。
 小屋は場所が問題になればもう一度違う場所に小屋を立てればいいだけだが、アツシ様が拠点を創ればそこを俺が使わせて貰う事も可能になるだろう。
 市場村の設計図を見せて貰いながら場所の確保等も行っていく。


「ハルバルディス王国エリアとネバリ王国エリア、それにバランドス王国エリアの隣にはシュノベザール王国の市場を作ってくれ。その横に大きく神々の島からのエリアを」
「ほう、神々の島の品も買う事が可能なのですか!?」
「どういう品が来るかは分からないが、少なくともないよりはあった方が良いだろう。冷凍冷蔵の物はシュノベザール王国の魔道具師店で購入、もしくは発注をかけてくれ。砂嵐が来ないようにはするが、一つ一つ大きな木の小屋でお願いしたい」
「承りました」
「後は市場に到着して一泊する物も出て来るだろう。宿屋を作っておいてくれ。家具ベッドその他は解っていると思うがいい品を頼むぞ」
「畏まりました」
「後は食事処が欲しいな。出せる料理は少なくていいが、うまい物を出してやりたい」
「となると結構広い食事処が必要ですね。宿屋の一階でも必要でしょうし」
「そうなるな」


 と、話はドンドン進んで行く。
 また、そこで暮らす住民の家も長屋だが快適に過ごせるようにし、アツシ兄上に頼んで銭湯を用意して貰う予定だ。
 長旅をした者達は銭湯で身体をキレイに出来れば気分も違うだろう。

 しかし、こうしてみると随分と緑化も進んだものだ。
 俺が爺さんになる頃には随分と緑化が進み、砂漠の部分も減って行くだろう。
 緑化用の魔道具もリゼルのお陰で緑の魔石に困らなくなって、それで緑化も進んでいると言って過言ではないし、朝は雨を降らせないが、暑くなり始める昼には霧雨のように雨を降らせ、夜はシトシトと雨を降らせている。
 その影響も強い。


「やはりオアシスがあると生活がしやすいか」
「水問題は解決しますからねぇ」
「そうだな、ろ過出来れば尚更いいんだが」
「ろか?」
「ああ、こっちの話だ。今は沸騰して飲める水があるだけマシとしよう」


 そう言うと話しを一旦切り上げ、大体の図面が出来た為木材も沢山用意しないといけない。
 廃村になっている木材置場には沢山の木が置いてあるが、あれでは足りないかもしれないな。
 後はシュノベザール王国で売れる商品をもう少し考えてみよう。
 バナナチップスなどは確かに売れるだろうが、折角砂糖があるのだからジャムと言う手もある。
 輸出となると途端に物が少ないというのが困りどころだな。
 これはネバリ王とシュリウス達との話し合いもしないといけないだろう。
 まぁ、消耗品、その場で消える食料品と言うのも金にはなるがな。

 魚の一夜干しなんかは日持ちするだろうが……燻製は日持ちしないのが悩ましい。
 最近は燻製も一夜干しも余りにも売れる為、アイテムボックスを解禁したのだ。
 作った分だけ只管入れて貰い、輸出用にドンドン持って行かせている。
 お陰で60個あった燻製器は120個までに増えた。
 鶏肉も多く取れるようになったことから、鶏を捌いていらない内臓などは俺の作ったゴミ箱に入れて貰う事で魔素となり、国に魔素が程よく回りつつある。
 魔素が多いエリアは緑が増えやすいというのも分かっている為、シュノベザール王国の緑化はかなり進んだ。
 新たなオアシスも出来たので、国としては更に大きくなるだろう。
 だがこれ以上貴族は増えて欲しくない所だが。

 それから集中して作って貰う事で一ヶ月かけて市場を作り上げる間、俺とネバリ王とシュリウスとでの話し合いも行われた。
 畜産が盛んなネバリ王国では、チーズや肉類を主に売りたいという話で盛り上がり、農耕が盛んなバランドス王国では作物を主に売りたいという話題で盛り上がった。
 やはり土地が強いと売れる物は多いというのは羨ましい。
 どうしても砂漠の地域となると加工品が主流になるのは致し方ないのかも知れないな。
 だが、一番の目標であった国民を飢えさせず富ませると言う点では目標は達成している。
 一先ず俺の中での一番の目標は達成出来ている。


「やはり砂漠だと色々難しいですか?」
「そうだな……元々何もない所からのスタートだったからなぁ。俺の一番の目標は一旦完結した状態だから次の段階に行きたいのだが、それもまた難しい悩みの種だ」
「確か、国民を飢えさせず富ませる……事が目標でしたな?」
「ああ、その目標は取り敢えず完結したと言って過言ではない。外貨も稼げているし、その次の一手となると、市場を完成させる事とリゾート地を完成させるくらいだろう? それは少なくとも俺が必死に動かなくとも何とかなりそうではあるんだ」
「「ふむ」」
「これ以上ややこしい問題が発生しない限りは俺の出る幕はないだろう。そもそも国民が飢えず国民の幸せ指数が高く、満足の行く生活をして行けているのなら、王など執務はするが飾りで良いくらいだ。国の象徴であればいいという考えではあるんだがな」
「兄上いてこそのシュノベザール王国ですからね」
「ですが、ハルバルディス王国の商隊から聞いた話ですが、テリサバース教会がシュノベザール王国に目を付けているそうですよ?」


 思わぬ言葉に俺とシュリウスが目を見開くと、俺の部屋だというのに小さな声でネバリ王はこう口にする。


「国が発展出来たのはテリサバース女神の御加護であると」
「馬鹿げている! 全ては兄上のお陰ではありませんか!」
「ですが、テリサバース教会はそう考えてるようです。恐らく何かしら動きはあるかと思われますが……」
「テリサバース教会か……。ご加護があるというのならそのご加護とやらを教えて貰いたいものだな。長い事シュノベザール王国を放置していた癖によく言う」
「異端審問に掛けられないように気を付けねばなりませんな」
「全くだな……。どのみちテリサバース女神の御加護だどうのといって金を寄こせと言ってくるんだろう?」
「恐らく」
「奴らのしそうな事だ」


 そう言って溜息を吐くと、ノックをする音が聞こえ、俺が声を掛けるとサファール宰相が顔面蒼白で入ってきた。
 手に持っていた書簡を受け取ると、丁度話していた『テリサバース教会』からの書簡で、中を開けて読むとそこには――。


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