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第三章 ノベルシカ王国の暴走と崩壊と……

49 国を滅ぼした本当の脅威。

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 ――ノベルシカ王国でゼフェル国王が断頭台で命を散らした。
 その情報は直ぐにネバリ王国に、そして我が国シュノベザール王国にも入ってきた。
 蚊を媒体とする病原菌が流行っている事は難民キャンプの住民から聞いていたが、ゼフェル国王もまたその病原菌にやられて動けなくなったらしい。

 そこを、戦争に同意した貴族たちによって責任を取らせる形で首を断頭台で斬首。
 貴族達からは戦争を辞めて欲しいという訴えを受けたが――。


「君たちも戦争に賛成したのだろう?」


 俺はその言葉を許さなかった。
 トップさえ消えればいいと思っている考えも気に入らなかった。
 一年同じ状況を繰り返し、今までのうのうと生きていた貴族が5分の1しか残らなくなった状態にしてから、元の雨がシトシトと振り続ける状態に戻した。
 元々がシトシト雨の降る地域なので大雨よりはマシだろう。

 だが国民は居ない。
 トップとなる者もいない。
 ノベルシカ王国は滅亡したのも同然だった。


「一体ゼフェル国王は何をしたくて我がネバリ王国に宣戦布告したのかも謎のままでしたな……」
「若さゆえに領土を広げたかったのかも知れないな。隣国は『人形師』の国ハルバルディス王国だ。このままいけばハルバルディス王国に吸収されるか、それともネバリ王国が吸収するかは好きに選ばせるが」
「蚊を媒体とする病原菌がいる国なんていりませんよ……。前国王もそれで亡くなったそうじゃないですか」
「確かに、訳の分からない病原菌がいる国は欲しくはないな。ハルバルディス王国に書簡を送り、事情を説明した上で土地を必要か必要でないかを聞いた方が良さそうだ」

【人形師の国ハルバルディス王国】もそうだが、世界各国では稀に【人形師】と呼ばれるスキルを持つ者たちが存在する。
 彼等は国が管理しなくてはならない存在なのだが、生憎我が国でもネバリ王国でも人形師は生まれてこなかった。
 レアと言う程レアではないのだが、地域や国によって差はあるようだ。
 それに、人形師の人形なら蚊に刺されても病気になる事は無い。
 頼むとしたらハルバルディス王国が適任だろう。
 ネバリ王国と連盟で書簡を出すことになり、二国に印を押してハルバルディス王家に届けさせる訳だが、蚊を媒体しているという以外には何の情報もないのが辛い所だ。
 少し遠くなるが我がシュノベザール王国で迂回してハルバルディス王国に入る事が安全とされ、我が国の軍が使っている移動用馬車を使い一気に持って行って貰った。
 返事が来るのを暫く待った方が良さそうだ。

 戦争をしている間、と言っても一方的な天候を使った攻撃だが、その間何があったかと言うと、難民が我がシュノベザール王国に押し寄せるだけで、ネバリ王国はいつも通り。
 国境付近は警戒区域になったが、橋が壊れた為渡ってくるのは不可能だろうとされた。

 その代わり、難民の受け入れにはネバリ王国も手伝ってくれてシュノベザール王国のノベルシカ王国付近にあるオアシスには大きな街が出来たほどだ。
 とは言っても、テントが並ぶだけの街と言うのも可笑しいが。

 彼等は皆ノベルシカ王国のやり方に不満を持っていて、国民は奴隷と一緒だったと皆が語る。
 もしノベルシカ王国が残ったとしても戻る気はないらしく、そのままネバリ王国かシュノベザール王国に亡命したいとの事だった。
 これに対し、ネバリ王国への亡命者とシュノベザール王国への亡命者で別れて貰い、ネバリ王国への亡命者は少なかったが、残りの亡命者はシュノベザール王国が引き受ける事となった。
 シュノベザール王国付近にあるオアシスに引っ越す者、また魔道具を作れる者達は率先してシュノベザール王国で受け入れる事を伝えると大変喜ばれた。

 無論難民として保護している間、ストレス緩和の為に【べっ甲飴】や【塩飴】は無料で振舞われた。
 暑さに慣れない子供やお年寄りの為に、出張でかき氷屋も来て無償でかき氷も振舞われた。
 無論ただの氷だけだが大変喜ばれて、熱さに弱い子供達やお年寄りは少しずつシュノベザール王国の気候に慣れて行った。
 夜は寒いが炭を配っていた為に暖は取れていたようだ。
 食べ物に関しても、人助けの為にと禁止していた『アイテムボックス』を使い野菜や調味料などを入れた物が届けられ炊き出しも毎日朝昼晩と行われた。
 無論製薬師もきてはポーションを作り、初級ポーションでの治療等も行われた為、酷い状態にはならなかった。
 ノベルシカ王国の蚊に刺されて手遅れだった者達は亡くなったが、そうでない者達はポーションで命拾いもした。


「人道支援もばっちりだな」
「はい、アツシ兄上。できうる限りはしたつもりです」
「後は移動だが、軍の使ってる移動馬車を使うのか」
「ええ、一時的に武器等を降ろして貰い人間を運ぶようにします」
「かなりの人数がシュノベザール王国の国民になるな……」
「その為に野菜等も急ピッチで増やしましたので国民全員飢える事はありません。仕事に関しても現在思案中ですが、オアシスに向かう部隊の方では、オアシスを使ったリゾート地区を作ろうと計画しています。他国の商隊はそこで一日泊まって貰い、疲れを癒して帰って貰うのが狙いですね。その為に待機していた箱庭師も居ますので、気持ち良く過ごせるでしょう」
「お、温泉持ちの箱庭師か?」
「ご名答です。しかも水風呂迄ありましたのでかなり良いかと」
「そいつはいいな!」
「平屋の大きな建物を作る所からですが、建築師達に頑張って貰って住民が住む家と平屋の大きな建物を建てるところですが、住民が住む家が出来る迄はまずは待機して貰う予定です」
「なるほど。行っても済む場所がないというのもな」
「そうですね」


 そうなのだ。来て欲しいのは山々だが、住む場所が無ければどうしようもない。
 その為現在急ピッチで建築師たちが家を建てており、尚且つ広い旅館となる建物も作って貰っている最中だ。

 温泉持ちの箱庭師は全員で4人いた為、大きな温泉旅館が作れそうだ。
 また、王国ともほど近い所に出来たオアシスの為、食材の運搬もしやすいというのもメリットが大きい。

 先だって王都の方では魔道具師たちの家が作られていたので、彼等には先に移動して貰い、国営の魔道具店で仕事や研究をして貰う事となっている。


「また暫く忙しくなりそうですが、婚姻式までの間にはある程度形にしますので」
「それがいいな」
「そう言えばそろそろカナエ様がご出産では?」
「ああ、予定日は明後日だな。俺は暫くこっちに来れないが頑張れよ」
「はい!」


 何だかんだと妻のカナエ様が大好きなアツシ兄上はそう言うと転移の指輪で帰って行かれた。
 ――俺もこれからの事に力を入れるとしよう。
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