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第三章 ノベルシカ王国の暴走と崩壊と……

43 ノベルシカ国王の暴言にアツシ達神々の島の王が参戦する。③

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「なるほど、バランドス王国ではハチミツが……」
「ノスタルミア王国でもハチミツは取れるが、年に1回だけしかとれぬのだ。3回も取れるとは素晴らしいのう」
「いえいえ、素晴らしいのは兄上ですよ。誰もが邪魔で切り捨てていた作物から砂糖が取れる事を知っていて、今は国外向けに作っていらっしゃる。そうですよね兄上」
「そうだな、まだ大量生産とまでは行きついていないが、国民に提供できるまでは何とかなっている。国外向けは少しずつだが出来始めて、値段は多少高いがネバリ王国では売りに行っている筈だ」
「ええ、我がネバリ王国ではシュノベザール王国から商隊がくると真っ先に砂糖やハチミツを買い占めますね。後は最近だと燻製でしょうか? わが国では作るのが難しいと聞いておりますので、シュノベザール王国から持ってこられる燻製は兎に角美味しい! そして肉が飛ぶように売れますな!」
「ははは! この分では燻製用のエリアを広げたほうが良さそうだ」
「それで、ノベルシカ王国では何を輸出しているんです?」
「あ、え、っと」


 自分の兄が攻撃されたのを間近で見ているシュリウスはノベルシカ国王に容赦がない。
 輸出と言っても魔道具では一つ一つは高くとも大量に売れる訳ではない。
 輸出するには不向きなのだ。
 無論、冷蔵や冷凍となれば飛ぶように輸出されるだろうが、そこまでの魔道具は全く作れていないらしい。
 すると、ラスカール王が口を開いた。


「魔道具は国内でまず必要な物を作り上げてから、そこから輸出に向けて手を入れるものであろう。そちらの国ではどうなっているのだ」
「そ、それは」
「国内需要は回っているのか?」
「こ、こくないじゅよう?」
「まさか、そこからなのかい?」
「え、え?」


 そう言って慌てるノベルシカのゼフェル国王に、シュナイダー王は溜息を人知れず吐いた。
 まぁ、気持ちは分らなくはない。
 その上で俺の事を発展途上国の王と馬鹿にしたのだから、シュナイダー王は気に入らないのだろう。


「ネバリ王国ではその辺りはどうです?」
「少なからず理解した上で動いております。シュライ国王には負けますが」
「そう言って頂けると大変嬉しい」
「シュライ国王から勉強させられると、ザーバン商隊も驚いておられましたからな」
「ははは」
「…………発展途上国の癖に」


 そうボソリと呟いた言葉はやけに俺達の席で響いた。
 だがそれを顔に出さず無視する事にしたのはアツシ兄上だ。


「俺達神々の島では国同士の勉強会をするのが当たり前だったんだ。そこで出る案と言うのは国を更に発展させる。国が発展して安定して行けば国民の幸せ指数も上がる。国内需要が安定してから国外に輸出するのは大事な事だからな」
「そうですね。国内需要が落ち着いてから国外に目を向けるのは大事な事です」
「そうですな。ザーバン商隊からもそういう報告を受けております。理解するのに時間は掛かりましたが、国内が潤ってこそですな」


 と、俺達にしてみれば当たり前の会話をしていたのだが、ゼフェル王には難しい内容だったらいく、一人孤立していた。
 すると――。


「ノベルシカ国王だったかな? 君も色々と勉強する事がありそうだね」
「!」
「大丈夫、最初は分らないモノだ。だからこそ勉強するんだよ」
「そう、ですか」
「シュライ王は凄い。アツシ殿の会話を普通に理解し1言えば10返ってくる。賢王とは正にいったものだな……」
「…………」


 と、ラスカール国王がフォローを入れるが余り耳に入っていないようで、その後は最初の勢いは何処へいったのやら、黙り込んでしまった。
 こうして終始美味し料理とお菓子、そしてワインとお酒も楽しみつつお披露目会は終わり、貴族が帰りネバリ国王とノベルシカ国王は城に泊まる事になっているが、生き生きとしたネバリ国王とは違い、ノベルシカ国王はお通夜のような様子で部屋に戻って行った。
 その頃アツシ様の拠点では――。



「まさか、ノベルシカ国王が俺達を眉唾扱いするとは思わなかったが」
「全く無礼な輩よ」
「僕はあの方は苦手ですね。必要のないプライドをへし折りたくなります」
「まぁまぁ、彼もまだまだ若いんだ。だがもっと柔軟な頭を持つべきだと思うがね」
「王になってまだ間もないと聞いていますから、傲慢になるのも仕方ないのでしょう」
「それにしても、もう少し他者を思いやる心がないと王としては不適合者じゃな」


 そう言ってワインを飲むノスタルミア女王に、俺も「確かに」と口にすると、皆さん頷いていた。
 もう少し謙虚さが無ければ国民も着いてこないだろう。
 ノベルシカ国王とは代々ああいうものなのだろうか。


「魔道具で発展している国と聞いているが、実際の所どうなのじゃ?」
「魔道具で発展しているとは余り聞いたことがないですね。恐らく貴族向けに色々作ってはいるんでしょうが、一般市民の事は余り考えていないのでしょう」
「なるほど。それでは国も発展しまい」
「国を富ませるというのを理解していないのでしょうね」


 それは話を理解していない時点で分かっていた。
 ネバリ国王はそれを理解していたが、ノベルシカ国王はそれが理解出来ない様子だった。
 国を富ませる……と言うのは時間が掛かる。
 故に後回しにしがちなのだろう。
 ましてや雨の多い地域であるノベルシカ王国では作物が早々育たないと聞いている。
 国民の生活が心配だ。
 そこまで俺が心配する事ではないが、王が国民にまで目を向けなければ犯罪は減らないし、トップが襟を正さねば国民に示しが着かないのと同じなのだが――恐らくそれも理解していないだろう。


「まぁ、明日はシュノベザール王国を周ってから帰るんだろうし、国民の様子を見て何かしら感じてくれたらいいんだがな」
「と言う事は、アツシ兄上は時折シュノベザール王国を楽しんでますね?」
「ははは! かき氷はうまいな! コーヒーフロート何て好みの味だ!」
「全くもう……御身を大事にしてください」
「明日はアツシ殿に案内して貰って色々見て回りましょう」
「私はリゼル嬢とこの国の衣装で遊びたいのう」
「では、僕とラスカール王とアツシ様とで」
「かき氷は美味いぞ。外は暑いからこその贅沢な食べ物だった」
「楽しみです!」
「衣装は用意しましょうか?」
「そうだな、お忍び用にな?」
「僕はお忍びしようにも耳と尻尾がありますから……」
「ないよりはマシだって」
「そうですね!」


 こうして明日は男性陣はシュノベザール王国観光を、ノスタルミア女王はリゼルと遊ぶことにしたらしく、その後は解散となって城に戻った。
 その次の日――。

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