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第三章 ノベルシカ王国の暴走と崩壊と……

41 ノベルシカ国王の暴言にアツシ達神々の島の王が参戦する。①

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「なに!? アツシ兄上が他の国王を連れてきたんだと!? 直ぐに馬車を用意して王城まで、急ぐんだ!!」


 ――そう、神々の島の四季の国王たちが揃ってお祝いに駆けつけたというのだ。
 直ぐに来客用の馬車を漁港に置いていた為、それに乗って来て貰う事となった。
 もしもの為に用意しておいて良かった……そして三日後、明日がお披露目会と言う時に皆さんが集まり、謁見の間にて挨拶となった。


「皆様、慣れない土地での移動は疲れた事でしょう」
「シュライ様とリゼル様の婚姻式でも素晴らしいものでしたから、突如来てしまい申し訳ないです。でも贈り物も用意しておりますので!」
「かき氷なるものが此方の名物とも聞いております。それに燻製も! 是非とも味わいたいと思ったのと、やはり我々もお祝いしたく参上いたしました」
「ほほほ、確かにジュノリス大国よりは暑いが、他国に渡る事など無かった事……暫し拠点にて休ませて貰うとするかのう?」
「皆様ありがとう御座います。こちらからも心を込めたおもてなしをさせて頂きます」


 思わぬ加勢に頭を下げてお礼を伝えると――。


「急な訪問だったんだからそう急がなくていいぜ。シュライとリゼルの事が心配でついてきたって感じだからな」
「僕たちがいれば多少は牽制にはなるでしょう」
「それにアツシ殿の拠点を通れば直ぐに国に帰れますから」
「サプライズは取って置くものじゃて。なぁ?」
「では明日のお披露目会に突如参加と言うサプライズとなる訳ですね」
「その通り」


 確かにアツシ兄上の拠点を使えば直ぐにあちらの神々の国に戻れるか。
 これは【お忍び】が増えそうだなと苦笑いが零れそうになる。


「是非とも今後国同士の話し合いと言う名の勉強会にも参加して貰いたいね!」
「僕もシュライ様の知識を是非教えて頂きたいです」
「是非、俺の知識で良ければ」
「では、わたくしはリゼル様に王妃とはなんたるかを教えようかのう?」
「ノスタルミア女王陛下、ありがとう御座います」


 こうして一旦道を作ってからまたお越しになるそうで、一旦アツシ兄上の拠点に戻ってから贈り物を持って来てくれる事となった。
 色々考えては駄目だ……彼らはとても自由奔放な所がある。
 そう、神々故に自由奔放なのだ。
 そう思うとなんだか納得してしまい「流石神々の島の方々ですね」と言うリゼルに「神々故に自由奔放だと思うんだ」と口にするとやはり納得していた。

 だが、これで明日のお披露目はどうなるか分からなくなった。
 神々の島の国王と仲良くしている俺を他国や貴族がどう見るか分からない。
 他国と言ってもネバリ王国とノベルシカ王国くらいだが、バランドス王国からはシュリウスとファルナが来る為問題はない。
 それに、贈り物と言うのも見当がつかない。
 覚悟はしておいた方が良さそうだ。

 こうして次の日――王族としての衣装に身を包み、大広場にて立食式タイプのお披露目会が始まったのだが、俺とリゼルは少し高い位置にて王族用の椅子に座り、目の前には質のいい机を用意して『神々の島のジュノリス大国からのほんの気持ち』と言う食べ物や飲み物、そしてありとあらゆる甘味が並ぶ中、まずはネバリ王国国王から祝いの言葉を貰い、俺とリゼルは受け取った言葉に返事を返す――と言うのを繰り返していた。
 無論バランドス王国からはシュリウスとファルナが挨拶し、他国の国王が終われば貴族たちからの挨拶が待っている訳だが、アツシ兄上がいうには貴族との挨拶の前に入場するとの事だったので楽しみにしている。
 そして最後の国王であるノベルシカ王国の番になると、国王が変わったのか俺とそう年の変わらない者がノベルシカ王国から着ていた。


「初めまして、ノベルシカ王国が国王。ゼフェルと申します」
「国王が代替わりしたという連絡は受けておらぬが」
「急な国王の代替わりでしたので連絡が遅れたのでしょう」
「そうなのか。それならば致し方あるまい。ゼフェル殿も是時楽しんで頂きたい」
「ええ、発展途上国がどれ程のものかと見学させて貰いますよ」


 その言葉に一瞬緊張が走ったが、なるほど……ノベルシカ国王となったゼフェルはそういう見方でこの国に来ているのか。
 そう思ったが――。


「ゼフェル国王陛下、それは余りにも失礼ですぞ」
「おや、そちらは発展途上どころか、発展が最早出来ないネバリ国王。酪農くらいしかやる事がない国は気楽でいいものですね?」
「生き物相手はとても神経を使う。ゼフェル国王こそ言葉を慎むべきではないか?」


 そう俺が牽制すると嘲笑い「これだから発展途上国は」と笑い出した。


「まぁ、俺の国ノベルシカ王国は魔道具の国ですからねぇ? 画期的なアイテムのお陰で潤っていますよ。ところでシュライ国王には分相応な品があるそうですね? どうです? 冷蔵と冷凍の馬車を買い取って差し上げますよ?」
「ご自慢の魔道具の国なら自力で作っては? それに神々の国のアツシ兄上からの寄贈品です。それを貴方に渡す義理もない」
「あはははははは!!! 本当に神々の国の人間なんて来ると思ってるんですか? 眉唾すぎて話にならない」
「…………」


 このゼフェル国王は自分たちの国こそ至高――と言う考えか。
 確かにこれでは戦争が起こるのも頷ける。
 そう思った時、音楽が鳴り響き入場の音楽が流れる。


「神々の国より、ジュノリス大国が国王アツシ陛下及び、四季の国の国王陛下たちの入場となります!!」


 そうサファール宰相が声を上げると並んでいた貴族もザワリとし、散々俺を馬鹿にしていたゼフェル国王は「は?」と目を見開くと扉を見つめ――扉が開くと質のいい服とドレス姿のアツシ兄上に四季の国の国王たちが従者を連れて入ってきた。
 それは見事に圧巻と言わんばかりの輝く、洗練された動きでもあった。
 貴族は深々と頭を下げて道を開け、呆然とするゼフェル国王をネバリ国王が引っ張って退かすと、アツシ兄上はニッコリと微笑んだ。


「この度はリゼル様のお披露目、おめでとうございます」
「アツシ兄上、お祝いありがとう御座います」
「アツシ兄さま、お祝いありがとう御座います」
「うん! 折角の祝いの席を罵る声が聞こえてな? いても経っても居られなかったんだ」


 そう言うとアツシ兄上はゼフェル国王を横目で睨みつけ、ゼフェル国王は口をパクパクしながら言葉が出ないようだ。
 すると――。


「お披露目祝いのほんの『一部』を出させて貰ったが、足りているか?」
「はい、今の所足りております」
「そうか、足りなくなったら直ぐに他の『一部』をだしてやるといい」
「ありがとう御座います」
「シュライ殿、リゼル殿、この度はお披露目会おめでとうございます。婚姻式も素晴らしかったが、お披露目会も素晴らしいね。赤はシュノベザール王国の色で、この重厚な金はもしや……ジュノリス大国の金かな?」
「はい、アツシ兄上が是非にと友好関係をこの場で示したいと仰って」
「素晴らしい! シュライ殿は神々の島のアツシ殿と義兄弟とも聞いております。流石、賢王同士ですね!」
「アツシ兄上には負けますよ」


 そう声を掛けて来たのはラスカール国王だった。
 少々芝居掛った感じではあったが、俺とアツシ兄上が義兄弟だと公にしたのはこの時が初めてだ。
 これには貴族たちは騒めき、ネバリ国王とゼフェル国王は目を白黒させていた。
 そして――。

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