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第4話 ん? 天使かな? 愛らしすぎるぞ?? もっと控えたほうが良い。

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 ――ローザンヌside――


「ローザンヌ!! またしてもリリーを泣かせたな!! 君は一体何が楽しくてリリーをイジメるんだ!!」
「一体何のことだ! 私はリリー嬢とは今日は顔もあわせていないが! まずクラスが違うからな!! どこでどう会ってイジメると言うのだ! 出来ればわかりやすく教えて欲しい!!」
「声がデケェ!! この筋肉ダルマ女!!」


 そう俺に罵声を浴びせたノザン・フランドルフに、またありもしない免罪を掛けられたことにイライライしていると、一人の少年がツカツカと駆け寄り、持っていた辞書でノザンの顔面を殴った。
 それは正に青天の霹靂であった。


「一人の女性に対して何です見っとも無い!! 兄上、俺は貴方に失望しました!! 家族の気持ちが良く分かる!!」
「ラ……ライカ……貴様ぁ!!!」


 そう叫んで少年に殴りかかってきた図体はデカい、ノザン。
 彼は「ひゃぁ」と小さい悲鳴を上げは身体を縮めて振りかかる痛みに耐えようとしたその時俺の中の男としての本能が『守れ!』と叫んだ。
 ――男性のような自分腕にグイッと抱きしめ、バシン!! と言う音とともにノザンの腕を片手で阻止する。少年は顔を上げると――。


「ローザンヌ!! 弟を放せ!!」
「断る!! 私を守ろうとした気概のある良き男ではないか!! 君、怪我はないか!?」
「は……はぃ……」


 子犬のような愛らしさのある少年。
 本当にノザンの弟か!?
 髪を短くしただけの美少女じゃないのか!?
 そういう不安も渦巻く中、腕の中の彼は頬を染めて俺を見つめてくる――。
 途端心拍数が上昇してノザンの腕をギリリリ……と掴んで「いてぇえ!!」と叫ばせてしまったのは仕方ないだろう。


「君とは話にならん! 私は彼を送って行こう。そもそも不敬を働いたのはそっちであろう、ノザン・フランドルフ!!」
「くっ!」
「君のとても愛らしい弟に免じて今回は許してやろう。だが次はないぞ」


 そう言って美少女の様な彼をお姫様抱っこし、そのまま歩き出す俺……少々男前過ぎただろうか?
 彼に嫌われてないと良いがと思ったが、漂ってくる彼からのオーラは憧れに似た何か。
 嫌われていない事に内心ホッと安堵すると、保健室に行く間に俺のクラスと彼のクラスに指示を飛ばす。
 どうやら弟のロディと同じクラスの男子のようだ。
 つまりAクラス。
 ノザンは最低のEクラスだと言うのに、兄弟で随分と違うのだな。

 その後ややあって、お互いに転生者であることが判明した。
 俺は男だったが、彼の中は女性らしい。
 うむ、あっちの世界で知り合っていたら間違いなくお付き合いしているタイプだ。
 こんな筋肉もない小柄な可愛らしい少年と、俺のような女性でありながらマッスルな身体。
 しかも彼は俺の筋肉質な身体を気持ち悪がることも無かった。

 ――運命では?


「そうそう! 君も知っていたか! 俺は妹から借りて読んでいたんだが中々に悪役令嬢が痛快でな!」
「私もです!! 中々に無い悪役令嬢ですよね!!」
「すまん、思わず俺等と……」
「お互い素のままでいられると言う意味でも、私とローザンヌ様は相性が良かったんですね」

 ――ん? 天使かな? 愛らしすぎるぞ?? もっと控えたほうが良い。


「しかも両方性別が逆と言うのもな……。俺は筋トレが前世でも好きで良くしていたら、家族からは泣かれるし大変だったがやめるに止めれなくてな……お陰でこの様な様だ」
「いえ、それはそれでアリだと。入学式に初恋をしました。私の初恋はローザンヌ様なんです。しかも二回貴女に恋してます」
「熱烈だな……実に嬉しい限りだが。是非両親に手紙を送って婚約してもいいだろうか?」
「あの……末永くよろしくお願い致します……」
「うむ、実に愛らしい……男と言えど、その可愛さは胸に来るな」


 俺とは違い色白で華奢な身体。
 力では到底俺には敵わないその姿はとても魅力的で、反対に既成事実でも作ってしまってモノにしてしまおうか――。
 そう思った矢先ノックの音が聞こえ、弟のロディが入ってきた。
 その後も――。


「まぁ、お姉様が服を脱がして襲ったと言う既成事実もある訳で」
「むう!? 襲ってはいないし既成事実も作っていないが!?」
「でもこれは完全にアウトでしょう。襲われたと言ってもライカなら通りますよ?」
「むう」
「あの、流石に襲われたとは言えないよ。ローザンヌ様に傷がついてしまう。俺はそんな真似させられない」
「ライカ……君は優しいな」
「ローザンヌ様……」
「はいはい、早く服を着ちゃって。もう次の授業も始まっちゃうし」
「む、では帰るとするか。後日改めて挨拶に伺おう」
「はい、末長くよろしくお願いします」


 俺を丸ごと受け止めると言う意味もあるのだろう。
 お互いに想い合っての婚約をしようと言う事になった。
 こんな事実信じられるか?
 この俺をだぞ!?

 公爵家と縁を繋ぎたい男達とて俺の事は遠巻きに見ていたと言うのに、全く彼――いや、彼女には参ってしまうな。
 その後両親に手紙を出し【婚約したい相手がいる。双方同意の上だ。相手の名はライカ・フランドルフである】と手紙を書き、それは双方の親を驚かせることになるのは、もう間もなくだった。
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