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191 カイルのこれまでの出来事を振り返りと、男同士の湯話
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――カイルside――
リディアが忙しい日々を送っている間に起きたことを話そうと思う。
まず、王太子領の酒場だったジューダスの店の牛丼屋がオープンした。
前もって試作で作った料理を宣伝として使ったことも功を成し、連日大盛況らしい。
ジューダスの手伝いをしていたハールは、せっせと手伝いをこなし、厨房を取り仕切るチーフのような立場になったそうだ。
結果、俺のところにはジューダスからハールを引き抜きたいと言う連絡が届いた。
ハールの意思を尊重したい事と、神殿契約を結んでいることから、ハールが望むのであれば新しい契約を結び直す事を約束したが、彼女はジューダスの手伝いをすることについて問題は無いしチーフとしての仕事も問題は無いが、ジューダスとの不確定な関係がこのまま続くことを嫌がった。
その事をジューダスに告げると、即プロポーズをしていたのには驚いた。
結果、ハールはジューダスから三回目のプロポーズを受けたことにより、折れて再婚することにしたらしい。
新しい契約はリディアに関する事を誰にも漏らさない事だけを盛り込み、彼女はジューダスの元へと嫁いで行った。
スピード結婚だったのには驚いたが、更に驚いたのはダンノージュ侯爵領のゴーンとマームである。
マームの心根の優しさに触れたゴーンは、マームが自分の娘を大事にしている姿を見て、結婚しかないと即断した。
押して押して押しまくり、ハールよりも先にゴールインした。
無論、マームにも同じように神殿契約を結び直したが、来年には二人目が出来そうなほどにラブラブなのを感じ取った。
ちなみに、ジューダスとゴーンには結婚の際にある約束をしている。
妻に暴力を働かない。懸命に仕事をして妻を不自由させないように心がける等、妻を持つ男性ならば当たり前の内容の約束だったが、二人は快く約束してくれた。
一度、ジューダスの元にハールの元夫が突撃してきたらしいが、ジューダスの並外れた腕力と愛情により撃破し、怪我を負ったものの、守り切ることが出来たと笑っていた。
ハールもそんなジューダスにやっと安心感を得たそうで、仲睦まじい夫婦となっている。
両者ともに丼ものも大盛況で、最近はキリがないといって売り切れ御免で商売をしているそうだ。
夜の角打ちでは、領内外の話を耳にするらしく、それらは俺を通じて祖父に話が行っている。
後に争いの種となりそうな問題が一つあるが、それはリディア次第とも言えるだろう。
王太子領の焼肉店は、連日大盛況で冒険者の行列が途切れることは無く、毎日黒字を叩きだしているのは言うまでもないが、流石冒険者の胃袋なだけあって、食べ放題で満足しなかった胃袋を満たすために、日夜道具店サルビアの前にある屋台に冒険者は押し寄せているらしい。
特に若い冒険者や、冒険者になりたての少年たちは屋台を活用し、飢えをしのいでいるとも聞いたが、実際どうなのか屋台組に聞くと、事実だそうだ。
駆け出し冒険者は食うにも困る事が多い。
その腹を満たすのが屋台だというのなら、爺様や婆様達は嬉しいだろう。
昼から大量の仕込みをしているなとは思っていたが、そう言う理由があったのならば、屋台組が何時も張りきっているのが分かる。
何かと忙しいリディアには詳しく話すことが出来ない事も多かったが、箱庭に住む女性達からすれば、保護された二人の女性が幸せな結婚を手にした事は羨ましい反面、とても喜ばしい事だと言う。
ただ、やはり子持ちの母親は、もう二度と結婚は御免だと思っている者も多く、如何に過酷な結婚生活を送っていたのかを垣間見る瞬間でもあった。
「よって、俺とリディアの結婚は、リディアと長い話し合いの結果で出された契約を結ぶことで合意しようと話し合いました」
「と、言う事を伝えに来たんですか兄さん」
「リア充爆破爆破」
「爆裂して欲しいねぇ。でも、カイル達には幸せになって欲しいのも事実だよ?」
男組で温泉に入っている最中、俺も途中から参加して温泉で男同士の会話を盛り上がる。
女子が女子会をしているなら、男子は温泉でゆったりと会話するのもアリだろう?
「私も結婚には憧れた時期があったよ……儚い女性だと思っていた」
「「レイン」」
「レインさん……」
「でも、男だったんだ……。儚い女性だと思っていた小麦色の優しい女性は、男性だった」
「「「ご愁傷さまです」」」
「その女性と言うのが、ザザンダさんなんだがね」
「身近過ぎる」
「苦労が絶えないなお前も」
思いもよらないカミングアウトに場が凍ったが、ノイルは恋多き人生だったらしく、一人の女性に決めると言う事が今でも考えられないらしい。
「俺もそろそろ身を固めないかとか周りから言われるけどさ~。女の子って可愛いじゃん? 一人一人個性があって一人一人違った魅力があって可愛いじゃん? 一人になんて絞れねぇよ」
「そう言うの知ってます。最低って言うんですよね?」
「ライト、ストレートすぎる」
「浮気性は死んでも治らないとロキシーから聞いてますから」
「だとしたら俺は一生結婚出来ねーわ……でも、ロキシー姐さんに嫌われたら俺生きていけない」
「死ねばいいと思いますよ?」
「ははは、ライトもカイルと同じ独占欲が強い男だねぇ。私も見習った方がいいのかな?」
「レインさんはまず、ちゃんとした女性と付き合う事からお勧めします」
「そうだな、ハスノやナナノはどうなんだよ」
「二人とも、私はロリコンじゃないよ。どちらかと言うと年上の女性に甘えたいタイプなんだ」
「「意外な答え」」
爽やかイケメン風のレインが、実は甘えたいタイプの男性だったとは、人は見かけに寄らないのだと改めて思った。
ノイルは見た目通りだったが。
「しかし、念密な契約を交わしてまでする結婚と言うことは、やはりそれなりにお互いに譲れない問題や、交わすべき約束が多いと言う事だろう? 契約書と言う名の念書だろうし、ダンノージュ侯爵家で保管される書類になるんだろう?」
「ああ、リディアは結婚しても子供を出産しても、子育てもしながら仕事と商売に打ち込みたい事と、やはり箱庭に住む子供達の事への心配事が多かったみたいだ。無論身体は大事にするし、無理はしないと言う約束はしてくれたが、妊娠していても突っ走っていきそうだろう?」
「「「「確かに」」」
「後は絶対に離婚しない事、どちらか片方が先に死んでも再婚しない事を俺は盛り込ませてもらった」
「「流石の独占欲」」
「当たり前では?」
「ダンノージュ侯爵家の呪いが怖い!! 俺は自由に恋愛して女性に迷惑をかけないようにしつつ毎日可愛い子に癒されたい! 乳も揉みたい! 尻に挟まれたい!」
「汗と一緒に煩悩垂れ流しだな、ノイル」
爽やかイケメンのレインさんにそう言われ、ノイルさんは肩まで温泉に浸かると小さく「だってさ……」と呟いた。
「女の子とお付き合いしたいし、あと腐れなくとか思っててもさ……今はもう冒険者家業はしてないにしても、冒険者ってだけでリスクあるじゃん? 本気で付き合ったらさ……冒険の途中でウッカリ死にでもしたら、残される彼女を思うと本気になれないじゃん?」
「なるほど、ノイルさんは恋愛好きだけど、臆病で繊細なんですね。では聞きますが、このまま安定した道具屋代理店長として生活して基盤がシッカリしていたら、本気の恋愛出来るんですか?」
ライト……お前今日は切り込むな。
そうは思ったが、俺も同じ気持ちだったのでノイルさんの言葉を待っていると、小さく「うん」と答えていた。
「子供がリスクとか思わねーよ。寧ろ俺は子持ちの女性の方が安心するかもしれない」
「子持ちの女性は基本的に旦那がついているもんだぞ」
「ちげーよ。俺は箱庭にいる、ルイズさん親子がいいなーって」
思わぬ所で箱庭に住んでいる親子が飛び出し、流石に俺もライトも目を見開いた。
ルイズさんとは幼い息子を連れて保護された女性の一人で、まだ息子は1歳になったばかりだ。
何処で接点があったのかと言うと、一度だけルイズさんから息子のオムツをとりに行く為に息子さんを預かった事があるらしく、その時の母親らしい姿に胸がキュンとなったらしい。
「母性に弱いタイプの男性だったんですね……」
「分かるよノイル、女性は色気も大事かもしれないが、母性があってこそだよ。甘えさせてくれるような安心感があると全然違うんだよ。ライトくんも分かるだろう?」
「そこは理解します」
「でも、ルイズさんは再婚希望者ではないからなぁ……寧ろ断固再婚反対派だったし」
「は―――……俺の春は遠いなぁ」
しんみりした温泉の中、母性的な女性を求めるSランク冒険者二人に、何とも言えない空気が漂っている。
リア充実爆発と言われても、最早仕方ないかもしれない。甘んじて受け入れよう。
「まぁまぁ、ノイルも私も、青い春じゃないかも知れないが、きっといつかは巡り合えるさ」
「運命的に?」
「そう、運命的に」
「歌劇かよ」
「歌劇でも喜劇でもいいさ。幸せがそこにあるならね」
流石レインさん。良い感じに纏め上げた事でノイルさんも少しは元気になった様だ。
確かにレインさんの爆弾発言には驚いたが、理想の女性と思っていたら男性だった事での失恋から立ち直った彼は強いと感じた。
「それに、ノイルは母性的な女性より、自分が守らないといけないと思うような癖の強い女性の方が、案外合うかもしれないよ?」
「そう言う女性が現れたら考えとく」
「そうするといい」
「レインも、素敵なオネエサンと恋愛出来ることを祈っておいてやるよ」
「そうだね、次はオネェさんよりも、お姉さんがいいね」
自虐か!!!
と叫びそうになったのを何とか堪えた俺とライトだったが、湯あたりする前に温泉から出て多少気持ちもリフレッシュした事で前向きになれるものだ。
すると――。
「成人するまでが長いなぁ……」
そう言って呟く弟の頭をガシガシ撫でまわして励ました次の日。
リディアが新たな商売のカタチを考えていた事に、気が付かなかった。
それは――。
リディアが忙しい日々を送っている間に起きたことを話そうと思う。
まず、王太子領の酒場だったジューダスの店の牛丼屋がオープンした。
前もって試作で作った料理を宣伝として使ったことも功を成し、連日大盛況らしい。
ジューダスの手伝いをしていたハールは、せっせと手伝いをこなし、厨房を取り仕切るチーフのような立場になったそうだ。
結果、俺のところにはジューダスからハールを引き抜きたいと言う連絡が届いた。
ハールの意思を尊重したい事と、神殿契約を結んでいることから、ハールが望むのであれば新しい契約を結び直す事を約束したが、彼女はジューダスの手伝いをすることについて問題は無いしチーフとしての仕事も問題は無いが、ジューダスとの不確定な関係がこのまま続くことを嫌がった。
その事をジューダスに告げると、即プロポーズをしていたのには驚いた。
結果、ハールはジューダスから三回目のプロポーズを受けたことにより、折れて再婚することにしたらしい。
新しい契約はリディアに関する事を誰にも漏らさない事だけを盛り込み、彼女はジューダスの元へと嫁いで行った。
スピード結婚だったのには驚いたが、更に驚いたのはダンノージュ侯爵領のゴーンとマームである。
マームの心根の優しさに触れたゴーンは、マームが自分の娘を大事にしている姿を見て、結婚しかないと即断した。
押して押して押しまくり、ハールよりも先にゴールインした。
無論、マームにも同じように神殿契約を結び直したが、来年には二人目が出来そうなほどにラブラブなのを感じ取った。
ちなみに、ジューダスとゴーンには結婚の際にある約束をしている。
妻に暴力を働かない。懸命に仕事をして妻を不自由させないように心がける等、妻を持つ男性ならば当たり前の内容の約束だったが、二人は快く約束してくれた。
一度、ジューダスの元にハールの元夫が突撃してきたらしいが、ジューダスの並外れた腕力と愛情により撃破し、怪我を負ったものの、守り切ることが出来たと笑っていた。
ハールもそんなジューダスにやっと安心感を得たそうで、仲睦まじい夫婦となっている。
両者ともに丼ものも大盛況で、最近はキリがないといって売り切れ御免で商売をしているそうだ。
夜の角打ちでは、領内外の話を耳にするらしく、それらは俺を通じて祖父に話が行っている。
後に争いの種となりそうな問題が一つあるが、それはリディア次第とも言えるだろう。
王太子領の焼肉店は、連日大盛況で冒険者の行列が途切れることは無く、毎日黒字を叩きだしているのは言うまでもないが、流石冒険者の胃袋なだけあって、食べ放題で満足しなかった胃袋を満たすために、日夜道具店サルビアの前にある屋台に冒険者は押し寄せているらしい。
特に若い冒険者や、冒険者になりたての少年たちは屋台を活用し、飢えをしのいでいるとも聞いたが、実際どうなのか屋台組に聞くと、事実だそうだ。
駆け出し冒険者は食うにも困る事が多い。
その腹を満たすのが屋台だというのなら、爺様や婆様達は嬉しいだろう。
昼から大量の仕込みをしているなとは思っていたが、そう言う理由があったのならば、屋台組が何時も張りきっているのが分かる。
何かと忙しいリディアには詳しく話すことが出来ない事も多かったが、箱庭に住む女性達からすれば、保護された二人の女性が幸せな結婚を手にした事は羨ましい反面、とても喜ばしい事だと言う。
ただ、やはり子持ちの母親は、もう二度と結婚は御免だと思っている者も多く、如何に過酷な結婚生活を送っていたのかを垣間見る瞬間でもあった。
「よって、俺とリディアの結婚は、リディアと長い話し合いの結果で出された契約を結ぶことで合意しようと話し合いました」
「と、言う事を伝えに来たんですか兄さん」
「リア充爆破爆破」
「爆裂して欲しいねぇ。でも、カイル達には幸せになって欲しいのも事実だよ?」
男組で温泉に入っている最中、俺も途中から参加して温泉で男同士の会話を盛り上がる。
女子が女子会をしているなら、男子は温泉でゆったりと会話するのもアリだろう?
「私も結婚には憧れた時期があったよ……儚い女性だと思っていた」
「「レイン」」
「レインさん……」
「でも、男だったんだ……。儚い女性だと思っていた小麦色の優しい女性は、男性だった」
「「「ご愁傷さまです」」」
「その女性と言うのが、ザザンダさんなんだがね」
「身近過ぎる」
「苦労が絶えないなお前も」
思いもよらないカミングアウトに場が凍ったが、ノイルは恋多き人生だったらしく、一人の女性に決めると言う事が今でも考えられないらしい。
「俺もそろそろ身を固めないかとか周りから言われるけどさ~。女の子って可愛いじゃん? 一人一人個性があって一人一人違った魅力があって可愛いじゃん? 一人になんて絞れねぇよ」
「そう言うの知ってます。最低って言うんですよね?」
「ライト、ストレートすぎる」
「浮気性は死んでも治らないとロキシーから聞いてますから」
「だとしたら俺は一生結婚出来ねーわ……でも、ロキシー姐さんに嫌われたら俺生きていけない」
「死ねばいいと思いますよ?」
「ははは、ライトもカイルと同じ独占欲が強い男だねぇ。私も見習った方がいいのかな?」
「レインさんはまず、ちゃんとした女性と付き合う事からお勧めします」
「そうだな、ハスノやナナノはどうなんだよ」
「二人とも、私はロリコンじゃないよ。どちらかと言うと年上の女性に甘えたいタイプなんだ」
「「意外な答え」」
爽やかイケメン風のレインが、実は甘えたいタイプの男性だったとは、人は見かけに寄らないのだと改めて思った。
ノイルは見た目通りだったが。
「しかし、念密な契約を交わしてまでする結婚と言うことは、やはりそれなりにお互いに譲れない問題や、交わすべき約束が多いと言う事だろう? 契約書と言う名の念書だろうし、ダンノージュ侯爵家で保管される書類になるんだろう?」
「ああ、リディアは結婚しても子供を出産しても、子育てもしながら仕事と商売に打ち込みたい事と、やはり箱庭に住む子供達の事への心配事が多かったみたいだ。無論身体は大事にするし、無理はしないと言う約束はしてくれたが、妊娠していても突っ走っていきそうだろう?」
「「「「確かに」」」
「後は絶対に離婚しない事、どちらか片方が先に死んでも再婚しない事を俺は盛り込ませてもらった」
「「流石の独占欲」」
「当たり前では?」
「ダンノージュ侯爵家の呪いが怖い!! 俺は自由に恋愛して女性に迷惑をかけないようにしつつ毎日可愛い子に癒されたい! 乳も揉みたい! 尻に挟まれたい!」
「汗と一緒に煩悩垂れ流しだな、ノイル」
爽やかイケメンのレインさんにそう言われ、ノイルさんは肩まで温泉に浸かると小さく「だってさ……」と呟いた。
「女の子とお付き合いしたいし、あと腐れなくとか思っててもさ……今はもう冒険者家業はしてないにしても、冒険者ってだけでリスクあるじゃん? 本気で付き合ったらさ……冒険の途中でウッカリ死にでもしたら、残される彼女を思うと本気になれないじゃん?」
「なるほど、ノイルさんは恋愛好きだけど、臆病で繊細なんですね。では聞きますが、このまま安定した道具屋代理店長として生活して基盤がシッカリしていたら、本気の恋愛出来るんですか?」
ライト……お前今日は切り込むな。
そうは思ったが、俺も同じ気持ちだったのでノイルさんの言葉を待っていると、小さく「うん」と答えていた。
「子供がリスクとか思わねーよ。寧ろ俺は子持ちの女性の方が安心するかもしれない」
「子持ちの女性は基本的に旦那がついているもんだぞ」
「ちげーよ。俺は箱庭にいる、ルイズさん親子がいいなーって」
思わぬ所で箱庭に住んでいる親子が飛び出し、流石に俺もライトも目を見開いた。
ルイズさんとは幼い息子を連れて保護された女性の一人で、まだ息子は1歳になったばかりだ。
何処で接点があったのかと言うと、一度だけルイズさんから息子のオムツをとりに行く為に息子さんを預かった事があるらしく、その時の母親らしい姿に胸がキュンとなったらしい。
「母性に弱いタイプの男性だったんですね……」
「分かるよノイル、女性は色気も大事かもしれないが、母性があってこそだよ。甘えさせてくれるような安心感があると全然違うんだよ。ライトくんも分かるだろう?」
「そこは理解します」
「でも、ルイズさんは再婚希望者ではないからなぁ……寧ろ断固再婚反対派だったし」
「は―――……俺の春は遠いなぁ」
しんみりした温泉の中、母性的な女性を求めるSランク冒険者二人に、何とも言えない空気が漂っている。
リア充実爆発と言われても、最早仕方ないかもしれない。甘んじて受け入れよう。
「まぁまぁ、ノイルも私も、青い春じゃないかも知れないが、きっといつかは巡り合えるさ」
「運命的に?」
「そう、運命的に」
「歌劇かよ」
「歌劇でも喜劇でもいいさ。幸せがそこにあるならね」
流石レインさん。良い感じに纏め上げた事でノイルさんも少しは元気になった様だ。
確かにレインさんの爆弾発言には驚いたが、理想の女性と思っていたら男性だった事での失恋から立ち直った彼は強いと感じた。
「それに、ノイルは母性的な女性より、自分が守らないといけないと思うような癖の強い女性の方が、案外合うかもしれないよ?」
「そう言う女性が現れたら考えとく」
「そうするといい」
「レインも、素敵なオネエサンと恋愛出来ることを祈っておいてやるよ」
「そうだね、次はオネェさんよりも、お姉さんがいいね」
自虐か!!!
と叫びそうになったのを何とか堪えた俺とライトだったが、湯あたりする前に温泉から出て多少気持ちもリフレッシュした事で前向きになれるものだ。
すると――。
「成人するまでが長いなぁ……」
そう言って呟く弟の頭をガシガシ撫でまわして励ました次の日。
リディアが新たな商売のカタチを考えていた事に、気が付かなかった。
それは――。
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