上 下
171 / 274

171 元スラム孤児たちのスキルと、二人の弟子。

しおりを挟む
さて、次々に手を洗いスキルボードでスキルチェックを行うべく、年齢の高い子たちが並び始めましたわ。それでも3歳までで30人。サクサク行きますわよ!!
机の上にスキルボードを置き、手を乗せる事でスキルが浮き出るスキルボード。
ロストテクノロジーでなければ作れないアイテムですし、教会しか持つ事が許されてないものですけれど、アラーシュ様に貸したスキルボードに関しては教会から金を積んで借りた事にでもするのでしょうね。

まぁ、その辺りはアラーシュ様にお任せしておけば問題ないでしょうし……こちらはこちらで頑張りますわ!


「まずはロック、貴方からね」
「おう……なんかドキドキするな」
「心配なさらないで。持って生まれたスキルを見るだけですもの」
「分かった」


そう言うとロックは両手を広げてスキルボードに置き、3秒ほどして手を離すと、スキルボードは白く輝いて文字を映し出しましたわ。
なるほど……凄いですわね。


「ロック、貴方のスキルは珍しいですわね」
「なんて書いてあったんだ?」
「レアとまでは行きませんけれど、珍しい……聖騎士ですわ」
「せいきし?」
「聖なる心を持つ聖騎士ですわ。魔を払い邪を払い、弱きを助ける騎士ですわ」
「オレがそんな……聖騎士? 嘘だろ?」
「いいえ、それに聖騎士は王家の守り人となる方々が多いんですの。誰かを守りたいと思えば守りたい人間に加護を与える程のレベルもありますわ。スラムで鍛えてきたのですね」
「そう言えば、スラムにいた頃は身体が痛い奴らが俺の近くに来ると楽になるって」
「それは加護の力ですわ」
「加護……俺にも、そんな力があったのか……」
「仲間を守りたい、守っていきたいと思ってきたからこそ、加護の力も強くなったのね……。ロック、あなたの苦労は一切無駄ではなかったわ」


そう言うと、ロックは涙を拭い泣きそうな顔で「そっか」と笑って下さいましたわ。
ただ、聖騎士ともなれば更に勉学は必要になりますし、言葉使いも丁寧な言葉使いを覚えなくてはならなくなる場合もある。
それは、ロックが何処に就職するかによっても変わってきますものね。


「ロック、あなたのスキルは聖騎士ですけれど、貴方が将来守りたい、仕えたいと思う方が現れた時に必要な言葉使いも大事になってきますわ」
「俺は、カイル兄とリディア姉に仕えます」
「ロック……」
「その為に必要な勉強があるならするし、言葉使いも徐々にだけど直していくから!」
「そう……カイルもきっと喜ぶわ。わたくしはロックを歓迎します」
「やった!!!」
「その代わり、勉強も言葉使いも頑張るんですよ? 国王に会う事もありますし」
「う……はい!」


ロックはずっとスラムの子供達のリーダーをしてきて、皆を導いてきた。
だからこそ、加護の力――守りの盾が強いんですのね。
ずっと守っていきたいと思っていたのでしょう。きっとロックの守りの盾は、心の強さによって発動するのでしょう。
弱い心では弱い盾にしかならない様に、強い志と心があれば、もっと強固になるはず。
この事は冒険者のレイスさん達にも相談しましょう。

次に、副リーダーのマルモと言う女の子のスキルを見ると、絵師とありましたわ。
絵師……絵師!!!
求めていた絵師がここに!!!


「マルモさんのスキルは絵師ですわ!」
「絵師……でも女じゃ食べていけないって聞いたことある」
「そんなことありませんわ。わたくしがカイルに頼んで探していたスキルでもありますの」
「え? でも絵師なんて」
「絵師は絵を描くだけではありませんわ、ネイリストとしても素晴らしい力を発揮しますわ!! 近いうちにダンノージュ侯爵領にネイルサロンを作ろうとも思っていましたの。マルモさんは絵師の力で素晴らしいネイルも出来ますわ!」
「アタシ……アタシでも役に立つ? カイル兄やリディア姉の為に役に立つ? だってロックとかけ離れたスキルだけど、役に立てる?」
「充分役に立てますわ! 寧ろ、この箱庭において不遇なスキルなど一つとしてありません!」


そう言うと今までスキルチェックにドキドキしていた子供達の顔がパッと華やかになりましたわ。
そんな子供達に笑顔を見せると、今後マルモさんは勉強の傍ら、絵の道具が欲しいのと、ネイルをその内教えて欲しいと言ってきましたの。
絵の道具ならば直ぐに用意できますけれど、王国文字を全て書けるようになったら、絵の道具一式をプレゼントする約束をしましたわ。
目標があれば頑張れますものね!


その後も次々とスキルチェックをしていくと、鉱山師や植物師、パティシエもドンドン出てきましたわ!
女の子に多かったのは調理師と裁縫師で、男の子に多かったのは植物師やパティシエに鉱山師といったスキルでしたの。
中には、弁護士、薬師、箱庭師、ロストテクノロジー持ちまでいましたわ。

皆が皆自分の生まれ持ったスキルを知ることが出来て喜ぶ中、箱庭師の女の子と、ロストテクノロジーを持つ男の子は不安げでしたわ。


「どうしたの? ファビオニアにフォルジャー」
「あの……アタシ……箱庭師の師匠が欲しいです。リディア姉、師匠になってくれませんか?」
「オレも師匠が欲しい! ロストテクノロジーを使えるのはリディア姉しかいないから!」
「まぁ、それで不安そうでしたのね? ではお二方はわたくしの弟子としましょう!」
「羨ましいぞファビーにフォル!」
「そうだぞ! リディア姉が師匠なんて羨ましいぞ!」
「俺の師匠なんてザザンダさんになりそうだぞ……」
「頑張れよ……悪い人じゃないんだからさ」
「リディア姉~! 俺達鉱山師は、採掘エリアに入っても良いんですか?」


等など質問も相次ぎましたが、最も採掘エリアに詳しいカイルから説明を受ける事を約束してくださるなら、採掘エリアに入る事を許可する旨を伝えると喜んでいましたわ。
調理師の女の子たちは、このまま調理師の方々に教えてもらうそうですし、その他の箱庭にいる同じスキルを持っている方々から、今後は教わるのだと皆さん喜んでいましたわ。
問題はロック。
誰を師とするべきかを悩みますわね。


「ロックは誰を師とするかは、皆さんとの話し合いで決まりますけれど、宜しいかしら?」
「おう……じゃなかった、はい!」


冒険者であっても、聖騎士の方は少ないけどいらっしゃいますもんね。
誰か紹介できる人が居ればいいですけれど……。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

普通の勇者とハーレム勇者

リョウタ
ファンタジー
【ファンタジー小説大賞】に投稿しました。 超イケメン勇者は幼馴染や妹達と一緒に異世界に召喚された、驚くべき程に頭の痛い男である。 だが、この物語の主人公は彼では無く、それに巻き込まれた普通の高校生。 国王や第一王女がイケメン勇者に期待する中、優秀である第二王女、第一王子はだんだん普通の勇者に興味を持っていく。 そんな普通の勇者の周りには、とんでもない奴らが集まって来て彼は過保護過ぎる扱いを受けてしまう… 最終的にイケメン勇者は酷い目にあいますが、基本ほのぼのした物語にしていくつもりです。

Sランク冒険者の受付嬢

おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。 だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。 そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。 「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」 その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。 これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。 ※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。 ※前のやつの改訂版です ※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

【完結】天候を操れる程度の能力を持った俺は、国を富ませる事が最優先!~何もかもゼロスタートでも挫けずめげず富ませます!!~

うどん五段
ファンタジー
幼い頃から心臓の悪かった中村キョウスケは、親から「無駄金使い」とののしられながら病院生活を送っていた。 それでも勉強は好きで本を読んだりニュースを見たりするのも好きな勤勉家でもあった。 唯一の弟とはそれなりに仲が良く、色々な遊びを教えてくれた。 だが、二十歳までしか生きられないだろうと言われていたキョウスケだったが、医療の進歩で三十歳まで生きることができ、家での自宅治療に切り替わったその日――階段から降りようとして両親に突き飛ばされ命を落とす。 ――死んだ日は、土砂降りの様な雨だった。 しかし、次に目が覚めた時は褐色の肌に銀の髪をした5歳くらいの少年で。 自分が転生したことを悟り、砂漠の国シュノベザール王国の第一王子だと言う事を知る。 飢えに苦しむ国民、天候に恵まれないシュノベザール王国は常に飢えていた。だが幸いな事に第一王子として生まれたシュライは【天候を操る程度の能力】を持っていた。 その力は凄まじく、シュライは自国を豊かにするために、時に鬼となる事も持さない覚悟で成人と認められる15歳になると、頼れる弟と宰相と共に内政を始める事となる――。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載中です。 無断朗読・無断使用・無断転載禁止。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

処理中です...