【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

うどん五段

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133 ダンノージュ侯爵領のダンジョンと新しい商品開発と。

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――ロキシーside――


昼食時間に突然リディアちゃんから「地下神殿の情報が欲しい」と言われたライトは、快くOKを出し、昼食を食べ終わるとライトと共にダンノージュ侯爵領の道具店サルビアへともどったんだけれど――まぁ、情報元は決まってるよね。


「やぁ、ライトくん」
「こんにちはナインさん。実はお聞きしたい事があるのですが宜しいですか?」


そう、このナインは毎日朝、昼、晩とライトに会いに来る。
最早ストーカーじゃないかと思わなくもないが、アタシの中ではナインはそっち系の男性なのだと思っている。


「ははは、ライトくんからお願いとは嬉しいね。どんなお願いだい?」
「ええ、地下神殿の情報が欲しくって。どんな神殿であるとか、色々知りたいんです」
「ほう、地下神殿に興味がおありか。では詳しく話す為にも奥の商談スペースを使わせても宜しいかな?」
「待ちな。アタシも行くよ」
「無論ライトくんの婚約者のロキシー殿も是非に」


こうして道具店で働く三人に店を頼むと、アタシはライトとナインと共に商談スペースへと向かった。
アタシの昔の拠点は今の王太子領であった為、ダンノージュ侯爵領の地下神殿については知識が無かったのだ。
知らないダンジョンって、ワクワクするだろう?


「そうだな、まず地下神殿だが、入り口は正に古びた神殿なのだが、地下80層と結構深い。今も深くなっていると聞いている為、成長型のダンジョンだと私は思っている」
「成長型ダンジョンだって?」
「珍しいんですか?」
「いや、珍しくはないよ。王太子領にある三つのダンジョンも成長型ダンジョンだからね」
「そうだったのですね」
「ただ、成長型ダンジョンは長い時を成長するが、度々スタンピードを起こしやすい。その辺りはどうなんだい?」
「この辺りのダンジョンと呼べるようなものは地下神殿しかないからね。それに冒険者にとっては稼ぎやすいダンジョンと言う事もあり、レベルに応じて住み分けも出来ている分、スタンピードは今まで一度も起きたことは無いよ」
「なるほど」
「それで、ダンジョンで良く使う護符等や、こんなものがあると嬉しいと言うのはありますか?」


そうライトが問いかけると、ナインは暫く悩んだ後こんなことを言い出した。


「地下神殿と言うだけあって、湿気が多い事は知っているね? だから、湿気で呼吸がしにくいダンジョンでもあるんだ。地下に行けば良く程、呼吸はしにくくなる。だから、呼吸がしやすくなる護符があれば欲しいね」
「確かに湿気で呼吸がし難くなると言うのは聞いたことがあります」
「ああ、近い所で言えば真夏にマスクをつけて全力で走る感じが常にある感じだ」
「「キツイ……」」
「後は下に降りれば降りる程蒸し暑くなる。出来れば身体を冷やせるアイテムが欲しいね。首元もタオルを水に濡らして使ったりもするが、余り効果が無いんだ」
「なるほど、湿気に熱気が合わさればそれは温泉に長い事浸かっているような暑さだろうね」
「そうだね、水もダンジョンの中の水は飲めないから、出来れば長時間使えるような水筒が欲しい所だが、冒険者は荒くれ者が多いからね。頑丈な水筒なんて夢の夢さ」
「なるほど」
「それに、此れから冬に向けて外は寒くなるのに、汗だくになってダンジョンの外に出れば冷えにやられる。冬の時期は風邪に掛かりやすい冒険者が後を絶たないよ」
「つまり、湿気を何とかできる護符と、耐火の護符があれば良さそうですね」
「耐火の護符は王太子領でよく作られているんだが、ここまで運んで売ろうとすると関税が掛かるんだよ。だから中々冒険者には手が出せない」
「では、箱庭で作ったものを持ってくれば良いのでは?」
「箱庭師の中に錬金術を使える者は殆どいない。もし君たちの箱庭で護符が作れる人がいるのだとしたら、是非欲しい所だね」
「分かりました。纏めると『耐火の護符』に『出来れば湿気を取る護符』と『頑丈で長持ちする水筒』に『身体を冷やせるアイテム』ですね?」
「ああ、ひんやり肌着のお陰で幾分楽になったと思える程なんだ。だが、もし『耐火の護符』を用意できるのなら、身体を冷やせるアイテムは額に貼れるようなものがあれば、それだけでも違うと思うよ」
「なるほど」
「まぁ、夢のような物だよ。長年地下神殿を拠点に頑張っているが、春から夏場にガッツリ稼いで寒くなり始めると冒険者家業を少なくすると言うのは、ダンノージュ侯爵領の冒険者の当たり前だからね」
「では、軽いほっかり布で出来たマントの様な物を一枚鞄に入れているだけでも違いますか?」
「もし作って貰えるのなら欲しいね。ダンジョンから外に出た時に多少でも温かいと助かるからね」
「分かりました。貴重なお話を有難うございます」


耐火の護符はうちの錬金術師なら全員が作れる。
こりゃ一儲けできそうだ。
でも、湿気を何とかできる護符なんてあるんだろうか?
他の地方に行けばそう言うものを見ることもあるのかも知れないけれど、錬金術レベルの高いリディアちゃんにでも聞いてみようかねぇ。

ただ、問題は額に貼ると言う冷やせるアイテム。
あれは、薬師にしか作れない【ひやりんこ】と言うアイテムだろう。
うちには薬師が一人しかいないから、出来る事なら薬師を箱庭で雇って【ひやりんこ専属】で作って欲しい所だね。


「纏め終わったかい?」
「ええ、ですがこの額を冷やすアイテムって」
「ああ、アタシも思った。薬師が欲しくなる案件だね」
「そうですね……。でもラキュアス君には沢山のお薬を作って欲しいですから」
「薬師自体がレアなスキルだ。雇おうと思って雇えるもんじゃないし、薬師と分かれば引っ張りだこだからね」
「うーん……何とかしたいところです」
「取り敢えず、耐火の護符だけでも喜ぼう。うちの錬金術師なら全員が作れるアイテムだ」
「そうですね」


こうしてメモした紙を鞄に入れ、ライトは夜にはリディアちゃんにナインから聞いた地下神殿の情報を伝えていたが――。


「むむむ! 新たな商売チャンスですわね!! 冬が来るまでに片付けますわ!!」
「「「「え!?」」」」


――どうやら、リディアちゃんの中では、新たな商売の品が見つかった様だよ?
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