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127 カイルの受難。
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――カイルside――
今回ばかりは、流石の俺も疲れた。
疲れた原因は色々あるが、本当に疲れる事件が起きた。
「カイル! 一体どうしましたの!?」
「リディア……」
「あぁ……こんなにシオシオになってしまって……何がありましたの?」
「リディア聞いてくれ、今日は大変だったんだ……」
そう言うと、今日の出来事をリディアに話し始めた。
事の起こりは、早朝に商業ギルドに向かい、急遽工場が必要な事と女性寮であるタウンハウスの購入を午前中のうちに終わらせ、午後は裁縫師を100人、ハウスキーパーを5人、調理師を3人雇いたいから集めて欲しいと言う連絡だった。
未だに職に就けない元貴族女性は多いらしく、その上職が欲しい一般人も、「サルビアに雇われたい」と言う人材が余りにも多くて大変だったから丁度良かったと、今日来れる人数なら直ぐ雇えるだろうと言う事で話は纏まっていた。
サルビア布製造所二号店は、一号店の隣の工場を買う事が出来た為、倉庫も比較的近くて助かった。タウンハウスも同じように女性寮の近くにあるタウンハウスを購入することが出来た為、裁縫師たちは纏まって工場へ出勤出来るだろうと言う事で纏まったのだが――問題は面接だった。
没落貴族の女性達は、皆目がギラギラしていて、己のアピールポイントを此方が何も言ってないのに言い出した。
それは、最早集団見合いのような状態で、商業ギルドのギルドマスターが部屋に入ってきて叱責するほどだった。
「お前たちは何を勘違いしているのだ? カイル様には既に結婚を約束した婚約者がいらっしゃる。そしてカイル様は妾や愛妾を持つ方ではない。お前たちを呼んだのは【裁縫師】として雇いたいからだ。裁縫師として雇われに来たのではないのであれば即刻帰れ」
商業ギルドマスターの言葉に女性達は言葉を詰まらせたが、俺が盛大に溜息を吐いたことで女性達は納得したようだった。
そして、自分たちが不味いことをしたと思ったのだろう。無言になり椅子に座り込んだ。
「あなた方は、募集内容をみてこなかった愚か者と言う事ですね。お帰り下さい」
「ま、待ってください!」
「確かに募集内容を見てきました!」
「裁縫には自信があります!」
「では、皆さんは元貴族ですからご自身のスキルをご存じでしょう。裁縫師である方は何人いらっしゃいます?」
「「「「……」」」」
「では、裁縫スキルは? 最低10からないと即戦力にはならない事は募集項目に書いていましたが」
「「「「「………」」」」」
「ギルド職員の方々はこの方々のスキル及び裁縫スキルは幾つかご存じですか?」
「はい、えーっと……最高裁縫レベルは5ですね」
「話になりませんよそれじゃあ。ただの時間の無駄です」
「申し訳ありません、注意事項を読んできた女性ばかりかと思っていたのですが……こうも馬鹿な人間しかいないとは思いもよりませんでした」
「でしょうね。一般人を雇った方がマシですよ」
「ええ、その通りですね」
「裁縫スキルは直ぐに上がります! 努力します!」
「今更あなた方の泣き言を聞く時間も勿体ないんですよ。直ぐにでも工場を動かしたいので再度商業ギルドの方で彼女たちの中に裁縫師がいるかどうか、それと、裁縫レベルが10以上の物が居るか検査してください。そちらのミスですので」
「畏まりました」
「カイル様、本当に申し訳ありません。この者たちはどうしますか?」
「そうですね、追々雇いたい職業がありますので、そちらに回せればと思います。肉体労働ですが喜んでしますよね?」
俺が笑顔で女性達に言うと、顔面蒼白で蹲ってしまった。
そう言う女性達は追い出し、再度裁縫スキルが10ある者と裁縫師がいるかどうかの確認が行われたのだが――。
「道具店サルビアの店主見つけたわよ!」
「?」
ギルド職員に捕まえられ、身動きの取れない女性を生まれて初めて見たよ。
「忘れたとは言わせないわ! 劇団ヒグラシのマリアよ!」
「劇団ヒグラシは記憶にありますが、俺と直接面識はないはずですよ」
「無論ないわよ。でもアンタはアタシを愛する義務があるのよ!」
「義務ですか」
「そうよ! あんた達がネイルチップなんて売り出すからアタシはヒロインの座から追い出されて雑用係に落とされたわ! アンタ、私を妾にする義務があるわ! お金は自由に使えるようにしなさい!」
「追い出してください」
「畏まりました」
「それと、二度とこの人物は雇いたくないので入れないでください。入れれば商業ギルドをダンノージュ侯爵家で訴えます」
「「「「はい!!」」」」」
「やめてよ! 放しなさいよ! アタシの言う事が聞けないの!?」
―――と言う事があった。
結果からいうならば、裁縫師は見つかった。だが没落貴族令嬢の中にスキル10ある者は合計して30人しかおらず、裁縫師と言うスキルを持つ女性は没落貴族の中には居なかったが、一般女性達の中には多くいた為、彼女たちを多く雇う事になった。
ちなみに、件のマリアと言う女性は裁縫スキル1だったそうだ。
「という事で、何とか30人の没落貴族令嬢を雇う事は出来た。残りの人数は全員一般市民となったが、案外うまくいくかもしれない」
「と言いますと?」
「裁縫スキルが軒並み高かった女性達は、少し気弱な女性が多かったんだ。一般市民のお母さん世代と上手くいくんじゃないかな」
「そうでしたのね。でも災難でしたわね。集団見合いと思われたなんて」
「今後は商業ギルドマスターが参加してくれることになったし、何とかなりそうだよ。今回担当したギルド職員は新人だったらしくって、何時もの担当者が全員病欠だったらしい」
「そうでしたのね」
「新人さん達は、まぁ……減給一年と言い渡されていたよ」
「クビにならなかっただけマシですわね」
「という事でリディアに今日は癒されたいと思っている」
「何時も癒されているじゃありませんの」
「いや、ベッド、」
「ただいま帰りました! どうしたんですか兄さん」
「あ――……うん、今日疲れただけなんだ。うん」
流石に弟の前でベッドの上で愛し合おうとは言えない……。
言えば最後、「そんな元気がまだあるんですね。ではこの問題なんですが」と別の案件を持ってこられそうな気がする……。
嫌だ、俺は少しでいいから癒されたい。休みが欲しい。リディアとイチャイチャしたい!
「なんだかカイルは疲れているねぇ……。早めに休んだ方が良いんじゃないかい?」
「そうですわね、早めに就寝した方が良いと思いますわ。これからまだまだ忙しいんですもの。明日にはダンノージュ侯爵領の大口依頼の商品が出来上がるんでしょう? 商業ギルドに行って使いを出して貰って、商品の納品もありますものね」
まさかの、リディアからのダメ出しだった。
別案件が俺に降り注ぐ……大口依頼……素敵な響きだが今は欲しくないっ!
今欲しいのは休息、休日、セックス!!
一人頭を抱えていると、箱庭に住む爺さんたちに囲まれ肩を叩かれた。
「爺様方……」
「生きろカイル」
「女って言う生き物に男の苦悩はわかりゃぁしねぇんだ」
「働け働けと尻を叩かれるぞ」
「それが女と言う生き物だ」
くっ……爺様方も厳しいっ!
夢すら見ることが出来ないのか!!
「あー…兄さんにも休日は必要なようですので、大口依頼の方は私がしておきます。明日は兄さんには休息が必要だと思いますので、リディア姉さんは兄さんについていてあげてください」
「ライト……お前っ」
「確認ですが、既に工場は手に入りましたね? 人数も大丈夫ですよね? サーシャさんかノマージュさんのどちらかに指示をお願いするように頼んでおきます。【ほっかりシリーズ】一式ですよね」
「ああ、ノマージュの方が担当してくれることになってる」
「分かりました。明日は一日ゆっくりしてください。その代わり、私の時は宜しくお願いしますね」
「分かった。協力しよう」
流石だ我が弟よ。
兄の気持ちを読み取る力は凄いな。
「リディアちゃん、男ってバカだねぇ」
「ええ、本当に。……でも、休息は必要ですわ。休息は」
「そうだね、休息は、必要だね」
「間違っても身体を酷使するような真似は出来ませんわね」
「全くだよ」
ロキシ――!!!
リディアが察してしまったじゃないか!
震えながら机に倒れ込むと、ライトの生温い視線が……。
「兄さん、ドンマイです!」
「もう限界だよ、ライト……」
明日はシッカリと、リディアを思いきり堪能しようと強く決意したそんな日だった。
今回ばかりは、流石の俺も疲れた。
疲れた原因は色々あるが、本当に疲れる事件が起きた。
「カイル! 一体どうしましたの!?」
「リディア……」
「あぁ……こんなにシオシオになってしまって……何がありましたの?」
「リディア聞いてくれ、今日は大変だったんだ……」
そう言うと、今日の出来事をリディアに話し始めた。
事の起こりは、早朝に商業ギルドに向かい、急遽工場が必要な事と女性寮であるタウンハウスの購入を午前中のうちに終わらせ、午後は裁縫師を100人、ハウスキーパーを5人、調理師を3人雇いたいから集めて欲しいと言う連絡だった。
未だに職に就けない元貴族女性は多いらしく、その上職が欲しい一般人も、「サルビアに雇われたい」と言う人材が余りにも多くて大変だったから丁度良かったと、今日来れる人数なら直ぐ雇えるだろうと言う事で話は纏まっていた。
サルビア布製造所二号店は、一号店の隣の工場を買う事が出来た為、倉庫も比較的近くて助かった。タウンハウスも同じように女性寮の近くにあるタウンハウスを購入することが出来た為、裁縫師たちは纏まって工場へ出勤出来るだろうと言う事で纏まったのだが――問題は面接だった。
没落貴族の女性達は、皆目がギラギラしていて、己のアピールポイントを此方が何も言ってないのに言い出した。
それは、最早集団見合いのような状態で、商業ギルドのギルドマスターが部屋に入ってきて叱責するほどだった。
「お前たちは何を勘違いしているのだ? カイル様には既に結婚を約束した婚約者がいらっしゃる。そしてカイル様は妾や愛妾を持つ方ではない。お前たちを呼んだのは【裁縫師】として雇いたいからだ。裁縫師として雇われに来たのではないのであれば即刻帰れ」
商業ギルドマスターの言葉に女性達は言葉を詰まらせたが、俺が盛大に溜息を吐いたことで女性達は納得したようだった。
そして、自分たちが不味いことをしたと思ったのだろう。無言になり椅子に座り込んだ。
「あなた方は、募集内容をみてこなかった愚か者と言う事ですね。お帰り下さい」
「ま、待ってください!」
「確かに募集内容を見てきました!」
「裁縫には自信があります!」
「では、皆さんは元貴族ですからご自身のスキルをご存じでしょう。裁縫師である方は何人いらっしゃいます?」
「「「「……」」」」
「では、裁縫スキルは? 最低10からないと即戦力にはならない事は募集項目に書いていましたが」
「「「「「………」」」」」
「ギルド職員の方々はこの方々のスキル及び裁縫スキルは幾つかご存じですか?」
「はい、えーっと……最高裁縫レベルは5ですね」
「話になりませんよそれじゃあ。ただの時間の無駄です」
「申し訳ありません、注意事項を読んできた女性ばかりかと思っていたのですが……こうも馬鹿な人間しかいないとは思いもよりませんでした」
「でしょうね。一般人を雇った方がマシですよ」
「ええ、その通りですね」
「裁縫スキルは直ぐに上がります! 努力します!」
「今更あなた方の泣き言を聞く時間も勿体ないんですよ。直ぐにでも工場を動かしたいので再度商業ギルドの方で彼女たちの中に裁縫師がいるかどうか、それと、裁縫レベルが10以上の物が居るか検査してください。そちらのミスですので」
「畏まりました」
「カイル様、本当に申し訳ありません。この者たちはどうしますか?」
「そうですね、追々雇いたい職業がありますので、そちらに回せればと思います。肉体労働ですが喜んでしますよね?」
俺が笑顔で女性達に言うと、顔面蒼白で蹲ってしまった。
そう言う女性達は追い出し、再度裁縫スキルが10ある者と裁縫師がいるかどうかの確認が行われたのだが――。
「道具店サルビアの店主見つけたわよ!」
「?」
ギルド職員に捕まえられ、身動きの取れない女性を生まれて初めて見たよ。
「忘れたとは言わせないわ! 劇団ヒグラシのマリアよ!」
「劇団ヒグラシは記憶にありますが、俺と直接面識はないはずですよ」
「無論ないわよ。でもアンタはアタシを愛する義務があるのよ!」
「義務ですか」
「そうよ! あんた達がネイルチップなんて売り出すからアタシはヒロインの座から追い出されて雑用係に落とされたわ! アンタ、私を妾にする義務があるわ! お金は自由に使えるようにしなさい!」
「追い出してください」
「畏まりました」
「それと、二度とこの人物は雇いたくないので入れないでください。入れれば商業ギルドをダンノージュ侯爵家で訴えます」
「「「「はい!!」」」」」
「やめてよ! 放しなさいよ! アタシの言う事が聞けないの!?」
―――と言う事があった。
結果からいうならば、裁縫師は見つかった。だが没落貴族令嬢の中にスキル10ある者は合計して30人しかおらず、裁縫師と言うスキルを持つ女性は没落貴族の中には居なかったが、一般女性達の中には多くいた為、彼女たちを多く雇う事になった。
ちなみに、件のマリアと言う女性は裁縫スキル1だったそうだ。
「という事で、何とか30人の没落貴族令嬢を雇う事は出来た。残りの人数は全員一般市民となったが、案外うまくいくかもしれない」
「と言いますと?」
「裁縫スキルが軒並み高かった女性達は、少し気弱な女性が多かったんだ。一般市民のお母さん世代と上手くいくんじゃないかな」
「そうでしたのね。でも災難でしたわね。集団見合いと思われたなんて」
「今後は商業ギルドマスターが参加してくれることになったし、何とかなりそうだよ。今回担当したギルド職員は新人だったらしくって、何時もの担当者が全員病欠だったらしい」
「そうでしたのね」
「新人さん達は、まぁ……減給一年と言い渡されていたよ」
「クビにならなかっただけマシですわね」
「という事でリディアに今日は癒されたいと思っている」
「何時も癒されているじゃありませんの」
「いや、ベッド、」
「ただいま帰りました! どうしたんですか兄さん」
「あ――……うん、今日疲れただけなんだ。うん」
流石に弟の前でベッドの上で愛し合おうとは言えない……。
言えば最後、「そんな元気がまだあるんですね。ではこの問題なんですが」と別の案件を持ってこられそうな気がする……。
嫌だ、俺は少しでいいから癒されたい。休みが欲しい。リディアとイチャイチャしたい!
「なんだかカイルは疲れているねぇ……。早めに休んだ方が良いんじゃないかい?」
「そうですわね、早めに就寝した方が良いと思いますわ。これからまだまだ忙しいんですもの。明日にはダンノージュ侯爵領の大口依頼の商品が出来上がるんでしょう? 商業ギルドに行って使いを出して貰って、商品の納品もありますものね」
まさかの、リディアからのダメ出しだった。
別案件が俺に降り注ぐ……大口依頼……素敵な響きだが今は欲しくないっ!
今欲しいのは休息、休日、セックス!!
一人頭を抱えていると、箱庭に住む爺さんたちに囲まれ肩を叩かれた。
「爺様方……」
「生きろカイル」
「女って言う生き物に男の苦悩はわかりゃぁしねぇんだ」
「働け働けと尻を叩かれるぞ」
「それが女と言う生き物だ」
くっ……爺様方も厳しいっ!
夢すら見ることが出来ないのか!!
「あー…兄さんにも休日は必要なようですので、大口依頼の方は私がしておきます。明日は兄さんには休息が必要だと思いますので、リディア姉さんは兄さんについていてあげてください」
「ライト……お前っ」
「確認ですが、既に工場は手に入りましたね? 人数も大丈夫ですよね? サーシャさんかノマージュさんのどちらかに指示をお願いするように頼んでおきます。【ほっかりシリーズ】一式ですよね」
「ああ、ノマージュの方が担当してくれることになってる」
「分かりました。明日は一日ゆっくりしてください。その代わり、私の時は宜しくお願いしますね」
「分かった。協力しよう」
流石だ我が弟よ。
兄の気持ちを読み取る力は凄いな。
「リディアちゃん、男ってバカだねぇ」
「ええ、本当に。……でも、休息は必要ですわ。休息は」
「そうだね、休息は、必要だね」
「間違っても身体を酷使するような真似は出来ませんわね」
「全くだよ」
ロキシ――!!!
リディアが察してしまったじゃないか!
震えながら机に倒れ込むと、ライトの生温い視線が……。
「兄さん、ドンマイです!」
「もう限界だよ、ライト……」
明日はシッカリと、リディアを思いきり堪能しようと強く決意したそんな日だった。
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