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117 カイルと祖父の強烈タッグと商店街の護衛依頼
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――カイルside――
皆が昼食を食べ終わったころに漸く箱庭に戻れた俺は、子供達から急かされ池鏡のある場所まで連れて行かされていた。
一体何事かと思ったのだが、小さい女の子が言いにくそうに――。
「リディアお姉ちゃんが泣いていたの。何か悪い事が起きたのよ、きっと!」
「なんだと?」
「カイルお兄ちゃん聞いてきて!」
「分かった。直ぐ聞いてくるから皆は一旦ママ達の所へ戻っていてくれるか?」
そう告げると俺は一目散に池鏡にいると言うリディアのもとへと走った。
すると、リディアは確かに涙を流していたが、どこか呆然としている様子だった。
「リディア!!」
「……カイル?」
「どうしたんだ? 子供たちが、リディアが泣いていると心配していたぞ」
「ええ……実は貴方にどうしても話さないといけない案件が出来てしまいましたの。是非アラーシュ様にも持って行って欲しい案件ですわ」
「一体何が起きたんだ?」
「実は――」
そう言うと、リディアは何時もの敵情視察と言いながら、道具屋の様子を音声付きで聞き流しながらアイテムを制作していたらしい。
すると、道具屋がリディアをおびき出すために酒場から荒くれ者を雇う事、そして店を壊す事、誰かを人質にとってリディアを要求することを話していた事を聞いてしまったらしい。
「道具屋はそこまで落ちぶれていたのか……」
「わたくしを得る為に、商店街で働いている方々を襲うなんて……店を壊そうとするなんてあんまりですわ!!」
「だがリディアが敵情視察してくれていたお陰で分かった事だ。悲しい思いをさせてしまってすまないとは思っている。だが、その案件があればこちらも動きやすい」
「カイル……」
「ダンノージュ侯爵家の呪いは強いんだ。愛する婚約者を奪おうとする輩を、タダで生かしておけると思うか?」
笑顔で言い切るとリディアはハッとした様子で俺を見つめてきた。
「ダンノージュ侯爵家の者ならば、誰もが同じことを言うと思うぞ? この案件は食事が終わり次第、祖父のもとへ持っていく。その日の内に対応してくる。アチラの四肢を捥いでやろうじゃないか」
「カ……カイル?」
「俺からリディアを奪う? それは死にたいから殺してくれって言ってるのと同義だぞ」
「カイル? 落ち着いてくださいませ」
「俺は至って冷静だとも。さぁリディア、涙を拭って何時もの笑顔を見せてくれ。大丈夫、リディアが誰かの手に落ちることは一生無いのだから」
「そ、そうですわね!」
「そうだとも! だから徹底的に潰してやろうな! ナジュ王太子風に言えば、斬首刑だ!」
「カ……カイル――! いけませんわ! 何時ものカイルに戻ってぇぇえ!!」
リディアの慌てる姿を見ながら俺は何度も頷き、どうやって四肢をバラバラにして二度と歯向かえないようにしてやろうかと考えていた。
だが、俺一人で考えるよりもお爺様と話しながら決めた方が、より良い道が見つかるだろう。
全く、ダンノージュ侯爵家の呪いを知って居ての発言か、知らないからこその発言かは分からないが、どちらにせよ、死刑でしかない。
その後軽く食事を摂った俺は直ぐに箱庭経由でお爺様のいるダンノージュ侯爵家に向かった。
そして行き交うメイドの内の一人を捕まえると「緊急案件でやってきました。祖父はいますか?」と問いかけると、直ぐに祖父とコンタクトを取ってくれたお陰でスムーズにお爺様に会う事が出来た。
「どうしたカイル、緊急の案件との事だが何かあったか」
「ええ、件の道具屋が、俺からリディアを奪う為に酒場から荒くれ者を雇い、商店街を壊した後、人質を取ってリディアを奪い取ると言う話がありまして」
「ほう……?」
「どう始末してやろうかとご相談に伺いました」
「それはそれは……どうやって始末してやろうか話し合おうではないか」
「ええ、是非に」
不穏な空気が流れていたが、執事のブラウンさんは慣れているのかお爺様の傍に立って話を聞くつもりのようだ。
第三者がいた方が見えない部分にも切り込めるかもしれないから助かるな。
「それで、その情報を手に入れたのは?」
「リディア本人です。敵情視察のために池鏡から道具屋をみていたら、その様な話が出てきたそうで」
「余程ショックを受けた事だろう……。今度、リディア嬢が好きそうなお菓子を用意しておこう」
「有難うございます。実際泣いていたので驚きました」
「件の道具屋は、我が侯爵家を敵に回したな」
「ええ、完全に敵に回しました。俺個人としては四肢を切り離し、殺してくれと許しを請わせるようなヤリ方をしたいところです」
「はっはっは! 血の気が多いなカイルは。だが老い先短い老人にとって、その様な死に様はとっくに覚悟を決めているだろう。ならば、別の方法を考えねばならんぞ」
「と言うと?」
「長い事ダンノージュ侯爵領に仕えてきた道具屋と言う、下らんプライドにしがみついているのだ。それこそが奴の弱点よ」
「つまり、道具屋自体が成り立たなくなればこちらの勝ちと? それではつまらない」
「うむ、故にワシから御触れを出そう」
「御触れですか」
思わぬ言葉に祖父を見ると、祖父は悪巧みをする顔でこう口にした。
「『ダンノージュ侯爵家の傘下に入った商店街こそが、真なるダンノージュ侯爵家が求める姿であり、そこの道具店こそが、真なるダンノージュ侯爵家の求める道具店である。』と言う御触れだ」
「それはつまり、酒場通りにある道具屋に対し、ダンノージュ侯爵家は見切りをつけたと言う事ですね」
「その通りだ。我がダンノージュ侯爵家が見切りをつけた道具屋と言うレッテルに、プライドは粉々に砕けるだろうな。だが逆恨みと言うのはあり得る話だ。それに先にあった話のように酒場から荒くれ者を雇うと言う話もある。そこでだカイル。お前の知る冒険者に高ランクの冒険者はいるかね」
「ええ、Sランク冒険者である鳥の瞳のメンバーはよく店に来ていますし、Aランク冒険者の秋の空もお得意様です」
「では、その二つの冒険者を、我が侯爵家が、問題が収まるまで雇い入れよう。手紙を書くから暫し待て」
「宜しいのですか? 商店街の護衛と言う事でしょう?」
「商店街を荒くれ者から守る為の護衛を、その鳥の瞳と秋の空に任せればよいだろう。報酬は弾むから問題はない。リディア嬢を守る為ならばもう二つ高ランク冒険者を雇っていいくらいだ」
「有難うございますお爺様」
「明日の朝御触れを出す。まずは一度目のトドメを刺せ。カイル、他にトドメを刺せそうな案件は持っているか?」
「あるにはありますが時間が掛りそうです。出来れば商店街周辺を買い、焼肉店となる店の建設をしたいのですが、何分お金が掛かりますから」
「なるほど。カイルは道具屋と懇意にしている酒場も潰したいのだな?」
「酒場は場合によってはですが、リディアは潰す気満々ですね」
「では、金を出そう。周辺を一気に買えるだけの金だ。金貨一万枚あれば足りそうか? 足りなければ追加するが」
「いえ、十分かと……」
「存分に金儲けをするのだ。ダンノージュ侯爵家が許可を出すのだから、新たな商売もドンドン始めろ。土地を買ったら連絡を入れに来い。国王陛下に技術者を派遣して貰う。確かにカイルは今、王太子領でも手一杯のようだが、前もって工事をしたりするだけでも相手にとってプレッシャーになる」
「分かりました」
「こちらが鳥の瞳と秋の空へのダンノージュ侯爵家からの正式な依頼書だ。必ず今日渡せ」
「有難うございますお爺様」
そう言うとお爺様は金庫を開け、重そうな袋をジャラリと俺の前に置くと「金貨一万、好きに使え」とまるで小遣いのように渡してきた。
「これ以上の稼ぎを必ずやたたき出して見せます」
「期待しているぞ。領地が潤えばダンノージュ侯爵家も潤う」
「はい!」
「新たな商売もリディア嬢に話して案を出してもらえ。気分がまぎれるだろう」
「分かりました」
こうして手紙と金貨一万枚を鞄に入れ箱庭へと戻ると、リディアには祖父からの依頼である「新たな商売なんでも良し」と告げると、目を輝かせて次なる商売を考え始めた。
更に箱庭経由でダンノージュ侯爵領にある道具店サルビアへと入ると――。
「時にライト、」
「あ、ナインさん良い所に!」
「む?」
丁度ナインさんがライトと会話をしていたようだ。
それに鳥の瞳メンバーも揃っている。
「鳥の瞳メンバーに実はお話がありまして、商談スペースに来て頂けますか?」
「良かろう」
こうして皆さんが集まったところで、祖父からの直筆である手紙を二枚手渡した。
その内の一つはうちのお得意さんの秋の空宛だが、ナインさんが指示を出すと一人が走って秋の空メンバーを探しに行ったようだ。
しかし、3分しないうちに秋の空メンバーがやってくると、どうやらコロッケを食べている所だったらしい。
眉を寄せながらやってきた秋の空メンバーだが、ダンノージュ侯爵の印がついた手紙を見ると、慌ててコロッケを口に放り込み、俺と手紙を交互に見ている。
「祖父からのお二方冒険者への依頼書です」
「中身を拝見させて頂く」
「同じく」
そう言うと手紙を開けて中を読むと、二人は顔を顰め、口をヘの字に曲げると、俺を見つめた。
「嘘偽りない事実か?」
「事実です」
「そうか……ついに外道な真似をし始めたか」
「護衛、お願いできますか?」
「良かろう。鳥の瞳は商店街が開いている間の護衛をしよう」
「んじゃ、秋の空は商店街が閉まってから店が開くまでの警戒と護衛をしよう」
「お手数をお掛けしますが、問題が片付くまでの間ですので、どうぞよろしくお願いします」
「気にするな。なぁ? キース」
「そうだなナイン。ダンノージュ侯爵家当主からの依頼なんて、滅多に受けられるようなものじゃねぇ。これは誉だ」
「そうだ、名誉ある事だ」
「そう言って頂けるとありがたいです。また、明日御触れが出ます」
「「御触れか」」
「ついに酒場前の道具屋は詰んだな」
「終わりだな」
「だが、それも時代の流れだろう」
「ええ、では本日より宜しくお願いします」
こうして、道具屋と荒くれ者への対策は何とかなりそうだ。
あとは――。
皆が昼食を食べ終わったころに漸く箱庭に戻れた俺は、子供達から急かされ池鏡のある場所まで連れて行かされていた。
一体何事かと思ったのだが、小さい女の子が言いにくそうに――。
「リディアお姉ちゃんが泣いていたの。何か悪い事が起きたのよ、きっと!」
「なんだと?」
「カイルお兄ちゃん聞いてきて!」
「分かった。直ぐ聞いてくるから皆は一旦ママ達の所へ戻っていてくれるか?」
そう告げると俺は一目散に池鏡にいると言うリディアのもとへと走った。
すると、リディアは確かに涙を流していたが、どこか呆然としている様子だった。
「リディア!!」
「……カイル?」
「どうしたんだ? 子供たちが、リディアが泣いていると心配していたぞ」
「ええ……実は貴方にどうしても話さないといけない案件が出来てしまいましたの。是非アラーシュ様にも持って行って欲しい案件ですわ」
「一体何が起きたんだ?」
「実は――」
そう言うと、リディアは何時もの敵情視察と言いながら、道具屋の様子を音声付きで聞き流しながらアイテムを制作していたらしい。
すると、道具屋がリディアをおびき出すために酒場から荒くれ者を雇う事、そして店を壊す事、誰かを人質にとってリディアを要求することを話していた事を聞いてしまったらしい。
「道具屋はそこまで落ちぶれていたのか……」
「わたくしを得る為に、商店街で働いている方々を襲うなんて……店を壊そうとするなんてあんまりですわ!!」
「だがリディアが敵情視察してくれていたお陰で分かった事だ。悲しい思いをさせてしまってすまないとは思っている。だが、その案件があればこちらも動きやすい」
「カイル……」
「ダンノージュ侯爵家の呪いは強いんだ。愛する婚約者を奪おうとする輩を、タダで生かしておけると思うか?」
笑顔で言い切るとリディアはハッとした様子で俺を見つめてきた。
「ダンノージュ侯爵家の者ならば、誰もが同じことを言うと思うぞ? この案件は食事が終わり次第、祖父のもとへ持っていく。その日の内に対応してくる。アチラの四肢を捥いでやろうじゃないか」
「カ……カイル?」
「俺からリディアを奪う? それは死にたいから殺してくれって言ってるのと同義だぞ」
「カイル? 落ち着いてくださいませ」
「俺は至って冷静だとも。さぁリディア、涙を拭って何時もの笑顔を見せてくれ。大丈夫、リディアが誰かの手に落ちることは一生無いのだから」
「そ、そうですわね!」
「そうだとも! だから徹底的に潰してやろうな! ナジュ王太子風に言えば、斬首刑だ!」
「カ……カイル――! いけませんわ! 何時ものカイルに戻ってぇぇえ!!」
リディアの慌てる姿を見ながら俺は何度も頷き、どうやって四肢をバラバラにして二度と歯向かえないようにしてやろうかと考えていた。
だが、俺一人で考えるよりもお爺様と話しながら決めた方が、より良い道が見つかるだろう。
全く、ダンノージュ侯爵家の呪いを知って居ての発言か、知らないからこその発言かは分からないが、どちらにせよ、死刑でしかない。
その後軽く食事を摂った俺は直ぐに箱庭経由でお爺様のいるダンノージュ侯爵家に向かった。
そして行き交うメイドの内の一人を捕まえると「緊急案件でやってきました。祖父はいますか?」と問いかけると、直ぐに祖父とコンタクトを取ってくれたお陰でスムーズにお爺様に会う事が出来た。
「どうしたカイル、緊急の案件との事だが何かあったか」
「ええ、件の道具屋が、俺からリディアを奪う為に酒場から荒くれ者を雇い、商店街を壊した後、人質を取ってリディアを奪い取ると言う話がありまして」
「ほう……?」
「どう始末してやろうかとご相談に伺いました」
「それはそれは……どうやって始末してやろうか話し合おうではないか」
「ええ、是非に」
不穏な空気が流れていたが、執事のブラウンさんは慣れているのかお爺様の傍に立って話を聞くつもりのようだ。
第三者がいた方が見えない部分にも切り込めるかもしれないから助かるな。
「それで、その情報を手に入れたのは?」
「リディア本人です。敵情視察のために池鏡から道具屋をみていたら、その様な話が出てきたそうで」
「余程ショックを受けた事だろう……。今度、リディア嬢が好きそうなお菓子を用意しておこう」
「有難うございます。実際泣いていたので驚きました」
「件の道具屋は、我が侯爵家を敵に回したな」
「ええ、完全に敵に回しました。俺個人としては四肢を切り離し、殺してくれと許しを請わせるようなヤリ方をしたいところです」
「はっはっは! 血の気が多いなカイルは。だが老い先短い老人にとって、その様な死に様はとっくに覚悟を決めているだろう。ならば、別の方法を考えねばならんぞ」
「と言うと?」
「長い事ダンノージュ侯爵領に仕えてきた道具屋と言う、下らんプライドにしがみついているのだ。それこそが奴の弱点よ」
「つまり、道具屋自体が成り立たなくなればこちらの勝ちと? それではつまらない」
「うむ、故にワシから御触れを出そう」
「御触れですか」
思わぬ言葉に祖父を見ると、祖父は悪巧みをする顔でこう口にした。
「『ダンノージュ侯爵家の傘下に入った商店街こそが、真なるダンノージュ侯爵家が求める姿であり、そこの道具店こそが、真なるダンノージュ侯爵家の求める道具店である。』と言う御触れだ」
「それはつまり、酒場通りにある道具屋に対し、ダンノージュ侯爵家は見切りをつけたと言う事ですね」
「その通りだ。我がダンノージュ侯爵家が見切りをつけた道具屋と言うレッテルに、プライドは粉々に砕けるだろうな。だが逆恨みと言うのはあり得る話だ。それに先にあった話のように酒場から荒くれ者を雇うと言う話もある。そこでだカイル。お前の知る冒険者に高ランクの冒険者はいるかね」
「ええ、Sランク冒険者である鳥の瞳のメンバーはよく店に来ていますし、Aランク冒険者の秋の空もお得意様です」
「では、その二つの冒険者を、我が侯爵家が、問題が収まるまで雇い入れよう。手紙を書くから暫し待て」
「宜しいのですか? 商店街の護衛と言う事でしょう?」
「商店街を荒くれ者から守る為の護衛を、その鳥の瞳と秋の空に任せればよいだろう。報酬は弾むから問題はない。リディア嬢を守る為ならばもう二つ高ランク冒険者を雇っていいくらいだ」
「有難うございますお爺様」
「明日の朝御触れを出す。まずは一度目のトドメを刺せ。カイル、他にトドメを刺せそうな案件は持っているか?」
「あるにはありますが時間が掛りそうです。出来れば商店街周辺を買い、焼肉店となる店の建設をしたいのですが、何分お金が掛かりますから」
「なるほど。カイルは道具屋と懇意にしている酒場も潰したいのだな?」
「酒場は場合によってはですが、リディアは潰す気満々ですね」
「では、金を出そう。周辺を一気に買えるだけの金だ。金貨一万枚あれば足りそうか? 足りなければ追加するが」
「いえ、十分かと……」
「存分に金儲けをするのだ。ダンノージュ侯爵家が許可を出すのだから、新たな商売もドンドン始めろ。土地を買ったら連絡を入れに来い。国王陛下に技術者を派遣して貰う。確かにカイルは今、王太子領でも手一杯のようだが、前もって工事をしたりするだけでも相手にとってプレッシャーになる」
「分かりました」
「こちらが鳥の瞳と秋の空へのダンノージュ侯爵家からの正式な依頼書だ。必ず今日渡せ」
「有難うございますお爺様」
そう言うとお爺様は金庫を開け、重そうな袋をジャラリと俺の前に置くと「金貨一万、好きに使え」とまるで小遣いのように渡してきた。
「これ以上の稼ぎを必ずやたたき出して見せます」
「期待しているぞ。領地が潤えばダンノージュ侯爵家も潤う」
「はい!」
「新たな商売もリディア嬢に話して案を出してもらえ。気分がまぎれるだろう」
「分かりました」
こうして手紙と金貨一万枚を鞄に入れ箱庭へと戻ると、リディアには祖父からの依頼である「新たな商売なんでも良し」と告げると、目を輝かせて次なる商売を考え始めた。
更に箱庭経由でダンノージュ侯爵領にある道具店サルビアへと入ると――。
「時にライト、」
「あ、ナインさん良い所に!」
「む?」
丁度ナインさんがライトと会話をしていたようだ。
それに鳥の瞳メンバーも揃っている。
「鳥の瞳メンバーに実はお話がありまして、商談スペースに来て頂けますか?」
「良かろう」
こうして皆さんが集まったところで、祖父からの直筆である手紙を二枚手渡した。
その内の一つはうちのお得意さんの秋の空宛だが、ナインさんが指示を出すと一人が走って秋の空メンバーを探しに行ったようだ。
しかし、3分しないうちに秋の空メンバーがやってくると、どうやらコロッケを食べている所だったらしい。
眉を寄せながらやってきた秋の空メンバーだが、ダンノージュ侯爵の印がついた手紙を見ると、慌ててコロッケを口に放り込み、俺と手紙を交互に見ている。
「祖父からのお二方冒険者への依頼書です」
「中身を拝見させて頂く」
「同じく」
そう言うと手紙を開けて中を読むと、二人は顔を顰め、口をヘの字に曲げると、俺を見つめた。
「嘘偽りない事実か?」
「事実です」
「そうか……ついに外道な真似をし始めたか」
「護衛、お願いできますか?」
「良かろう。鳥の瞳は商店街が開いている間の護衛をしよう」
「んじゃ、秋の空は商店街が閉まってから店が開くまでの警戒と護衛をしよう」
「お手数をお掛けしますが、問題が片付くまでの間ですので、どうぞよろしくお願いします」
「気にするな。なぁ? キース」
「そうだなナイン。ダンノージュ侯爵家当主からの依頼なんて、滅多に受けられるようなものじゃねぇ。これは誉だ」
「そうだ、名誉ある事だ」
「そう言って頂けるとありがたいです。また、明日御触れが出ます」
「「御触れか」」
「ついに酒場前の道具屋は詰んだな」
「終わりだな」
「だが、それも時代の流れだろう」
「ええ、では本日より宜しくお願いします」
こうして、道具屋と荒くれ者への対策は何とかなりそうだ。
あとは――。
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