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115 道具屋の悪巧み。

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――道具屋side――


――嫌がらせに冒険者を寄こした翌朝。
うちの店でたむろってる冒険者を使い商店街の道具屋に行かせた後、翌朝帰ってきた奴らは、ワシに金を返してきた。
一体なんだと思っていると、質の悪い冒険者は店の中にある椅子に座り、他の冒険者に対してこんな事を言い出した。


「俺達さ――……道具屋に言われて商店街に嫌がらせに行ったんだよ」
「お前の所のアイテム使ったら皮膚がかぶれたっていってな」
「ところがだぞ。流石ダンノージュ侯爵家の孫だぜ……。店にくる冒険者の顔と名前、いつ来たか、好きなアイテムの特徴まで覚えてやがった」
「んで、俺達があっちの店に今までいってなかったのもバレた」
「しかも、Sランク冒険者のナインがいるとは知らずにギャーギャー騒いじまったのさ」


これには流石のワシも驚いた。
確かにダンノージュ侯爵家の孫ならば、それくらいの事は当たり前の技術として勉強させられていただろうに、スッカリ頭に血がのぼって忘れていたのだ。なんという失態!
その上、冒険者は更に言葉を続けた。


「ダメもとで、地下神殿で出来たかぶれをみせたらさ、ダンノージュ侯爵家の孫、どうしたと思う?」
「どうしたんだ?」
「なんだ、舐めてでもくれたか?」
「いいや、その腕だと辛いだろうって初級ポーションタダでくれて治してくれたよ」
「「「「マジかよ」」」」
「それって、どっちの孫だった? デカイほうか? 美少女の方か?」
「美少女」
「「「「マジか――……」」」」
「俺は違いを思い知らされたね。あっちは本気でダンノージュ侯爵領の為を思って商売してるってな。金で嫌がらせしてこいっていう道具屋とは違ったぜ」
「フン! そう言うなら尻尾振ってあっちの店にいけばいいじゃろう? こっちの店はお前らなんぞいなくても商売なんぞやっていけるんじゃからな!」
「それ、本気でいってんのかよ」
「俺達ハグレ者しかもう店には来てないってのによー」
「黙れ! ここはワシの店だ! ダンノージュ侯爵領随一の道具屋じゃ!」
「ハッ どこが随一だよ! あっちの道具店と比べたらクソじゃねーか!」
「俺はもうこっちの道具屋にはこねーぜ。やっぱ行くなら俺達の体の事を大事に思ってくれる美少女と美女がいるところがいい」
「オイ。お前たち二人とも裏切る気か!」
「冒険者がどこで何をしようと自由な生き物だろうが!」
「俺達だって本当は商店街の方にいきてーよ!」
「ハグレ者でもライトちゃんって子、許してくれるかな……」


屯ってる冒険者達はそんな事を言い合いながら店を出て行った。
ついに店に来る客が……本当に居なくなったのかも知れない。
いいや、そんなはず等ない。
この店は昔からあるのだ。
昔からある老舗が消える筈などない!


「おのれ商店街の奴らめ……っ」


震える拳をどこに投げていいかもわからず、机を叩いて何とか気を紛らわすが、このままでは店が潰れてしまう。
何とかせねば、何とか……。
新しい改革等、今更要らぬのだ!
今まで通り、安定した、固定概念のもとで全て上手く行っていたではないか!
反抗する店は弾圧し、圧力をかけて仕入れ先だってこちらで手を回して……なのに……なのに今はそれが全て上手くいかない!
箱庭産だといって、知らぬ場所からアイテムが山のように届く。

――そうだとも。
――箱庭産だ。

ならば、その箱庭師さえこちらで取り押さえられれば何とかなるのではないか?
箱庭師がいなくなれば、泣いて許しを請いながら何もできなくなるのではないか?
ならば早い。
商店街に商品を卸している箱庭師を捕らえてしまおう。
命が欲しければいう事を聞けと、契約を交わせばいい。
その為には人を雇わねば……。


「そうだとも。商店街の箱庭師を捕らえれば万事うまくいく。箱庭師を誘き寄せる為にはどうしたらいい……。誰かを誘拐するか?」


だが、その為の冒険者はいなくなってしまった。
酒場に頼もうか……酒場の荒くれ者ならばなんとかなりそうな気がする。
それならば足もつかないだろう。


「酒場の荒くれ者を雇うしかないか。誰かしら誘拐出来ればそれに越したことは無い。店を荒らす事だって可能だ」


金は掛かるが先行投資と思えば何とでもなる。
今の時間は、奴らは寝ているが、夜にでも酒場に行って金を積めば……。


「見ておれよ箱庭師……貴様を捕らえて商店街なんぞ潰してくれる! ワシこそがダンノージュ侯爵領に必要な男よ!! ワシの店こそが随一の道具屋よ!」


そう叫びながら金庫を開け、少なくなった金を幾つかに分けて依頼する為の金にする。
一人銀貨10枚もあれば快く受けてくれるだろう。
何としても商店街を潰さねば……。
ダンノージュ侯爵家の者がしていようが、ダンノージュ侯爵家の傘下だろうが関係ない。
ワシの店こそが正しいのだから!!
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