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97 忘れていたナカース国王陛下との謁見と、報酬について。
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――カイルside――
こうして、地獄の一週間が幕を開けた。
最初は、あり得ない広さの箱庭に驚きを隠せないでいた19人だったが、温泉が三つある時点で既に燃え尽きていた。
規格外の箱庭に来たら、そりゃぁ驚き疲れもするかと思ったが、山を見て俄然やる気を出したのは炭師のナーガだった。
ナーガには専用の炭焼き小屋が作られ、彼専用の仕事場が出来たからだ。
また、ナーガは陶芸師たちに受け入れられるのが早かった。
元々陶芸師と炭師はハズレスキルと呼ばれており、不遇の時期を頑張ったという仲間として受け入れられたようだ。
また、新たに19人の人数が研修に入る事になったのだから、箱庭の住人達も忙しそうだった。
だが、迅速に、かつ必要なことを徹底的にと言う考えのもと、彼らは率先して19人を鍛え続けた。
また、己のやるべき仕事にも手を抜かなかった。
その働き方を見た19人は、自分たちが如何に甘かったのか理解したのか、三日目からは動きが全く違った。
貪欲に技術と知識を蓄えようと頑張っているのが見てとれた。
四日目、調理師たちは作るべき料理を所得してから『カフェ・サルビア』に入った。
初日、燃え尽きて帰ってきた。
それでも婆様達から「頑張れ頑張れ」と励まされ、気合で食いついて行ったようだ。
裁縫師の二人は、初めて見る生地や布に驚き、それらを自分たちが商品にして売る事への喜びに満ちていた。
やはり裁縫師は一味も二味も違う。
此れ以上は語るのを止めよう。そう思った。
漁師の二人は先輩漁師から釣れる魚の豊富さを聞いて驚き、腰を抜かしたと聞いた。
更に男児から貝類を見せられて意識を飛ばしたとも聞いた。
漁師、大丈夫だろうか……。心配はしたが、シッカリと乗り越えたらしく今は頑張っている。
植物師たちは、ザザンダの個性に圧倒されながらも、畑についての説明で理解が追い付かず混乱したと聞いた。
収穫しても二時間で新しい作物が実る畑なんて、リディアの畑くらいだろう。
作物は収穫する際、必ず一つ残しておくことを徹底的に仕込まれた二人は、何処か軍人のような状態になっていた。
どういう育て方をしたのか気になるが、聞かないほうが身のためだろう。
道具店サルビアでの研修組は、毎日燃え尽きて帰ってきては温泉で癒されていた。
皆が口々に言う言葉がある。
「あれは戦争だ……」と。
彼らの将来に幸あれと願わずにはいられなかった。
その間に、ポスターを作って肉屋のジュダーノに商店街のあらゆる場所に『新商店街爆誕!』と言うポスターを貼って貰った。
オープンの日付も書いてあり、商店街がダンノージュ侯爵家の傘下であることも示すことができた。
そして、この一週間の間に、各店舗は全てリディアと俺の協力の許で改装が終わった。
神殿契約した商店街の方々からは、道具屋が怪しい動きをし始めているという話を聞いたが、先手必勝でこっちも一気に一週間後にはオープンだ。
それに、リディアが新しい商売を見つけてしまった。
あの勢い、あの状態を見るに――今までで一番の売り上げを叩きあげる商売になるに違いない。
形になる前に全員を集めて説明するとリディアは言っていたが、『焼き肉店』とはどういったものだろうか?
また、米が欲しいと聞かれたが、米はこの辺りの国々には存在しないと告げると、リディアは見るからにションボリしていた。何とかしてやりたいと思うが難しい……。
「では、明日オープンを前に」
「面倒ごとを片すか」
「国王陛下への謁見ですね」
「アタシも行かないとダメなのかい……」
そう、スッカリ忘れていたが、一番の面倒ごとである国王陛下との謁見を済ませてしまおうという話になった。
陛下は既に今か今かと首を長くして待っているらしく、祖父から急かされたのだ。
属国になる前の悪行を洗い浚い出したこともあり、俺達一人一人に報酬も出るらしく、それを貰う事もしてこなくてはならない。
朝からバタバタとドレスとスーツを貰い、ダンノージュ侯爵家に戻り着替えを済ませるとブラウンさんの箱庭経由で祖父と共にナカース王国の城へ謁見しに向かったのだが――。
「実に素晴らしいドレスだな、リディアにロキシー」
「有難うございますわ」
「スリットが恥ずかしくない程度にあるのがポイント高いですよね」
「何より二人一組セットの色合いで作ってあるのが良いと思うぞ」
そう、お互いにコレデモカと言うくらいお揃いの色で仕立てたのだ。
なので、ロキシーとライトは同じワインレッド。俺とリディアはロイヤルブルーと言う色らしい。
余りの美しさに行き交う騎士とメイド達が立ち止まっていたが、気にせず謁見の間までくると、中に入る事を進められた。
「よくぞ来たな、ダンノージュ侯爵家の者たちよ」
「お久しぶりで御座います、陛下」
「さ、堅苦しい挨拶は抜きだ。お主の孫と、その婚約者を紹介してくれ」
「はい、我が孫カイルとその婚約者リディア嬢。そして弟のライトとその婚約者ロキシーで御座います」
「実に素晴らしい事だ。ラオグリムが駆け落ちして23年……やっと巡り合えたな、アラーシュよ」
「ええ、商売人としても高い技術と技能を持っております」
「話は聞き及んでいる。実に素晴らしい孫を持った。報酬だが一人金貨100枚! それと、願う物を何でもとは行かぬが、用意してやろう。何が欲しい」
そう国王陛下が口にした瞬間だった。
「でしたら肉を」
「肉……?」
その一言に、流石の俺も固まった。
「はい、肉で御座います。ダンノージュ侯爵家の傘下に入った肉屋に、新たな肉を提供する為の牧場を提供して頂きたいです」
「牧場であったか……」
「出来れば毎日大量に欲しいです」
「う、うむ。リディア嬢には肉を大量に用意できる牧場を提供しよう」
「有難うございます!!」
「他の者たちはどうだ?」
「リディアが欲しい物が私の欲しいものです」
「私はロキシーが欲しい物が」
「え、アタシが欲しいのはリディアちゃんが楽しく商売できる環境だよ」
「ふむ、ではリディア嬢が楽しく商売できるよう、色々と取り計らう事にしよう。どうすればよい」
「では、その願いは王都に店を出すときにご相談したく」
「ほう?」
「今は肉で御座います」
「う、うむ。分かった、肉だな。では、ダンノージュ侯爵家のリディアとして欲しいものはあるか? これはワシからのプレゼントだ」
「欲しい物と言っても、正直に申し上げますと……結構な物になると思いますが」
「ほう? 聞かせてくれぬか?」
「はい、ダンノージュ侯爵家の傘下に入った商店街付近の建物を買い取りたいです。大きな店を、酒場より大きな店を作りたいので」
「酒場より大きな」
「店を作る……」
流石に全員が固まった。
「それが難しいのでしたら、酒場と同じサイズの店が欲しいです。内装とかはコチラで決めても良いでしょうか」
「うむ、それは構わんが……リディア嬢は生粋の商売人のようだな」
「有難うございます」
「アラーシュよ、どう思う」
「勝ち戦……と、リディアは申しておりましたので」
「そ、そうか」
一国の王が困惑している……。
そして、俺もまだ困惑している。
そこまで価値がある商売なのか――焼肉定食!!
「では、ワシからのプレゼントだ。酒場より少し大きい店を建ててやろう」
「よろしいのですか?」
「アレだけ荒れていた場所を属国としただけでも大変でしたろうに」
「いやいや、リディア嬢は面白い。ワシも投資してみたくなった。リディア嬢、もしその店が繁盛したら王都でも作ってくれると約束してくれるか?」
「是非に」
「宜しい。ナカース王家がダンノージュ侯爵家の新たな店を作る手伝いをしよう。だが木材があの辺りは少ない。どうするべきか」
「でしたらわたくしの箱庭から用意します」
「そうか、色々凄いな。うん、ワシに出来ることは金を出す事と技術者を派遣するくらいだがいいのか?」
「構いませんわ」
「良かろう。暫くはそなたたちも忙しかろう。だが連絡があり次第すぐに技術者と出資をしてやろうと思う。連絡はアラーシュ頼めるか?」
「分かりました」
「カイルよ、そなたの婚約者は恐ろしい程に商売人だな」
「何よりも嬉しい言葉です」
――こうして無事に謁見も終わり、ダンノージュ侯爵家でドレスを脱いだリディアとロキシーは背伸びをしながら談笑している。
明日からの地獄の話題の様だ。
「今日の夜、店に出る方々は新たな店に案内して中のチェックをして頂きましょう」
「ああ、それが良い。皆ビックリするだろう」
「オープン初日は出が悪いですわ。本格的に忙しくなるのは二日目と見ていいでしょうね」
「後は、アチラがどう動くか見物しようかね」
「カイル」
「ん?」
「全部の総括、お願いしますわね」
「リディア」
「ん?」
「俺を将来ハゲさせないでくれよ?」
「ハゲても貴方は素敵ですわ!」
「あ、はい」
リディア、俺を禿げさせる気満々だな……頭皮をこれからは労わろうと決意した。
そしてその夜――。
新しい店舗確認にいった18人は、俄然やる気を出しまくっていた。
若いが故か、血が滾っているのか……俺はその様子を見て冷や汗が流れていた。
「皆さん、滾って寝れなくなっては大変ですわ! わたくし秘蔵の紅茶を飲んだら各自寮へ戻り眠ってくださいね~」
「秘蔵の紅茶出したらその場で寝ないか?」
「リラックスさせるのが目的だから大丈夫だろ?」
「リラックスは大事です」
こうして、皆が寮へ戻り朝日が昇る頃――決戦当日が始まる!!
道具屋と道具店サルビアの違いをわからせてやるよ!!
こうして、地獄の一週間が幕を開けた。
最初は、あり得ない広さの箱庭に驚きを隠せないでいた19人だったが、温泉が三つある時点で既に燃え尽きていた。
規格外の箱庭に来たら、そりゃぁ驚き疲れもするかと思ったが、山を見て俄然やる気を出したのは炭師のナーガだった。
ナーガには専用の炭焼き小屋が作られ、彼専用の仕事場が出来たからだ。
また、ナーガは陶芸師たちに受け入れられるのが早かった。
元々陶芸師と炭師はハズレスキルと呼ばれており、不遇の時期を頑張ったという仲間として受け入れられたようだ。
また、新たに19人の人数が研修に入る事になったのだから、箱庭の住人達も忙しそうだった。
だが、迅速に、かつ必要なことを徹底的にと言う考えのもと、彼らは率先して19人を鍛え続けた。
また、己のやるべき仕事にも手を抜かなかった。
その働き方を見た19人は、自分たちが如何に甘かったのか理解したのか、三日目からは動きが全く違った。
貪欲に技術と知識を蓄えようと頑張っているのが見てとれた。
四日目、調理師たちは作るべき料理を所得してから『カフェ・サルビア』に入った。
初日、燃え尽きて帰ってきた。
それでも婆様達から「頑張れ頑張れ」と励まされ、気合で食いついて行ったようだ。
裁縫師の二人は、初めて見る生地や布に驚き、それらを自分たちが商品にして売る事への喜びに満ちていた。
やはり裁縫師は一味も二味も違う。
此れ以上は語るのを止めよう。そう思った。
漁師の二人は先輩漁師から釣れる魚の豊富さを聞いて驚き、腰を抜かしたと聞いた。
更に男児から貝類を見せられて意識を飛ばしたとも聞いた。
漁師、大丈夫だろうか……。心配はしたが、シッカリと乗り越えたらしく今は頑張っている。
植物師たちは、ザザンダの個性に圧倒されながらも、畑についての説明で理解が追い付かず混乱したと聞いた。
収穫しても二時間で新しい作物が実る畑なんて、リディアの畑くらいだろう。
作物は収穫する際、必ず一つ残しておくことを徹底的に仕込まれた二人は、何処か軍人のような状態になっていた。
どういう育て方をしたのか気になるが、聞かないほうが身のためだろう。
道具店サルビアでの研修組は、毎日燃え尽きて帰ってきては温泉で癒されていた。
皆が口々に言う言葉がある。
「あれは戦争だ……」と。
彼らの将来に幸あれと願わずにはいられなかった。
その間に、ポスターを作って肉屋のジュダーノに商店街のあらゆる場所に『新商店街爆誕!』と言うポスターを貼って貰った。
オープンの日付も書いてあり、商店街がダンノージュ侯爵家の傘下であることも示すことができた。
そして、この一週間の間に、各店舗は全てリディアと俺の協力の許で改装が終わった。
神殿契約した商店街の方々からは、道具屋が怪しい動きをし始めているという話を聞いたが、先手必勝でこっちも一気に一週間後にはオープンだ。
それに、リディアが新しい商売を見つけてしまった。
あの勢い、あの状態を見るに――今までで一番の売り上げを叩きあげる商売になるに違いない。
形になる前に全員を集めて説明するとリディアは言っていたが、『焼き肉店』とはどういったものだろうか?
また、米が欲しいと聞かれたが、米はこの辺りの国々には存在しないと告げると、リディアは見るからにションボリしていた。何とかしてやりたいと思うが難しい……。
「では、明日オープンを前に」
「面倒ごとを片すか」
「国王陛下への謁見ですね」
「アタシも行かないとダメなのかい……」
そう、スッカリ忘れていたが、一番の面倒ごとである国王陛下との謁見を済ませてしまおうという話になった。
陛下は既に今か今かと首を長くして待っているらしく、祖父から急かされたのだ。
属国になる前の悪行を洗い浚い出したこともあり、俺達一人一人に報酬も出るらしく、それを貰う事もしてこなくてはならない。
朝からバタバタとドレスとスーツを貰い、ダンノージュ侯爵家に戻り着替えを済ませるとブラウンさんの箱庭経由で祖父と共にナカース王国の城へ謁見しに向かったのだが――。
「実に素晴らしいドレスだな、リディアにロキシー」
「有難うございますわ」
「スリットが恥ずかしくない程度にあるのがポイント高いですよね」
「何より二人一組セットの色合いで作ってあるのが良いと思うぞ」
そう、お互いにコレデモカと言うくらいお揃いの色で仕立てたのだ。
なので、ロキシーとライトは同じワインレッド。俺とリディアはロイヤルブルーと言う色らしい。
余りの美しさに行き交う騎士とメイド達が立ち止まっていたが、気にせず謁見の間までくると、中に入る事を進められた。
「よくぞ来たな、ダンノージュ侯爵家の者たちよ」
「お久しぶりで御座います、陛下」
「さ、堅苦しい挨拶は抜きだ。お主の孫と、その婚約者を紹介してくれ」
「はい、我が孫カイルとその婚約者リディア嬢。そして弟のライトとその婚約者ロキシーで御座います」
「実に素晴らしい事だ。ラオグリムが駆け落ちして23年……やっと巡り合えたな、アラーシュよ」
「ええ、商売人としても高い技術と技能を持っております」
「話は聞き及んでいる。実に素晴らしい孫を持った。報酬だが一人金貨100枚! それと、願う物を何でもとは行かぬが、用意してやろう。何が欲しい」
そう国王陛下が口にした瞬間だった。
「でしたら肉を」
「肉……?」
その一言に、流石の俺も固まった。
「はい、肉で御座います。ダンノージュ侯爵家の傘下に入った肉屋に、新たな肉を提供する為の牧場を提供して頂きたいです」
「牧場であったか……」
「出来れば毎日大量に欲しいです」
「う、うむ。リディア嬢には肉を大量に用意できる牧場を提供しよう」
「有難うございます!!」
「他の者たちはどうだ?」
「リディアが欲しい物が私の欲しいものです」
「私はロキシーが欲しい物が」
「え、アタシが欲しいのはリディアちゃんが楽しく商売できる環境だよ」
「ふむ、ではリディア嬢が楽しく商売できるよう、色々と取り計らう事にしよう。どうすればよい」
「では、その願いは王都に店を出すときにご相談したく」
「ほう?」
「今は肉で御座います」
「う、うむ。分かった、肉だな。では、ダンノージュ侯爵家のリディアとして欲しいものはあるか? これはワシからのプレゼントだ」
「欲しい物と言っても、正直に申し上げますと……結構な物になると思いますが」
「ほう? 聞かせてくれぬか?」
「はい、ダンノージュ侯爵家の傘下に入った商店街付近の建物を買い取りたいです。大きな店を、酒場より大きな店を作りたいので」
「酒場より大きな」
「店を作る……」
流石に全員が固まった。
「それが難しいのでしたら、酒場と同じサイズの店が欲しいです。内装とかはコチラで決めても良いでしょうか」
「うむ、それは構わんが……リディア嬢は生粋の商売人のようだな」
「有難うございます」
「アラーシュよ、どう思う」
「勝ち戦……と、リディアは申しておりましたので」
「そ、そうか」
一国の王が困惑している……。
そして、俺もまだ困惑している。
そこまで価値がある商売なのか――焼肉定食!!
「では、ワシからのプレゼントだ。酒場より少し大きい店を建ててやろう」
「よろしいのですか?」
「アレだけ荒れていた場所を属国としただけでも大変でしたろうに」
「いやいや、リディア嬢は面白い。ワシも投資してみたくなった。リディア嬢、もしその店が繁盛したら王都でも作ってくれると約束してくれるか?」
「是非に」
「宜しい。ナカース王家がダンノージュ侯爵家の新たな店を作る手伝いをしよう。だが木材があの辺りは少ない。どうするべきか」
「でしたらわたくしの箱庭から用意します」
「そうか、色々凄いな。うん、ワシに出来ることは金を出す事と技術者を派遣するくらいだがいいのか?」
「構いませんわ」
「良かろう。暫くはそなたたちも忙しかろう。だが連絡があり次第すぐに技術者と出資をしてやろうと思う。連絡はアラーシュ頼めるか?」
「分かりました」
「カイルよ、そなたの婚約者は恐ろしい程に商売人だな」
「何よりも嬉しい言葉です」
――こうして無事に謁見も終わり、ダンノージュ侯爵家でドレスを脱いだリディアとロキシーは背伸びをしながら談笑している。
明日からの地獄の話題の様だ。
「今日の夜、店に出る方々は新たな店に案内して中のチェックをして頂きましょう」
「ああ、それが良い。皆ビックリするだろう」
「オープン初日は出が悪いですわ。本格的に忙しくなるのは二日目と見ていいでしょうね」
「後は、アチラがどう動くか見物しようかね」
「カイル」
「ん?」
「全部の総括、お願いしますわね」
「リディア」
「ん?」
「俺を将来ハゲさせないでくれよ?」
「ハゲても貴方は素敵ですわ!」
「あ、はい」
リディア、俺を禿げさせる気満々だな……頭皮をこれからは労わろうと決意した。
そしてその夜――。
新しい店舗確認にいった18人は、俄然やる気を出しまくっていた。
若いが故か、血が滾っているのか……俺はその様子を見て冷や汗が流れていた。
「皆さん、滾って寝れなくなっては大変ですわ! わたくし秘蔵の紅茶を飲んだら各自寮へ戻り眠ってくださいね~」
「秘蔵の紅茶出したらその場で寝ないか?」
「リラックスさせるのが目的だから大丈夫だろ?」
「リラックスは大事です」
こうして、皆が寮へ戻り朝日が昇る頃――決戦当日が始まる!!
道具屋と道具店サルビアの違いをわからせてやるよ!!
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