上 下
96 / 274

96 新たに雇う19人の若者と、新たなる商売のタネ。

しおりを挟む
商業ギルドに頼んでいた人材は、スキルを持った人材ですわ。
【漁師】【裁縫師】【調理師】【植物師】そして、計算と品出しが出来る人材。
道具店サルビアでは、カイルがオーナーを務めつつ新たに雇った人材で頑張って貰う予定ですけれど、最初の一週間のみ、ライトさんとロキシーお姉ちゃんも新たな道具店に入りますわ。
Sランク元冒険者のロキシーお姉ちゃんが護衛として入る事で、ある程度の威圧にはなるはずですものね。


「まず名簿を見せてくださいますか?」
「此方となります」
「あら、この街出身ではない方も多いんですのね」
「ええ、この街には出稼ぎに来る者も多いんです」


なるほど、これはアラーシュ様に報告しなくてはなりませんわね。
書類を見ていくと、他の村や町からの出稼ぎの方々が18人。内、頼んでいたスキル持ちも豊富……。


「ふむ、女性も多いんですのね」
「出稼ぎに女性は多いんですか?」
「やはり、村では働く場所がなく街に働きに来る女性達は多いです。そう言う方々は基本的に調理スキルが高く、飲食店で働いたりするんですが……やはり酒場の方が給料も良くて競争率も高く」
「なるほど。カイル、商店街の隣にあった元酒場っぽい奴、買いましょう」
「え?」
「女性寮は必要ですわ」
「寮?」
「女性専用の住む場所ですわ。家で雇うなら彼女たちの身の安全は保障しなくては」
「わ、解かった。という事で聞いての通りだが」
「畏まりました」
「ああそれと、男性寮も欲しいですわ。商店街に近い場所に家を構えることは出来まして?」
「探してまいります」
「リディア、女性は分かるが、」
「衣食住の安心はサルビアの名に必ずついて回る。その為ですわ」
「そ、そうか」
「それに、この街に住んでいる方は、今は余り雇いたくありませんの。何処で繋がっているか分かりませんもの。用心に越したことはありませんわ」
「それは言えてる。随分とあの道具屋はあっちこっちと繋がってるからね」
「護衛は冒険者ギルドから雇いましょう」


するのなら徹底的に。
特にか弱い女性を守らねば、ダンノージュ侯爵家の名に傷がつきますわ。


「こちらの出稼ぎの方18名と会わせて頂きます」
「畏まりました。既に頼まれていた方々は別室にてお待ちです」
「では参りましょう」


出稼ぎで来ている18人のうち、8人は男性、残り10人は女性でしたわ。
道具店で雇うのは男性4人、こちらは計算や品出しが出来る方ですわね。
二人はスキルに【漁師】とありましたから、魚屋をお願いしましょう。
そして残り二人の男性にはスキルに【植物師】がありましたから、八百屋をお願いすることになりそうですわね。
残る女性、内二人は【裁縫師】残り8人は【調理師】でしたわ。
調理師でしたら、即研修、その間に店を改装し、即戦力となって貰いましょう。
裁縫師のお二人は、寝具店と洋服店で分かれて貰い、早速作って貰わねばならない物もありますわね。
初期投資ですわ。属国となった業務提供している店から品物を多く買いましょう。
それを出すことで最初は何とかなりそうですわね。


商店街をオープンさせても、必ず一週間、人は様子を見ますわ。
即動くことはあまり無いはず。
冒険者はフットワークが軽いですから、件の道具屋とうちとの差をハッキリと見せつけられる事でしょう。
道具店で働くにしても、雇う男性も一週間は研修に出かけて貰いますわ。場所はレイスさんの所が宜しいわね。
地獄の忙しさの中、嫌でも頭に商品が入り込む事でしょう。
そんな事を思いつつ、案内された別室に入ると、既に18人が座って待っておられましたわ。
彼らもダンノージュ侯爵家に雇われるとは思っていなかったのでしょうね。驚いてますわ。


「初めまして皆さん。俺はダンノージュ侯爵家のカイルと申します。今後、サルビア商店街を立ち上げる事になりましたので、皆さん一人ずつ話を聞きながら雇うかどうか決めさせて頂きますが、まず最初に――神殿契約が嫌でしたら部屋を出て行ってください」


最初から神殿契約が入るとは思わなかったのでしょう。
18人は一瞬ザワリとしましたが、誰一人出て行こうとはしませんでしたわ。


「皆さん神殿契約を結ぶという事で宜しいですね?」
「「「「はい」」」」
「次に、いくつかの事を最初に説明させて頂きます。皆さん現在、住んでいる場所は宿屋で間違いはありませんね?」
「「「「はい」」」」
「住む場所についてはコチラで用意します。家賃もいりません。その代わりシッカリと働いて貰います。いいですね?」


思わぬ提案だったのかしら?
皆さん驚いて目を見開いたり口に手を当てて驚いたりしてますわ。


「まずは女性寮についてですが、後ほど冒険者ギルドにて護衛も用意します。女性だけで住むのは危険が伴いますので、朝、昼、晩、夜中から朝方の間、寮と女性を守る為の護衛を複数人雇います。身の安全は保障できるでしょう」
「そこまでして頂けるんでしょうか……」
「我がダンノージュ侯爵の家紋、サルビアは家族愛と言う花言葉です。家族を守る為ならばその手を惜しみません。男性も同じように守られますか?」
「俺達は男ですから」
「守られるより戦います」
「ではその様に。神殿契約を為さってくださる18人については雇う事を約束しましょう。ですが、即研修に入って貰います」
「「「「研修……」」」」
「たった一週間、忙しい日々に身を置くだけです。無論働いて覚えてもらいますがね」


皆さん戦々恐々としてらっしゃいますわね。
でも安心なさって。
皆さん良い方ばかりですから癒されましてよ!


「まず、漁師スキルを持つお二方には魚屋をやって貰います。魚は毎日箱庭から持ってきますので、売り切れなくても良いので売ってください。漁師スキルを持っているという事は、家は漁師ですか?」
「「はい」」
「では魚には詳しいでしょうから安心です」
「でも氷が……」
「氷もこちらで用意します。他に質問は?」
「「ありません、頑張ります」」


そう、箱庭には氷雪機と言う優れたロストテクノロジーで作り出した氷を生み出す機械がありますわ。
料理にも使いますし大活躍の一品!
氷の心配は無いのです。


「魚屋については問題ありませんね。研修先は海です。先輩漁師と色々話をして下さい。次に植物師のお二人には八百屋をお願いします。研修先は畑になりますが、こちらも同じように先輩植物師の方と仲良くしてください。あと差別はしないでください」
「「差別?」」
「あなた方10人の最初の研修場所は箱庭です。そこには先住の方々が住んでいます。そこで研修をして貰いますが、心は女性でも身体は男性と言う方も多くいらっしゃいます。そう言う方々への差別は許しません」
「「「「はい!」」」」
「残り8人の調理師の方々には、属国となった場所でやっている『カフェ・サルビア』での研修及び、箱庭での研修が行われます。即戦力となるよう鍛えます」
「「「「即戦力……」」」」
「安心してください。皆さん気のいい方々ばかりですよ。料理スキルが皆さん高いですので、教える料理はそう難しくはないはずです。……だよな? リディア」
「ええ、決まった幾つかの料理のみに絞りますわ」
「また、案があれば内容次第では採用しますので、ドンドン皆さん案を出してくださいね」


そこまで話した時でしたわ。
急に廊下が騒がしくなり、職員の方々が何やら騒いでいると思った途端ドアが開き、一人の青年が入ってきましたわ。


「俺を、俺も雇って下さい!」
「ナーガ!」
「御兄弟ですか?」
「はい」


どうやら他の村から来た青年のようですわ。
でも何故このリストに入っていなかったのかしら?


「俺は、俺のスキルは【炭師】です! ハズレスキルですけれど、お役に立ちたいです!」
「【炭師】ですって!?」
「リディア、どうした?」
「即雇いますわ!! 焼肉定食!」
「「「「は?」」」」
「炭師と言う事は、炭を焼くことができますのよね?」
「はい!」
「貴方、絶対家で雇いますわ。決定事項ですわ。新たな商売ですわよ」
「「「リディア……」」」
「ふふふ……儲けしか出ない商売が一つ出来ましてよ! 直ぐには無理ですけれど、肉屋と八百屋、魚屋との提携で飲食店が一つ作れますわ!」
「有難うございます!!」
「それと、炭を焼く場所が必要ですわね。貴方は箱庭での生活をお願いしますわ」
「有難うございます、有難うございます!!」
「無論、神殿契約はして貰いますわ。宜しいですわね?」
「はい!!」
「ああナーガ……。リディア様ありがとうございます!」
「こちらこそ、素晴らしいスキルを持った弟さんをお持ちで、御縁が出来て嬉しいですわ!」


こうなると米も欲しくなりますわね。
でも、この世界で米って見たこと無いのよね……。後で調べましょう。
焼肉のタレは確か調理本に載って居た筈……大量に作って貰いましょう!


「では、計19人を雇います。皆さんにはこちらにある神殿契約の書類にサインをお願いしますね。内容はシッカリと読まないと、下手をしたら激痛の上に命が半分消えますよ」
「「「「はい!!」」」」


――こうして、新たに炭師を雇えたことでホクホクですわ。
大きな飲食店となる焼肉屋……大成功間違いなしですわ。
陶芸師の方々に七輪作って貰いましょう。網は彫金スキルで作れますから、彫金師はこれから忙しくなりますわね!
ついでにビールも作れるようにならねば。飲み物系ってスキルで作ると大量に出来ますから……モノによっては100本単位で。


「今後、大量に人を雇う事になりそうですけれど、その時また商業ギルドに参りますわ」
「た、大量に……ですか」
「ええ、新たな商売が見つかりましたので。働けるものなら元気な老人でも全く構いませんわ」
「わ、分かりました」
「じゃあアタシとライトで冒険者ギルドへ護衛依頼だね、金額は月金貨何枚だい?」
「一人月金貨2枚でお願いしますわ。ランクは金貨2枚ならどのあたりかしら?」
「ランクはB~Cってところだね」
「ではBランクで、交代で雇いたいですから、計6人程雇っていただけます? Bランクが少なければCランクでも構いませんわ」
「OK」
「カイルは一旦属国の方に行ってポスターを作ってきてくださる? あとはガーゼシリーズと肌着シリーズを多めに作っておいてもらえるように頼んできてくださいませ」
「分かった」
「では、この場にいる19人の皆様。箱庭にご案内しますわ!」


こうして、神殿契約の紙を持ったライトさんは冒険者ギルドに行く前に神殿に契約書を出しに行くのでしょうし、ロキシーお姉ちゃんと一緒にデートがてら冒険者ギルドですわね。
カイルも即座に動きましたし、わたくし達も一週間の戦場を駆け抜け、頑張りますわよ!


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】天候を操れる程度の能力を持った俺は、国を富ませる事が最優先!~何もかもゼロスタートでも挫けずめげず富ませます!!~

udonlevel2
ファンタジー
幼い頃から心臓の悪かった中村キョウスケは、親から「無駄金使い」とののしられながら病院生活を送っていた。 それでも勉強は好きで本を読んだりニュースを見たりするのも好きな勤勉家でもあった。 唯一の弟とはそれなりに仲が良く、色々な遊びを教えてくれた。 だが、二十歳までしか生きられないだろうと言われていたキョウスケだったが、医療の進歩で三十歳まで生きることができ、家での自宅治療に切り替わったその日――階段から降りようとして両親に突き飛ばされ命を落とす。 ――死んだ日は、土砂降りの様な雨だった。 しかし、次に目が覚めた時は褐色の肌に銀の髪をした5歳くらいの少年で。 自分が転生したことを悟り、砂漠の国シュノベザール王国の第一王子だと言う事を知る。 飢えに苦しむ国民、天候に恵まれないシュノベザール王国は常に飢えていた。だが幸いな事に第一王子として生まれたシュライは【天候を操る程度の能力】を持っていた。 その力は凄まじく、シュライは自国を豊かにするために、時に鬼となる事も持さない覚悟で成人と認められる15歳になると、頼れる弟と宰相と共に内政を始める事となる――。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載中です。 無断朗読・無断使用・無断転載禁止。

石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

udonlevel2
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。 皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。 この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。 召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。 確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!? 「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」 気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。 ★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします! ★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

処理中です...