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73 雪の園と朝の露は箱庭師に雇われる。
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――カイルside――
翌朝直ぐに祖父に連れ出された場所は、商業ギルド及び冒険者ギルドのちょうど半分辺りにある物件で、三階建ての店三つがダンノージュ侯爵家所有の新しい店舗だった。
金額は恐ろしくて聞けないが、道具店となる店は今の道具店の広さの3倍はあるだろうか。
商談スペースも余裕でおける場所で、綺麗な建物だった。
続いてネイルサロンになる予定のお店は、個室の並ぶネイルサロンに相応しい場所だった。
華やかな印象を持つ棚も備え付けてあり、元のネイルサロンで使っている机や椅子とも相性が良さそうだ。店内に置ける商品スペースも前の店より少々大きめでこちらも問題なく使えそうで安心した。
続く隣の店予定の場所は、好きに使っていいらしい。
元はカフェが入ったり、オシャレな洋服を売っていたそうだが、使い方は自由にききそうで、どんな店にしようか悩むほどだ。
これはリディアにも相談しながら決めようと思う。
俺個人としては、この三つの店の前にある空き店舗の小さな店も気になるので、後で押さえておいても良いかなと思っている。
あそこでカフェを開くのはどうだろうか。
調理師スキルを持つ彼女たちの新しい戦場。
それも一つのスパイスのような気がした。
続けて連れて行かれたのは、店の裏手にある屋敷二つ分。
元々商家の家が二つ並んでいたらしいが、そこを買い取ったらしい。
つまり、ネイリストは仕事場の後ろで寝泊まりすると言う形になるようだ。
しかし、細い路地を歩いて職場に行かねばならず、その為の護衛は雇ってくれたらしい。
至れり尽くせりでありがたいが、この恩は、ダンノージュ侯爵領やナカース王国の王都での店で倍にして返そうと決意した。
最後に連れて行かれたのは、貴族の家も立ち並ぶ一角で、木造建築の広い二階建ての広々とした庭が魅力的なタウンハウスだった。
ここは、祖父がナカース王国に着いて、諸々が終わったら買い取る予定で前金は支払っているそうだ。
そこまで俺とライト、ロキシーを案内すると、後はライトが祖父と共にナカース王国へと旅立つのみだ。
この数日慌ただしく過ごしたが、後は店の引っ越し等色々考えながら進んでいく事になるだろう。
そこにライトが居ない事は寂しいし、ライト自身も寂しく思っているようだが、自分にしか出来ない仕事があると割り切り、そのままライトは祖父と共にナカース王国へと旅立っていった。
「……なんか、嵐のようなお爺様だったね」
「なんか……すまんな」
「別に~? だが一人店員が居なくなったんだ、此れから忙しくなるよ。ライトが戻るまでの間、とにかく必死に働かなきゃね!」
「そうだな! 俺はこの後、雪の園のメンバーと朝の露のメンバーと会う事になってる。ロキシーはどうする?」
「アタシは箱庭に引き籠っていようかねぇ。でも、寄りたい場所もあるからその辺ぶらぶらしてから帰るから安心しとくれ」
「分かった」
こうして二手に分かれ、これからの作業に取り掛かる。
急ぎ店に戻ると、丁度雪の園と朝の露の人たちと一緒になり、店を開けてから鍵を閉めた。
この二組は俺がダンノージュ侯爵家の人間であることを知っている為、気兼ねなく過ごせる人たちと言っても過言ではない。
「何時もの紅茶を貰えるかな?」
「秘蔵のですね?」
「そう、秘蔵の」
そう言ってクスクス笑うレイスさんは、前より生き生きとしているように見える。
だがここ最近、雪の園と朝の露のメンバーが冒険をしている話は聞かなかった。
リディア秘蔵の紅茶を出し、俺も椅子に座ると皆さんホッと息を着くように紅茶を飲んでリラックスしているようだ。
「あ――……生き返るよ」
「それは良かったです。そう言えばお二方はその後冒険をしていると言う話は聞きませんが、どうなさったんです?」
「燃え尽き症候群……と言うべきか」
「ある程度自由に使える金を貰ったのは良いが、正直冒険者家業をするのも、気乗りしなくてな」
「そうなんですか」
「俺達も、冒険者がしたくない訳ではない。だが、カイルのような生き方も良いのでは? と……俺達朝の露のメンバーも話してる」
「も、と言うと……雪の園の方々もですか?」
「わたしたち」
「冒険者でありながら商売がしたい」
「なるほど」
「と言う訳で、どうだろうカイルくん。君の話は私の耳にも入っているよ?」
「流石ですね。その話をお二方にお話しようと思っていたんです」
思わず苦笑いが出たが、彼らはそのつもりで今日やってきたらしい。
それならば、話は早いだろう。
「実は、弟のライトが現在祖父と共にナカース王国及び、ダンノージュ侯爵領へと向かっています。それらが終わり次第、箱庭経由で俺の拠点もナカース王国に移るのですが、折角始めた道具店サルビアも、ネイルサロン・サルビアもやめたいとは思いません。そこで、この店と新店舗となる、道具店サルビア二号店の、雇われオーナーと店員を探している所なんです」
「と言う事は」
「俺達にこそうってつけだな」
「そう言って下さると助かります。この店は二号店までそれほど遠くはないんですが、やはり初めて持った店ですので此処は思い入れも多く、手放せませんでした」
「んじゃ、新店舗は是非、雪の園のメンバーにお願いしたいね」
「おや、朝の露メンバーはコチラの店をと言うことかい?」
「男だらけのうちのチームには、此処が似合うと思うんだがな? 宿屋にも近くて庶民も多く、アットホームだろう? なんだったらこっちを庶民向けの店にすりゃいい」
「私はどちらでも構わないよ。ただ、商売を始めるにしても、私たちには商売のノウハウがない。そこで、暫く私たちもカイルの持つ店で働かせてもらえないだろうか? 無論人は多くなるが、店舗の引っ越しなんかでは役に立つと思うよ」
「助かります。本当に助かります。実はリディア……俺の彼女が更なる商品開発を進めているので、何人でも欲しいくらいだったんです」
「では我々は」
「ああ、冒険者を引退して商売するのもありだな」
まさか冒険者を引退するとは思っていなかった俺は「引退するんですか?」と問いかけると、お二方は頷いた。
「Sランク冒険者が商売してはいけないという法律もないし、そもそも冒険者と言うのは、自由な生き物なんだ」
「一応冒険者に籍は置かせてもらうが、そもそもSランクともなると依頼がな……だから問題ないぞ?」
「そうなんですね……流石Sランク」
「と言う事でどうだ店長。こっちの店、俺に任せたら庶民向けにしてもいいか?」
「ええ、元々そのつもりでした。新店舗の方を冒険者用や目新しいものを置こうかとも考えていたいので」
「え、目新しいもの? だったらこっちの店にも少しは欲しいぞ?」
「無論置かせてもらいますよ。数は少ないですが」
「それならいいや」
こうして、すんなりと雪の園メンバーと朝の露のメンバーが新たに我がサルビアの店員となった。
無論、給料も払うし他の店員とさほど変わらない。
それでも条件としては「冒険者で過ごしてたより断然いいんだね」とレイスさんは驚いていて、即了解を貰うことが出来た。
また、朝の露と雪の園の御三方には神殿契約を結んでもらい、リディアに関する内容を納得してもらう事になったが、そちらも難なくクリアし、「神殿契約をこのまましにいこうぜー」とイルノさんに言われ、その足で神殿契約を結んだ。
「後は、リディアのいる箱庭へ入る契約ですが、今からリディアを呼んできますが……」
「解ってる。リディア嬢は君の婚約者なのだろう? 我々が手を出す事は一切無いし、色目を使う事も無いよ」
「右に同じく」
「では呼んできます」
こうして作業中だったリディアを呼び、6人分のブレスレットを作って箱庭に案内したのだが、あれからレベルアップをした箱庭は、更に広く、更に空は高く、更に海も広く穏やかになり、伐採エリアは山に、発掘エリアは更なる進化を遂げ、池鏡は広く大きくなっていた。
一通りの案内は何時もの事で、終わる頃には6人は言葉を無くしていた。
「凄いな……」
「想像以上だ……」
「すごい」
「もう、なにも考えない」
「この世にこの様な楽園があろうとは……」
「本当に素晴らしい場所です……」
「ここでは保護した女性や子供、そしてスキルを持った方々が己にあった仕事をしています。リディア曰く『内部処理班』だそうです」
「それであの多さか、納得だ」
「お待たせしました――!!」
それまで席を外していたリディアが走ってくると、6つのレアな方のアイテムボックスを一人ずつに手渡し、それがレアなアイテムボックスだと知るや否や、6人は目を見開きリディアを見ていた。
「サルビアのメンバーですもの! 持ちませんとね!」
「いいいい……いいのか?」
「ええ! カイルやロキシーが使っているのもそうですし」
「「「「そうだったのか!?」」」」
「サルビア特典です」
「「「「なるほど!」」」」
「こりゃ気合入れて仕事しねーとな!」
「明日から頑張りましょう」
「それから、皆さんは今からうちの裁縫師に頼んで服を作って貰いましょう! お店で働くカイルたちの服を作ってくれてるうちの裁縫師に掛かれば、素敵な服を着てお店にたてる事間違いなしですわ!」
そう言うとリディアは拡声器仕様にしたブレスレットで業務連絡を入れると、サーシャとノマージュが凄い勢いで走ってきて、6人を舐めるように観たのち……。
「了解よ。服のテーマは決まったわ」
「今から作りましょう。直ぐに出来上がるはずよ」
「レイスさんは爽やかなイケメン風に」
「イルノさんはワイルドに」
「他の皆さんも選り取り見取り……さぁ! いざ作業小屋へ!」
血走った目の二人に逃げ腰のSランク冒険者……。
しかし!
「いってらっしゃいませ!」
「「「「「……はい」」」」
このサルビアでは、オーナーのさらに上のオーナーの言う事は絶対である。
皆さんはドナドナされるように奥の居住スペースへと消えていった……。
その後4時間かけて皆さんは新しい服を作って貰ったようだが、肌着も含めて一式三着ずつ貰ったらしい。
相変わらずのサーシャとノマージュである。
「これからドンドン新商品の開発に進めそうで嬉しいですわ!! 皆さんドンドン働いてくださいませ!」
「「「「了解ですボス!!」」」」
――こうして、新たな犠牲……いやいや、新しい仲間が増えて、より一層道具店サルビアは賑やかになっていくのであった。
翌朝直ぐに祖父に連れ出された場所は、商業ギルド及び冒険者ギルドのちょうど半分辺りにある物件で、三階建ての店三つがダンノージュ侯爵家所有の新しい店舗だった。
金額は恐ろしくて聞けないが、道具店となる店は今の道具店の広さの3倍はあるだろうか。
商談スペースも余裕でおける場所で、綺麗な建物だった。
続いてネイルサロンになる予定のお店は、個室の並ぶネイルサロンに相応しい場所だった。
華やかな印象を持つ棚も備え付けてあり、元のネイルサロンで使っている机や椅子とも相性が良さそうだ。店内に置ける商品スペースも前の店より少々大きめでこちらも問題なく使えそうで安心した。
続く隣の店予定の場所は、好きに使っていいらしい。
元はカフェが入ったり、オシャレな洋服を売っていたそうだが、使い方は自由にききそうで、どんな店にしようか悩むほどだ。
これはリディアにも相談しながら決めようと思う。
俺個人としては、この三つの店の前にある空き店舗の小さな店も気になるので、後で押さえておいても良いかなと思っている。
あそこでカフェを開くのはどうだろうか。
調理師スキルを持つ彼女たちの新しい戦場。
それも一つのスパイスのような気がした。
続けて連れて行かれたのは、店の裏手にある屋敷二つ分。
元々商家の家が二つ並んでいたらしいが、そこを買い取ったらしい。
つまり、ネイリストは仕事場の後ろで寝泊まりすると言う形になるようだ。
しかし、細い路地を歩いて職場に行かねばならず、その為の護衛は雇ってくれたらしい。
至れり尽くせりでありがたいが、この恩は、ダンノージュ侯爵領やナカース王国の王都での店で倍にして返そうと決意した。
最後に連れて行かれたのは、貴族の家も立ち並ぶ一角で、木造建築の広い二階建ての広々とした庭が魅力的なタウンハウスだった。
ここは、祖父がナカース王国に着いて、諸々が終わったら買い取る予定で前金は支払っているそうだ。
そこまで俺とライト、ロキシーを案内すると、後はライトが祖父と共にナカース王国へと旅立つのみだ。
この数日慌ただしく過ごしたが、後は店の引っ越し等色々考えながら進んでいく事になるだろう。
そこにライトが居ない事は寂しいし、ライト自身も寂しく思っているようだが、自分にしか出来ない仕事があると割り切り、そのままライトは祖父と共にナカース王国へと旅立っていった。
「……なんか、嵐のようなお爺様だったね」
「なんか……すまんな」
「別に~? だが一人店員が居なくなったんだ、此れから忙しくなるよ。ライトが戻るまでの間、とにかく必死に働かなきゃね!」
「そうだな! 俺はこの後、雪の園のメンバーと朝の露のメンバーと会う事になってる。ロキシーはどうする?」
「アタシは箱庭に引き籠っていようかねぇ。でも、寄りたい場所もあるからその辺ぶらぶらしてから帰るから安心しとくれ」
「分かった」
こうして二手に分かれ、これからの作業に取り掛かる。
急ぎ店に戻ると、丁度雪の園と朝の露の人たちと一緒になり、店を開けてから鍵を閉めた。
この二組は俺がダンノージュ侯爵家の人間であることを知っている為、気兼ねなく過ごせる人たちと言っても過言ではない。
「何時もの紅茶を貰えるかな?」
「秘蔵のですね?」
「そう、秘蔵の」
そう言ってクスクス笑うレイスさんは、前より生き生きとしているように見える。
だがここ最近、雪の園と朝の露のメンバーが冒険をしている話は聞かなかった。
リディア秘蔵の紅茶を出し、俺も椅子に座ると皆さんホッと息を着くように紅茶を飲んでリラックスしているようだ。
「あ――……生き返るよ」
「それは良かったです。そう言えばお二方はその後冒険をしていると言う話は聞きませんが、どうなさったんです?」
「燃え尽き症候群……と言うべきか」
「ある程度自由に使える金を貰ったのは良いが、正直冒険者家業をするのも、気乗りしなくてな」
「そうなんですか」
「俺達も、冒険者がしたくない訳ではない。だが、カイルのような生き方も良いのでは? と……俺達朝の露のメンバーも話してる」
「も、と言うと……雪の園の方々もですか?」
「わたしたち」
「冒険者でありながら商売がしたい」
「なるほど」
「と言う訳で、どうだろうカイルくん。君の話は私の耳にも入っているよ?」
「流石ですね。その話をお二方にお話しようと思っていたんです」
思わず苦笑いが出たが、彼らはそのつもりで今日やってきたらしい。
それならば、話は早いだろう。
「実は、弟のライトが現在祖父と共にナカース王国及び、ダンノージュ侯爵領へと向かっています。それらが終わり次第、箱庭経由で俺の拠点もナカース王国に移るのですが、折角始めた道具店サルビアも、ネイルサロン・サルビアもやめたいとは思いません。そこで、この店と新店舗となる、道具店サルビア二号店の、雇われオーナーと店員を探している所なんです」
「と言う事は」
「俺達にこそうってつけだな」
「そう言って下さると助かります。この店は二号店までそれほど遠くはないんですが、やはり初めて持った店ですので此処は思い入れも多く、手放せませんでした」
「んじゃ、新店舗は是非、雪の園のメンバーにお願いしたいね」
「おや、朝の露メンバーはコチラの店をと言うことかい?」
「男だらけのうちのチームには、此処が似合うと思うんだがな? 宿屋にも近くて庶民も多く、アットホームだろう? なんだったらこっちを庶民向けの店にすりゃいい」
「私はどちらでも構わないよ。ただ、商売を始めるにしても、私たちには商売のノウハウがない。そこで、暫く私たちもカイルの持つ店で働かせてもらえないだろうか? 無論人は多くなるが、店舗の引っ越しなんかでは役に立つと思うよ」
「助かります。本当に助かります。実はリディア……俺の彼女が更なる商品開発を進めているので、何人でも欲しいくらいだったんです」
「では我々は」
「ああ、冒険者を引退して商売するのもありだな」
まさか冒険者を引退するとは思っていなかった俺は「引退するんですか?」と問いかけると、お二方は頷いた。
「Sランク冒険者が商売してはいけないという法律もないし、そもそも冒険者と言うのは、自由な生き物なんだ」
「一応冒険者に籍は置かせてもらうが、そもそもSランクともなると依頼がな……だから問題ないぞ?」
「そうなんですね……流石Sランク」
「と言う事でどうだ店長。こっちの店、俺に任せたら庶民向けにしてもいいか?」
「ええ、元々そのつもりでした。新店舗の方を冒険者用や目新しいものを置こうかとも考えていたいので」
「え、目新しいもの? だったらこっちの店にも少しは欲しいぞ?」
「無論置かせてもらいますよ。数は少ないですが」
「それならいいや」
こうして、すんなりと雪の園メンバーと朝の露のメンバーが新たに我がサルビアの店員となった。
無論、給料も払うし他の店員とさほど変わらない。
それでも条件としては「冒険者で過ごしてたより断然いいんだね」とレイスさんは驚いていて、即了解を貰うことが出来た。
また、朝の露と雪の園の御三方には神殿契約を結んでもらい、リディアに関する内容を納得してもらう事になったが、そちらも難なくクリアし、「神殿契約をこのまましにいこうぜー」とイルノさんに言われ、その足で神殿契約を結んだ。
「後は、リディアのいる箱庭へ入る契約ですが、今からリディアを呼んできますが……」
「解ってる。リディア嬢は君の婚約者なのだろう? 我々が手を出す事は一切無いし、色目を使う事も無いよ」
「右に同じく」
「では呼んできます」
こうして作業中だったリディアを呼び、6人分のブレスレットを作って箱庭に案内したのだが、あれからレベルアップをした箱庭は、更に広く、更に空は高く、更に海も広く穏やかになり、伐採エリアは山に、発掘エリアは更なる進化を遂げ、池鏡は広く大きくなっていた。
一通りの案内は何時もの事で、終わる頃には6人は言葉を無くしていた。
「凄いな……」
「想像以上だ……」
「すごい」
「もう、なにも考えない」
「この世にこの様な楽園があろうとは……」
「本当に素晴らしい場所です……」
「ここでは保護した女性や子供、そしてスキルを持った方々が己にあった仕事をしています。リディア曰く『内部処理班』だそうです」
「それであの多さか、納得だ」
「お待たせしました――!!」
それまで席を外していたリディアが走ってくると、6つのレアな方のアイテムボックスを一人ずつに手渡し、それがレアなアイテムボックスだと知るや否や、6人は目を見開きリディアを見ていた。
「サルビアのメンバーですもの! 持ちませんとね!」
「いいいい……いいのか?」
「ええ! カイルやロキシーが使っているのもそうですし」
「「「「そうだったのか!?」」」」
「サルビア特典です」
「「「「なるほど!」」」」
「こりゃ気合入れて仕事しねーとな!」
「明日から頑張りましょう」
「それから、皆さんは今からうちの裁縫師に頼んで服を作って貰いましょう! お店で働くカイルたちの服を作ってくれてるうちの裁縫師に掛かれば、素敵な服を着てお店にたてる事間違いなしですわ!」
そう言うとリディアは拡声器仕様にしたブレスレットで業務連絡を入れると、サーシャとノマージュが凄い勢いで走ってきて、6人を舐めるように観たのち……。
「了解よ。服のテーマは決まったわ」
「今から作りましょう。直ぐに出来上がるはずよ」
「レイスさんは爽やかなイケメン風に」
「イルノさんはワイルドに」
「他の皆さんも選り取り見取り……さぁ! いざ作業小屋へ!」
血走った目の二人に逃げ腰のSランク冒険者……。
しかし!
「いってらっしゃいませ!」
「「「「「……はい」」」」
このサルビアでは、オーナーのさらに上のオーナーの言う事は絶対である。
皆さんはドナドナされるように奥の居住スペースへと消えていった……。
その後4時間かけて皆さんは新しい服を作って貰ったようだが、肌着も含めて一式三着ずつ貰ったらしい。
相変わらずのサーシャとノマージュである。
「これからドンドン新商品の開発に進めそうで嬉しいですわ!! 皆さんドンドン働いてくださいませ!」
「「「「了解ですボス!!」」」」
――こうして、新たな犠牲……いやいや、新しい仲間が増えて、より一層道具店サルビアは賑やかになっていくのであった。
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