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25 盾二人はロキシーに出会い、勧誘する。
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――カイル視点――
紅蓮の華の元Sランク冒険者、ロキシーは何時も【梟の羽】と呼ばれる酒場にいるのは有名な話だった。
【梟の羽】と言う酒場は、ある種のいわく付きの酒場で、裏社会の人間や貴族の裏事情が取引されている場所でもある。
そんな酒場に、何故ロキシーがずっと居座っているのかは謎とされており、俺も梟の羽にくるのは初めてだった。
怯えるライトの肩に手を置き、酒場へと入ると鋭い視線がこちらに向かう。
それを振り切ってロキシーの許へと向かうと、ロキシーは俺達に気が付いたのか、少しだけ面倒くさそうな顔をしながら顔を背けた。
「元紅蓮の華のロキシー殿とお見受けします」
「なんだい?」
「少々お話したいことが」
「あんた達みたいなボンボンに、アタシが欲しい情報を手に入れられるって言うなら聞いてあげてもいいけどぉ?」
どうやらロキシーは、欲しい情報があるらしい。
そんな話は聞いたことがないし、俺達に話せることなんてたかが知れている。
それでも、ロキシーに話しを聞いて貰う為に、彼女が欲しがっている情報と言う物を聞くことにした。
「俺達で話せる情報があればよいのですが、ロキシー殿がお聞きしたい情報と言うのは、一体どういうものでしょうか」
「アタシね、女の子を探してるの」
「女の子ですか」
「そ、アンタたち……この子をどこかで見た覚えはないかい?」
そう言ってロキシーが胸元から取り出した絵を見ると、それはリディアの姿だった。
今のリディアは簡素なワンピースにエプロン姿に輝く笑顔だが、こちらのリディアはドレスを着て美しく着飾って無表情でいる。
「アタシはこの子を探している。この子の情報を知らないって言うならアンタたちの話なんて知らない」
「……あの! 見たことがあります。でも此方で話すことは出来ません……。お外で話していいでしょうか……?」
顔をパッと上げて声を上げたライトにロキシーは面倒くさそうに立ち上がり、酒場の主人に金を払うと外へ出た。
此処から梟の羽近くであの話をするのは不味いと思い、表通りの個室のある居酒屋へ入ると、そこでロキシーは酒を、俺とライトはジュースを頼み会話をすることにした。
「それで? あの嬢ちゃんを知ってるって?」
「はい、リディア姉さんですよね」
「姉さん? あの子にいる弟にアンタみたいな可愛い子はいなかった筈だけど?」
「俺達は彼女の箱庭で世話になっているんです。そして、彼女は表舞台に出たくないけれど、店を持ちたいという事で俺の名義で店をやってます。道具店サルビア」
「ああ……。なんでも今日は派手に馬鹿野郎どもがやらかしたって梟で聞いたねぇ。そうか……あの子は今、無事に過ごしているんだね?」
「無事にと言うのはどういう事ですか?」
ライトの真剣な声にロキシーは酒を一気に飲み干すと、少しだけ据わった目をして口を開いた。
何でも、公爵家から追放されて庶民になったリディアを探している男がいるらしい。
その相手と言うのが――リディアの義理の弟、ナスタなのだとか。
何故ナスタがリディアを探しているのかというと、愛妾にしようと企んでいるらしい。
「哀れな従姉を愛妾にして可愛がりたいって言う歪んだ奴だね。あたしは昔からリディア専用の冒険者みたいなことをしてたから、よ―――く知ってる。ナスタの歪んだ性癖は相当だよ。リディアが清らかな分、ナスタの異常さが際立つって感じだったね。だから、失恋でチームも抜けたし気楽になったから、リディアを保護して別の国に行っちゃおうかなーって思ってたんだけど」
「それは困ります。僕たちの姉さんです」
「俺にとってみれば妹な」
「ふうん?」
俺の言葉にニヤッとした笑みを零し、ジッと瞳を見つめてくるロキシーに思わず目をそらした。色々見透かされそうで不味い気がする。
だが、意外にも笑いながらすんなり身を引いてくれてホッとしたが、今度は俺達が話をする番だ。
「あなたの欲しい情報は伝えました。今度はコチラの話を聞いていただきます」
「いいよ~? アタシ今すっごい気分いいから~」
「では単刀直入に話します。貴女もご存じの通り、リディアの店が荒らされそうになりました。そこでリディアは、店員兼護衛の出来る人を募集しています。出来れば冒険者を引退した人が良いとの事で、ロキシー殿でしたら居場所を知っているという事でお声掛けしました」
「なるほど、あの子がちっちゃい頃から護衛だなんだって付き合わされたけど、結局ここでもあの子の護衛をする羽目になるのね」
「――では!」
「良いわよ~? リディアちゃんの頼みなら仕方ないじゃない。あの子めっちゃくちゃ素直で可愛いし。ロキシーお姉ちゃんって言って甘えてこられたら堪んないの! おかげでアークドラゴンの背中に生えてる宝石のなる木抜きまくってきたわ」
あ、畑に生えてる宝石のなる木はロキシー殿が手に入れてきたものでしたか……。
しかも、アークドラゴンの背中に生えているモノでしたか。
流石元Sランク冒険者……。いい勉強になります……。俺だったら絶対無理です。
「で? 何時アタシはリディアちゃんに会えるの?」
「どうぞ、お店にお越しください。そちらでお待ちしているそうです」
「本当~!? 久しぶりのリディアちゃんとか胸が弾むわ! だったら早く行きましょう。あの子を待たせちゃいけないわ」
「「同感です」」
こうしてお会計を済ませ三人で道具店サルビアへ到着すると、ライトが先に箱庭へ向かい、俺は二階の明日から来る三人の為に用意した休憩所でロキシーと二人待つ事になった。
すると――。
「で、坊やはさ」
「坊やは止めてください。カイルです」
「カイル、アンタ……リディアちゃんの事好きでしょ」
「!」
「薬でわからなくしてるみたいだけど、アンタ魔付きでしょ? 魔付きでもリディアちゃんなら受け入れてくれると思うよ?」
「それは知ってます」
「そっか。あの子は清らかだからね。それもそうか」
「はい、清らかです」
「あんた達のジレジレ恋愛を見るのも、酒の代わりに良さそうだわ。胸やけしそうだけど」
そう言って笑うロキシーの顔は、年上の悪いお姉さんみたいな顔だった。
紅蓮の華の元Sランク冒険者、ロキシーは何時も【梟の羽】と呼ばれる酒場にいるのは有名な話だった。
【梟の羽】と言う酒場は、ある種のいわく付きの酒場で、裏社会の人間や貴族の裏事情が取引されている場所でもある。
そんな酒場に、何故ロキシーがずっと居座っているのかは謎とされており、俺も梟の羽にくるのは初めてだった。
怯えるライトの肩に手を置き、酒場へと入ると鋭い視線がこちらに向かう。
それを振り切ってロキシーの許へと向かうと、ロキシーは俺達に気が付いたのか、少しだけ面倒くさそうな顔をしながら顔を背けた。
「元紅蓮の華のロキシー殿とお見受けします」
「なんだい?」
「少々お話したいことが」
「あんた達みたいなボンボンに、アタシが欲しい情報を手に入れられるって言うなら聞いてあげてもいいけどぉ?」
どうやらロキシーは、欲しい情報があるらしい。
そんな話は聞いたことがないし、俺達に話せることなんてたかが知れている。
それでも、ロキシーに話しを聞いて貰う為に、彼女が欲しがっている情報と言う物を聞くことにした。
「俺達で話せる情報があればよいのですが、ロキシー殿がお聞きしたい情報と言うのは、一体どういうものでしょうか」
「アタシね、女の子を探してるの」
「女の子ですか」
「そ、アンタたち……この子をどこかで見た覚えはないかい?」
そう言ってロキシーが胸元から取り出した絵を見ると、それはリディアの姿だった。
今のリディアは簡素なワンピースにエプロン姿に輝く笑顔だが、こちらのリディアはドレスを着て美しく着飾って無表情でいる。
「アタシはこの子を探している。この子の情報を知らないって言うならアンタたちの話なんて知らない」
「……あの! 見たことがあります。でも此方で話すことは出来ません……。お外で話していいでしょうか……?」
顔をパッと上げて声を上げたライトにロキシーは面倒くさそうに立ち上がり、酒場の主人に金を払うと外へ出た。
此処から梟の羽近くであの話をするのは不味いと思い、表通りの個室のある居酒屋へ入ると、そこでロキシーは酒を、俺とライトはジュースを頼み会話をすることにした。
「それで? あの嬢ちゃんを知ってるって?」
「はい、リディア姉さんですよね」
「姉さん? あの子にいる弟にアンタみたいな可愛い子はいなかった筈だけど?」
「俺達は彼女の箱庭で世話になっているんです。そして、彼女は表舞台に出たくないけれど、店を持ちたいという事で俺の名義で店をやってます。道具店サルビア」
「ああ……。なんでも今日は派手に馬鹿野郎どもがやらかしたって梟で聞いたねぇ。そうか……あの子は今、無事に過ごしているんだね?」
「無事にと言うのはどういう事ですか?」
ライトの真剣な声にロキシーは酒を一気に飲み干すと、少しだけ据わった目をして口を開いた。
何でも、公爵家から追放されて庶民になったリディアを探している男がいるらしい。
その相手と言うのが――リディアの義理の弟、ナスタなのだとか。
何故ナスタがリディアを探しているのかというと、愛妾にしようと企んでいるらしい。
「哀れな従姉を愛妾にして可愛がりたいって言う歪んだ奴だね。あたしは昔からリディア専用の冒険者みたいなことをしてたから、よ―――く知ってる。ナスタの歪んだ性癖は相当だよ。リディアが清らかな分、ナスタの異常さが際立つって感じだったね。だから、失恋でチームも抜けたし気楽になったから、リディアを保護して別の国に行っちゃおうかなーって思ってたんだけど」
「それは困ります。僕たちの姉さんです」
「俺にとってみれば妹な」
「ふうん?」
俺の言葉にニヤッとした笑みを零し、ジッと瞳を見つめてくるロキシーに思わず目をそらした。色々見透かされそうで不味い気がする。
だが、意外にも笑いながらすんなり身を引いてくれてホッとしたが、今度は俺達が話をする番だ。
「あなたの欲しい情報は伝えました。今度はコチラの話を聞いていただきます」
「いいよ~? アタシ今すっごい気分いいから~」
「では単刀直入に話します。貴女もご存じの通り、リディアの店が荒らされそうになりました。そこでリディアは、店員兼護衛の出来る人を募集しています。出来れば冒険者を引退した人が良いとの事で、ロキシー殿でしたら居場所を知っているという事でお声掛けしました」
「なるほど、あの子がちっちゃい頃から護衛だなんだって付き合わされたけど、結局ここでもあの子の護衛をする羽目になるのね」
「――では!」
「良いわよ~? リディアちゃんの頼みなら仕方ないじゃない。あの子めっちゃくちゃ素直で可愛いし。ロキシーお姉ちゃんって言って甘えてこられたら堪んないの! おかげでアークドラゴンの背中に生えてる宝石のなる木抜きまくってきたわ」
あ、畑に生えてる宝石のなる木はロキシー殿が手に入れてきたものでしたか……。
しかも、アークドラゴンの背中に生えているモノでしたか。
流石元Sランク冒険者……。いい勉強になります……。俺だったら絶対無理です。
「で? 何時アタシはリディアちゃんに会えるの?」
「どうぞ、お店にお越しください。そちらでお待ちしているそうです」
「本当~!? 久しぶりのリディアちゃんとか胸が弾むわ! だったら早く行きましょう。あの子を待たせちゃいけないわ」
「「同感です」」
こうしてお会計を済ませ三人で道具店サルビアへ到着すると、ライトが先に箱庭へ向かい、俺は二階の明日から来る三人の為に用意した休憩所でロキシーと二人待つ事になった。
すると――。
「で、坊やはさ」
「坊やは止めてください。カイルです」
「カイル、アンタ……リディアちゃんの事好きでしょ」
「!」
「薬でわからなくしてるみたいだけど、アンタ魔付きでしょ? 魔付きでもリディアちゃんなら受け入れてくれると思うよ?」
「それは知ってます」
「そっか。あの子は清らかだからね。それもそうか」
「はい、清らかです」
「あんた達のジレジレ恋愛を見るのも、酒の代わりに良さそうだわ。胸やけしそうだけど」
そう言って笑うロキシーの顔は、年上の悪いお姉さんみたいな顔だった。
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