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04 箱庭師が手に入れた盾が、思いの外シッカリした方でした。
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アダマンタイトの依頼書は、とても古びた依頼書だった。
冒険者ギルドの職員が剥がし忘れていない限りは、まだクエストは続いていると言う事。
何より、カイルにアダマンタイトを持たせたことは意味があった。
――魔付きと呼ばれる人間は、とても強い。
強いが、呪いによってマイナス面が多く出る場合もある。
差し引いてもマイナスの方が多いだろう。
だが、魔付きゆえの強さを発揮すれば、アダマンタイトのクエストは命がけにはなるものの、クリアできるだけの力はあるのだ。
また、力が強い魔付きはそのまま生きていく事は出来ない。
元々魔付きと呼ばれる人間の寿命と言うのはとても短くなるそうだ。
それを解除する為の解除薬はロストテクノロジーのスキルを持つ物しか作ることは出来ず、故に高い。
カイルがアダマンタイトのクエストを無事クリアできた場合、大金が舞い込む。
舞い込んだ大金があれば、教会で解除薬を買うことができる。
故に、一度きりの依頼となるのは仕方ない事だろう。
無論、それだけのクエストをこなせば、カイルの冒険者としての名声が少しは上がる。
暫くこちらに構って貰っていても問題はないくらいには。
そんな事を思いつつ、池から様子を窺っていると、受付嬢が驚いた様子で奥へと駆け込んでいった。カイルがアダマンタイトを見せたのでしょう。
暫くすると奥から厳ついおじさまが出てきて、カイルを引っ張っていくように奥へと連れていかれましたわ。
察するに、ギルドマスターだったのかしら?カイル大丈夫かしら?
まぁ、様子を窺いましょう。
カイルが通された部屋はギルドマスターの部屋であっていた様で、何やら事情を聞き出されている様子。
暫く渋っている様子でしたけれど、わたくしの腕にあるブレスレットを口に持って行くと、カイルに声を掛けましたわ。
『カイル、聞こえますかしら?』
突然聞こえたわたくしの声に、当たりを見渡している様子。
筋肉質な身体をしたカイルが挙動不審になる姿は少し面白いわ。
『ブレスレットを使って声を掛けてますの。このまま聞いてちょうだい。出どころをきかれているのでしたら右手の小指を上げて頂戴な』
そう言うと、カイルの右手の小指が上がった。
どうやらアダマンタイトの出どころを聞き出したい様子ね……。
『ギルドマスターに伝えて頂戴。箱庭師と契約を結んでいて、その箱庭師から売りに行って欲しいと頼まれたと。もし他に欲しい素材があるのならば、モノによるけれど、そちらと契約させて頂けるのなら卸しても良いと』
わたくしの言葉にカイルは小さく頷くと、ギルドマスターにわたくしの伝えた言葉を話した様子。
ギルドマスターは一瞬驚いた様子ではあったものの、契約を結んでくれるようですわ。
『カイル、此れも伝えてくださる?この依頼はカイルの冒険者への貢献として使って欲しいと』
驚いたのだろう、何かを叫んだカイルにギルドマスターは驚いていたけれど、カイルは慌てた素振りでわたくしの言葉をギルドマスターに伝えた様子。
すると、暫く二人は話し込んだ末、カイルはキョロキョロと周りを見渡し、強く頷いた。
『わたくしは冒険者ギルドに行くなんて怖くてできませんもの。これはカイルの仕事としてやってくださると嬉しいわ』
実際、ゴッツイ冒険者達の間をすり抜けて依頼をこなす勇気なんてない。
それならば、カイルに全面的に任せた方が精神衛生的に良いと判断した。
それに、長く雇用したいから、そっちの方が助かるのよね。次にカイルのような優しい人と巡り合うとは限らないのだから。
カイルは少し話してみて、そして仕草を見て判断したのだけれど、かなり熟練の騎士のような雰囲気を感じた。
魔付きとなったのも、あれだけの熟練の騎士のようなカイルが負うくらいだから、何かしらの理由があったはず。
そして、現在ソロで活動しているというのも気になるわ。
人の良さに付け込まれたのかしら……まぁ、現在つけ込んでいるわたくしが言えた事ではないわね。
暫くすると契約は滞りなく終わった様で、依頼のお金と共に今回の契約書のようなものも鞄に詰め込み、そのままギルドマスターのドアを触れるとカイルは箱庭へと戻ってきた。
本当は冒険者ギルド近くまでお迎えに行く予定だったのに、余程わたくしの事を考えていたのか、ギルドマスターの部屋のドアを開けたらわたくしの箱庭に繋がってしまっていたわ。
「リディア、ただいま」
「とってもお早いお帰りでしたわ」
「ああ、ギルドマスターのドアを開けたら箱庭だとは思わなかった」
「わたくしも思いもしなかったわ。これは嬉しい情報でしてよ?家を借りる時に案として考えましょう」
「そうしよう。それと、こちらが君の情けで俺が得られた冒険者としての名声と、リディアへの定期的なお金だ」
そう言うとわたくしに書類を手渡し、内容を読むと確かにカイルの名が入っていた。
また、ギルドマスターが優しい方だったのでしょうね。
定期的に納品依頼を受けることで、カイルのギルドランクが下がらない様にして下さった様子。
「この国の冒険者ギルドマスターは中々思いやり溢れる方の様ですわね」
「アダマンタイトすら無造作に置かれているような箱庭だと伝えたら、ギルドから君への護衛依頼を受けれたから一石二鳥だったな。信用問題さえ起こさなければ良い関係が作れるだろうと伝えたら、囲い込むことは辞めたようだ」
「賢い判断ですわ」
こうして、カイルは冒険者ギルドから主であるわたくしの護衛依頼を受け続けるついでに、冒険者ギルドに定期的に入る納品依頼をこなすことになった。無論箱庭と言う事で、数がそろえば直ぐに――と言うこちら優勢の契約でしたけれども。
「カイルは優秀ですのね。現状把握がうまいですわ」
「お褒め頂き光栄だよ」
「さて、まずは手持ちのお金でどこまでできるか分かりませんけど、まずは頭をクールダウンさせましょう。わたくしたちの拠点となる家に案内しますわ。といっても、家とは言えないかも知れませんけど」
こうして、海沿いにある岩場の隙間を歩き、隣の海辺にある広い住宅エリアへとカイルを案内したのですけれど――。
冒険者ギルドの職員が剥がし忘れていない限りは、まだクエストは続いていると言う事。
何より、カイルにアダマンタイトを持たせたことは意味があった。
――魔付きと呼ばれる人間は、とても強い。
強いが、呪いによってマイナス面が多く出る場合もある。
差し引いてもマイナスの方が多いだろう。
だが、魔付きゆえの強さを発揮すれば、アダマンタイトのクエストは命がけにはなるものの、クリアできるだけの力はあるのだ。
また、力が強い魔付きはそのまま生きていく事は出来ない。
元々魔付きと呼ばれる人間の寿命と言うのはとても短くなるそうだ。
それを解除する為の解除薬はロストテクノロジーのスキルを持つ物しか作ることは出来ず、故に高い。
カイルがアダマンタイトのクエストを無事クリアできた場合、大金が舞い込む。
舞い込んだ大金があれば、教会で解除薬を買うことができる。
故に、一度きりの依頼となるのは仕方ない事だろう。
無論、それだけのクエストをこなせば、カイルの冒険者としての名声が少しは上がる。
暫くこちらに構って貰っていても問題はないくらいには。
そんな事を思いつつ、池から様子を窺っていると、受付嬢が驚いた様子で奥へと駆け込んでいった。カイルがアダマンタイトを見せたのでしょう。
暫くすると奥から厳ついおじさまが出てきて、カイルを引っ張っていくように奥へと連れていかれましたわ。
察するに、ギルドマスターだったのかしら?カイル大丈夫かしら?
まぁ、様子を窺いましょう。
カイルが通された部屋はギルドマスターの部屋であっていた様で、何やら事情を聞き出されている様子。
暫く渋っている様子でしたけれど、わたくしの腕にあるブレスレットを口に持って行くと、カイルに声を掛けましたわ。
『カイル、聞こえますかしら?』
突然聞こえたわたくしの声に、当たりを見渡している様子。
筋肉質な身体をしたカイルが挙動不審になる姿は少し面白いわ。
『ブレスレットを使って声を掛けてますの。このまま聞いてちょうだい。出どころをきかれているのでしたら右手の小指を上げて頂戴な』
そう言うと、カイルの右手の小指が上がった。
どうやらアダマンタイトの出どころを聞き出したい様子ね……。
『ギルドマスターに伝えて頂戴。箱庭師と契約を結んでいて、その箱庭師から売りに行って欲しいと頼まれたと。もし他に欲しい素材があるのならば、モノによるけれど、そちらと契約させて頂けるのなら卸しても良いと』
わたくしの言葉にカイルは小さく頷くと、ギルドマスターにわたくしの伝えた言葉を話した様子。
ギルドマスターは一瞬驚いた様子ではあったものの、契約を結んでくれるようですわ。
『カイル、此れも伝えてくださる?この依頼はカイルの冒険者への貢献として使って欲しいと』
驚いたのだろう、何かを叫んだカイルにギルドマスターは驚いていたけれど、カイルは慌てた素振りでわたくしの言葉をギルドマスターに伝えた様子。
すると、暫く二人は話し込んだ末、カイルはキョロキョロと周りを見渡し、強く頷いた。
『わたくしは冒険者ギルドに行くなんて怖くてできませんもの。これはカイルの仕事としてやってくださると嬉しいわ』
実際、ゴッツイ冒険者達の間をすり抜けて依頼をこなす勇気なんてない。
それならば、カイルに全面的に任せた方が精神衛生的に良いと判断した。
それに、長く雇用したいから、そっちの方が助かるのよね。次にカイルのような優しい人と巡り合うとは限らないのだから。
カイルは少し話してみて、そして仕草を見て判断したのだけれど、かなり熟練の騎士のような雰囲気を感じた。
魔付きとなったのも、あれだけの熟練の騎士のようなカイルが負うくらいだから、何かしらの理由があったはず。
そして、現在ソロで活動しているというのも気になるわ。
人の良さに付け込まれたのかしら……まぁ、現在つけ込んでいるわたくしが言えた事ではないわね。
暫くすると契約は滞りなく終わった様で、依頼のお金と共に今回の契約書のようなものも鞄に詰め込み、そのままギルドマスターのドアを触れるとカイルは箱庭へと戻ってきた。
本当は冒険者ギルド近くまでお迎えに行く予定だったのに、余程わたくしの事を考えていたのか、ギルドマスターの部屋のドアを開けたらわたくしの箱庭に繋がってしまっていたわ。
「リディア、ただいま」
「とってもお早いお帰りでしたわ」
「ああ、ギルドマスターのドアを開けたら箱庭だとは思わなかった」
「わたくしも思いもしなかったわ。これは嬉しい情報でしてよ?家を借りる時に案として考えましょう」
「そうしよう。それと、こちらが君の情けで俺が得られた冒険者としての名声と、リディアへの定期的なお金だ」
そう言うとわたくしに書類を手渡し、内容を読むと確かにカイルの名が入っていた。
また、ギルドマスターが優しい方だったのでしょうね。
定期的に納品依頼を受けることで、カイルのギルドランクが下がらない様にして下さった様子。
「この国の冒険者ギルドマスターは中々思いやり溢れる方の様ですわね」
「アダマンタイトすら無造作に置かれているような箱庭だと伝えたら、ギルドから君への護衛依頼を受けれたから一石二鳥だったな。信用問題さえ起こさなければ良い関係が作れるだろうと伝えたら、囲い込むことは辞めたようだ」
「賢い判断ですわ」
こうして、カイルは冒険者ギルドから主であるわたくしの護衛依頼を受け続けるついでに、冒険者ギルドに定期的に入る納品依頼をこなすことになった。無論箱庭と言う事で、数がそろえば直ぐに――と言うこちら優勢の契約でしたけれども。
「カイルは優秀ですのね。現状把握がうまいですわ」
「お褒め頂き光栄だよ」
「さて、まずは手持ちのお金でどこまでできるか分かりませんけど、まずは頭をクールダウンさせましょう。わたくしたちの拠点となる家に案内しますわ。といっても、家とは言えないかも知れませんけど」
こうして、海沿いにある岩場の隙間を歩き、隣の海辺にある広い住宅エリアへとカイルを案内したのですけれど――。
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