断罪された悪役令嬢は押しかけ女房~第二の王都と呼ばれる辺境領地で、彼女の夢を応援してたら第二の国になりました~

寿明結未(ことぶき・あゆみ)

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第一章  悪役令嬢は押しかけ女房なんです!

第3話 全ては計画通りですわ!

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 ――リコネル弟side――


 時は少し遡る――。


「リコネル・ファーネル! 貴様との婚約を解消する! アルジェナへの数々の嫌がらせは許されない行為であり、次期王妃とは認められない!」
「さようですか」
「謝罪の一言でも彼女にしたらどうだ!」
「いえいえ、そんな滅相も御座いませんわ! アルジェナ様、本当にありがとうございます! 是非ともこの方を支えてあげてくださいませ! そしてとても辛い王妃としての修行に見事耐えてみて下さいませ!! 心から応援しておりますわ!」


 公の場だというのに……国王や国賓が来ている中での婚約解消宣言に対し、姉であるリコネルは、それは嬉しそうに、自分を陥れたアルジェナを応援した。
 お父様やお母様は、姉が王太子との不仲を知っていた為、いつかはどこかで縁が切れるだろうと思っていたのは事実だ。
 それがこの公の場で起こされるとは夢にも思っていなかったようだが、姉は生き生きとした表情で嬉しそうに微笑んでいる。


「どうです父上! このような薄情な女より、私が心から愛する女性、アルジェナのほうが国母に見合う存在であると思います!」
「それもそうですわね、是非国母になって頂きたいですわ!」
「リコネル! 貴様はアルジェナへの謝罪はしないのか!!」
「だって事実無根ですもの。チャーリー様の言う『わたくしがやった』という嫌がらせの証拠、及び日時、それらを纏めて提出してくだされば謝罪いたしますけど。正直あなたへの愛情なんて全くこれっぽっちも無かったので、アルジェナ様をいじめても意味が無いんですの」
「何だと!?」


 ここで更に爆弾投下。
 姉はこうなると最早止められない。陛下は真っ青になっているし、王妃は今にも倒れそうだ。それでも姉であるリコネルは微笑んで続きを口にした。


「嫉妬? 馬鹿をおっしゃらないで。あなたにそれだけの価値なんてありませんわ。アルジェナ様へ嫌がらせ? 何故しなくてはなりませんの? 是非とも首に縄でもつけてチャーリー様を貰っていって欲しいくらいですの。どうしてもわたくしが許せないとおっしゃるのでしたら、わたくしを見目麗しくない辺境伯爵様に嫁がせれば宜しいじゃありませんの」


 この言葉に会場はざわめいた。
 確かに王位を退いたとはいえ、辺境伯爵様は国王の兄上。それでいて見た目も見目麗しくなく、恐ろしい存在だといわれている人だ。

 だが、その言葉には裏がある。
 姉は辺境伯爵であるジュリアス様に5歳でひとめぼれし、今も慕っているのだ。
 彼に関わる事はどんな手を使ってでも調べつくしており、ジュリアス様がどれほど有能な男性なのかも理解している。
 無論その事を知る人間は数少ないだろうが、王太子は笑いながら「気でも狂ったか!」と口にした。
 それには国王が「チャーリー!」と叫んだが、王太子は国王の言葉など聞こえはしない。


「貴様があのジュリアス叔父上に嫁ぎたいとはな! 本当に気が触れたんじゃないのか!? ははは! そんなに嫁ぎたいのなら推薦状でも何でも書いてやる! 良いでしょう父上!」


 公の場でのこの発言。
 ジュリアス卿が未だに独身である事もあり、固唾を呑むように貴族も貴賓も国王を見つめている……。
 脂汗をかく陛下は、暫くして搾り出すように……。



「リコネルよ……事実無根だというのにチャーリーとは……」
「婚約破棄、喜んで受け入れますわ! それと、辺境伯爵であるジュリアス卿への婚姻も赦しを頂ければ幸いですわ! 陛下も仰ってましたでしょう? 兄上が誰とも結婚しないと。ならばわたくしが妻になりますわ! それで決まりですわね? ええ、決まりでしょう!? それとも何か不具合でもございますの?」


 姉の言葉に最早言葉も出ず、許可を出した国王陛下……。
 リコネルの決断に涙を流す者、アルジェナへの非難、批判、そして王太子への侮蔑の目は式典が終わるまで続くことになった。



 ◆◆◆◆


「ですので、押しかけ女房のように姉が来てしまい、申し訳ありません」
「そう言う事があったのですね……」


 これまでの事を掻い摘んで弟である僕から話をすると、ジュリアス卿は呆れたような、驚いたような……けれど、優しい苦笑いをしながら口を開いた。


「私としてはリコネルが妻に来てくださるのは喜ばしいことだと思っております。しかし国王も王子もそこまで愚かだとは知りませんでした」
「政もジュリアス様がなさっているのでしょう? それでやっとあの国は回っていると言って過言ではありませんもの」
「何故その事を!?」
「フフ、わたくしの情報網は素晴らしくてよ?」


 そう言って紅茶をお代わりする姉に両親と僕は頭を抱えた。
 そもそも、王子は姉がどれほどの才能があるのか知らないのだ。
 いや、知っていたとしたら嫉妬か……妬みか。
 小説家であり、あらゆる発明を次々起こし、女性には必要ないであろう領地運営に関しても多少なりと掻い摘んでだろうが頭に入れている。だからこそ国王は姉を王太子の婚約者にしたのだ。
 そして、いつか王子と婚約解消したらジュリアス卿の元へ行くのだと決めていた姉は、この通り目標達成と言わんばかりにジュリアス卿と婚約してしまった。


「婚約発表は……したほうが宜しいでしょうか?」
「したくないのならしなくて結構ですわ」
「そ、そうですか?」
「それに、公の場であれだけハッキリと言葉が伝わっているんですもの。今更婚約発表の場を作っても、冷やかしが来られても困りますわね」


 さらっと言ってのけた姉に僕が頭を抱えていると、ジュリアス卿は僕を労わってリラックスが出来る紅茶をとメイドに指示を出していた。
 嗚呼……なんてお優しい義兄だろうか……姉の目に狂いは無かった。


「しかし解せませんね」
「何がですの?」
「一体、誰がなんの目的であなたを陥れたのです?」
「そんなの、見目麗しい王子の婚約者が、わたくしのような人間だったからでしょう。なにより、欲深いアルジェナ様があることないこと、あのアホ……コホン、王子に言っていたからでしょうね。本当にありがたいことですわ」
「「ありがたい……」」
「本日二回目の執事とメイド長の言葉が重なりましたね」


 何はともあれ、ジュリアス卿との婚約が決まり姉は嬉しそうだし、僕としても優しい心を持つ義兄が出来た事は嬉しいことだ。
 それに、今の王国の『見目麗しい者は優遇され、見目麗しくないものは冷遇される』と言う風潮も良くない……それは嫌でも感じている事でもあった。
 いっそ義兄が国王になってくれたら……なんて、不謹慎だがそんな事を思ってしまう。

 ――その頃お城では更に問題が起きていることに、この時僕たちは気がつかないでいた。
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