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交通事故を防ぐ装置

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「ひどいよねー、また、高齢者の運転する自動車が赤信号なのに横断歩道に突っ込んで、子供づれのお母さんをひいちゃったんだって。」 
 大学のカフェテリアで新聞を読んでいた山下君が、大津君の方に顔を向けて、怖い顔をして言った。 
「そうかー、またかー」 
と大津君は、言い、続けて、
「ここのところ、そういう交通事故、多いよね」
「高齢者じゃなくっても、よそみ運転をしたり、スマホを見たりして、若い人でも横断歩道では、事故が起こりそうだから、気をつけるようにしないとだめだよね」
 そんな話をしながら、大津君は、今日も親友の山下君とコーヒーを飲んでいた。
 大津君は、週3回、大学の研究室に来て物性物理学の研究を続けているのである。
 次の日、大津君は、助手として働いているサンエイ科学研究所で、コーヒータイムに所長の市山博士に、昨日の山下君との話をした。
「所長、昨日、大学で友達と話しをしたんですけど、最近、高齢者の横断歩道での交通事故が多くなってるようなんです」
「高齢になっても自動車を利用しなければならない人もいるんですね」
と大津君は、市山博士に困った顔をしながら言った。
市山博士は、
「そうですね。年をとると、判断力や運動神経も鈍ってくる人もいるから、なかなか自動車を運転するのは、あぶないよね」
と、やはり、困った顔をしながら、大津君に言った。
「大津君」
と市山博士は、突然真面目な顔になり、言った。
「実は、ぼくも最近の交通事故をなんとかできないかと考えていたんだ」
「そこで、大津君、ぼくは、横断歩道での交通事故を防ぐ装置を考えたんだ」
と市山博士は、大津君に得意げに言った。
「そうですかー、すごいですね、所長」
と大津君は、市山博士に、興味深そうに言った。
市山博士は、
「その交通事故を防ぐ装置は、磁場を利用するものなんだ」
と言った。
市山博士は、続けて大津君に話した。
「その装置は、横断歩道の手前の路面の下に埋め込んだ電磁石アレイを設けるんだ」
「そして、赤信号になったときに電磁石アレイが動作するための制御部を備えるようにする」
「また、車両には、ブレーキと連動した磁場検知装置を車体の下部に設けておくんだ」
「そうすることで、赤信号になったときに、電磁石アレイの磁場を磁場検知装置が検知して、車両を停止させることができるんだ」 
と市山博士は、説明した。
「それは、すごいですね」
「それが横断歩道のところに設置されれば、横断歩道での交通事故を防ぐことができますね」
「歩行者は、安心して横断歩道を歩けますね」
と大津君は、市山博士に感心した顔で言った。
 市山博士は、大津君に、言った。
「大津君、仕事だ」
「この交通事故を防ぐ装置の特許明細書を書いてください」
「そして、特許出願するんだ」
「さっ、はじめよう」
と市山博士は、言い、
「はい、分かりました」
と大津君は、言い、自分の席に戻り、パソコンに向かって、書類の作成を始めた。
 こうして、サンエイ科学研究所のコーヒータイムは、終わりました。

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