1 / 1
僕は君に愛していると、そうただ言いたい
僕は今日も君を追いかける
しおりを挟む
「待ってよ~、藍斗くん!」
幼馴染の彼女の声を無視して僕は、友達のもとに向かう。
「も~」
頬を膨らまして、私はただ不機嫌なアピールをする。
それでも彼はこちらを向いてくれず、彼が向かう先には彼の友達がいる。
「もう、知らないもん」
腕を組んで最大限の不機嫌アピールをしながら、私は自分の家に帰ろうとする。
「最近藍斗くん一緒に帰ってくれない」
小学5年生。思春期に入って私たちはあまり話さなくなった。
いや、私が彼に避けられている。でも、知っている。私と一緒に帰っているところをほかの友達にからかわれていることを。
だから、藍斗くんは私を避けているし、私も昔のように藍斗くんに付きまとわなくなった。
「懐かしいな~」
ふと思い出してみた。
小学1年生のころ、人見知りが激しかった私はずっと藍斗くんの背に隠れていた。
藍斗くんは、今ほどではなくても少しうざそうにしていたけど、それでも時々後ろを振り返って私がついてきているかを確認してくれる。
信号が青になっていることを確認して私は歩いて渡る。
昔の思い出もただ思い出しては、ニコニコと笑っていた私。
ふとパトカーのサイレンの音がやけにうるさく聞こえる。
なんだろうと思ってサイレンのほうを見た。
見た先は左。そこにはものすごいスピードで迫ってきていた軽自動車。
最後に見た光景は、顔に汗をかきまくった無精髭の男だった。
「誰か! 救急車をよべ!」
「何言ってんだ。もうこの子は死んでいる!」
「ままぁ、あの子どうしちゃったの?」
「駄目よ! 見ては、ダメなの…」
公園で友達とサッカーをしていて、空は刻一刻と暗くなっていく。
「ごめーん、俺もう帰らなきゃ」
「あ、マジか。俺もだー」
「僕もそろそろ帰らないと」
6人で遊んでいた中、3人はもう帰らないと、と帰っていって取り残された僕たちも流れで帰ることにした。
「はー、お腹減ったなー」
公園から家まではそこまで距離はなくて、自宅が見えてきたころやけに家の前に人が集まっているなぁっと思って僕は少し速足で家に入った。
「ただいまー、家の前にいっぱい人いたけ…ど」
靴を適当に脱いでリビングに入ると、黒いスーツを着た両親と、ハンカチで目元を押さえている藍海の両親がいた。
「藍斗、少しこっちへいらっしゃい」
母さんは、僕を呼び僕はいつも座っている椅子に座った。
「なんだよ、藍海のお母さんにお父さん」
「…実はね…」
先に話し出したのは藍海のお母さんだった。
「藍海がね、死んじゃったの…」
「は?」
バカバカしい話だとその時は思った。そう思うしかなかった。
そう思うことで、自分自身を楽にしようとした。
「嘘じゃないの、事故でね。それでね、藍斗くん。最後に藍海を見たのは、いつ?」
涙をこらえながら、僕に優しく聞いてくるこの人をみて嘘じゃない、そう思った。
「一緒、に…かえろ、うって…いわれた、とき…で、す」
とぎれとぎれで言葉にならなかった。
「そ、う…」
「藍斗くん、うちの娘と一緒に帰らなかったのかい?」
藍海のお父さんが優しく言った。藍海のお父さんは少し強面だけど、それに似合わないくらいかっこよくて優しい人だ。
「友達と、遊びたく、て」
「そうか…」
藍海のお父さんが無理して笑っていることに気づいてしまった。
「もしか、して。僕の…せ――」
「違うわ!」
藍海のお母さんが、否定をしてくれた。それでも、僕は…ボク、は…。
気が付いたら、ベットで眠っていた。
夢だったんじゃないかって、本当は今家の前で一緒に登校しよう! と藍海が言ってくれるんじゃないかって。
ただそんな非現実的な情景を、頭に浮かべて気持ちの悪い笑い声を出してしまう。
「へ、へへ」
ボクの目尻から自然と垂れてきている涙に、この時のボクは気づけなかった。
『藍斗くん…』
いまだに聞こえてくる幻聴に、ボクはただただ笑うしかなかった。
「あはははっは!!!!!」
この時ボクは、最愛の人を亡くしたことにようやく気付くことができた。
岸辺藍斗 崖上藍海
幼馴染の彼女の声を無視して僕は、友達のもとに向かう。
「も~」
頬を膨らまして、私はただ不機嫌なアピールをする。
それでも彼はこちらを向いてくれず、彼が向かう先には彼の友達がいる。
「もう、知らないもん」
腕を組んで最大限の不機嫌アピールをしながら、私は自分の家に帰ろうとする。
「最近藍斗くん一緒に帰ってくれない」
小学5年生。思春期に入って私たちはあまり話さなくなった。
いや、私が彼に避けられている。でも、知っている。私と一緒に帰っているところをほかの友達にからかわれていることを。
だから、藍斗くんは私を避けているし、私も昔のように藍斗くんに付きまとわなくなった。
「懐かしいな~」
ふと思い出してみた。
小学1年生のころ、人見知りが激しかった私はずっと藍斗くんの背に隠れていた。
藍斗くんは、今ほどではなくても少しうざそうにしていたけど、それでも時々後ろを振り返って私がついてきているかを確認してくれる。
信号が青になっていることを確認して私は歩いて渡る。
昔の思い出もただ思い出しては、ニコニコと笑っていた私。
ふとパトカーのサイレンの音がやけにうるさく聞こえる。
なんだろうと思ってサイレンのほうを見た。
見た先は左。そこにはものすごいスピードで迫ってきていた軽自動車。
最後に見た光景は、顔に汗をかきまくった無精髭の男だった。
「誰か! 救急車をよべ!」
「何言ってんだ。もうこの子は死んでいる!」
「ままぁ、あの子どうしちゃったの?」
「駄目よ! 見ては、ダメなの…」
公園で友達とサッカーをしていて、空は刻一刻と暗くなっていく。
「ごめーん、俺もう帰らなきゃ」
「あ、マジか。俺もだー」
「僕もそろそろ帰らないと」
6人で遊んでいた中、3人はもう帰らないと、と帰っていって取り残された僕たちも流れで帰ることにした。
「はー、お腹減ったなー」
公園から家まではそこまで距離はなくて、自宅が見えてきたころやけに家の前に人が集まっているなぁっと思って僕は少し速足で家に入った。
「ただいまー、家の前にいっぱい人いたけ…ど」
靴を適当に脱いでリビングに入ると、黒いスーツを着た両親と、ハンカチで目元を押さえている藍海の両親がいた。
「藍斗、少しこっちへいらっしゃい」
母さんは、僕を呼び僕はいつも座っている椅子に座った。
「なんだよ、藍海のお母さんにお父さん」
「…実はね…」
先に話し出したのは藍海のお母さんだった。
「藍海がね、死んじゃったの…」
「は?」
バカバカしい話だとその時は思った。そう思うしかなかった。
そう思うことで、自分自身を楽にしようとした。
「嘘じゃないの、事故でね。それでね、藍斗くん。最後に藍海を見たのは、いつ?」
涙をこらえながら、僕に優しく聞いてくるこの人をみて嘘じゃない、そう思った。
「一緒、に…かえろ、うって…いわれた、とき…で、す」
とぎれとぎれで言葉にならなかった。
「そ、う…」
「藍斗くん、うちの娘と一緒に帰らなかったのかい?」
藍海のお父さんが優しく言った。藍海のお父さんは少し強面だけど、それに似合わないくらいかっこよくて優しい人だ。
「友達と、遊びたく、て」
「そうか…」
藍海のお父さんが無理して笑っていることに気づいてしまった。
「もしか、して。僕の…せ――」
「違うわ!」
藍海のお母さんが、否定をしてくれた。それでも、僕は…ボク、は…。
気が付いたら、ベットで眠っていた。
夢だったんじゃないかって、本当は今家の前で一緒に登校しよう! と藍海が言ってくれるんじゃないかって。
ただそんな非現実的な情景を、頭に浮かべて気持ちの悪い笑い声を出してしまう。
「へ、へへ」
ボクの目尻から自然と垂れてきている涙に、この時のボクは気づけなかった。
『藍斗くん…』
いまだに聞こえてくる幻聴に、ボクはただただ笑うしかなかった。
「あはははっは!!!!!」
この時ボクは、最愛の人を亡くしたことにようやく気付くことができた。
岸辺藍斗 崖上藍海
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫
紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。
スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。
そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。
捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。
【完結】王子は聖女と結婚するらしい。私が聖女であることは一生知らないままで
雪野原よる
恋愛
「聖女と結婚するんだ」──私の婚約者だった王子は、そう言って私を追い払った。でも、その「聖女」、私のことなのだけど。
※王国は滅びます。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……
矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。
『もう君はいりません、アリスミ・カロック』
恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。
恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。
『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』
『えっ……』
任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。
私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。
それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。
――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。
※このお話の設定は架空のものです。
※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる