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第4章 浮気者は叩き潰してやる
ジンクという男は
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「アンナお嬢様、お離れ下さい。拘束しているとはいえ、こいつはなかなかの手練。何があるか分かりません」
未だ目覚めて、呆然としている彼にアリアは警戒気味に私を背後に隠そうとする。
「大丈夫よ、アリア。それに彼はもう抵抗などしていないでしょう?」
私はアリアを見ながらも、彼に近づいていく。
それは決して、拷問にかけるなどというものではなく、たださっきまでの疑問を解消したかった。
「嫌なことを聞いてしまった自覚はあるわ。でも、あなたについて教えてくれないかしら?」
「・・・何故だ? 何故そこまで知りたがる? なんの目的だ、何を奪うつもりだ」
ただ獣のように睨んでいる彼は、強気でいながらもどこか怯えていると感じてしまった。
だから私は少しずつ近づいて、彼の頭に手のひらを乗せる。
ただ、少しずつゆっくりと撫でていく。
警戒をとかない彼は、それでもなお私を睨むことをやめない。
すると、アリアが私の片方の肩を掴んで、後ろに下げる。
「・・・アンナお嬢様。分かりたくはないのですが、ここは一旦わかったことにしておきます。ですが、近すぎます。私の後ろからなら話してもらっても構いません」
「そう、わかったわ」
アリアは警戒をとくことをやめない。それは先程の事もあるからであって、構えている姿勢に一瞬の隙も感じることが出来ない。
「少しずつでいいの。あなたの名前や、好きなこと、仕事なんかを教えてくれない?」
「・・・名はジンク、好きなことは特にない。仕事は・・・特にない」
「ジンクくんね、何か楽しいと思ったようなことは無かったの?」
「・・・楽しい・・・ないな」
「・・・そうなのね」
ここでアリアも何となくわかったのか構えていた姿勢が少し崩れたように感じる。
さっき質問して怒らせてしまった言葉''虐待''
貴族の出で、性を名乗らない。
つまり、事情があって、または嫌になって逃げてきたはいいものの力尽きて倒れていた?
そう考えられてしまう自分が嫌になる。
こんなbatな話をしてしまうのは、彼にも悪い。
アリアと目を合し、互いにテレパシーのような信頼関係で話し合う。
と言っても、実際なんて言っているのかなんて分からないから、アリアが何を思っているかは分からない。
でも、アリアが少しでも警戒を解いてくれている事実がある以上、アリアも察してしまったのだろう。
だからこそ私は言う。
「ジンクくん、私の家で働かないかしら?」
ジンクくんは、目を見開きながらも少しすると俯くように目を逸らして、言った。
「とても嬉しい話、だかそれは出来ない」
未だ目覚めて、呆然としている彼にアリアは警戒気味に私を背後に隠そうとする。
「大丈夫よ、アリア。それに彼はもう抵抗などしていないでしょう?」
私はアリアを見ながらも、彼に近づいていく。
それは決して、拷問にかけるなどというものではなく、たださっきまでの疑問を解消したかった。
「嫌なことを聞いてしまった自覚はあるわ。でも、あなたについて教えてくれないかしら?」
「・・・何故だ? 何故そこまで知りたがる? なんの目的だ、何を奪うつもりだ」
ただ獣のように睨んでいる彼は、強気でいながらもどこか怯えていると感じてしまった。
だから私は少しずつ近づいて、彼の頭に手のひらを乗せる。
ただ、少しずつゆっくりと撫でていく。
警戒をとかない彼は、それでもなお私を睨むことをやめない。
すると、アリアが私の片方の肩を掴んで、後ろに下げる。
「・・・アンナお嬢様。分かりたくはないのですが、ここは一旦わかったことにしておきます。ですが、近すぎます。私の後ろからなら話してもらっても構いません」
「そう、わかったわ」
アリアは警戒をとくことをやめない。それは先程の事もあるからであって、構えている姿勢に一瞬の隙も感じることが出来ない。
「少しずつでいいの。あなたの名前や、好きなこと、仕事なんかを教えてくれない?」
「・・・名はジンク、好きなことは特にない。仕事は・・・特にない」
「ジンクくんね、何か楽しいと思ったようなことは無かったの?」
「・・・楽しい・・・ないな」
「・・・そうなのね」
ここでアリアも何となくわかったのか構えていた姿勢が少し崩れたように感じる。
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つまり、事情があって、または嫌になって逃げてきたはいいものの力尽きて倒れていた?
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と言っても、実際なんて言っているのかなんて分からないから、アリアが何を思っているかは分からない。
でも、アリアが少しでも警戒を解いてくれている事実がある以上、アリアも察してしまったのだろう。
だからこそ私は言う。
「ジンクくん、私の家で働かないかしら?」
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「とても嬉しい話、だかそれは出来ない」
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