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第4章 浮気者は叩き潰してやる

僕は…

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 私は彼を背負って館に戻り、空いている部屋のベットに寝かせる。

「アンナお嬢様、服はどうしましょう?」

 ボロボロのフードがついたコートについて話していた。彼はフードをかぶってはいたもののギリギリ顔が見え、男だということが分かった。
 背負ったときに思ったが、彼はとても軽すぎる。ご飯すらもまともに食べられてないのではないだろうか。

「そうね、勝手に着替えさせるのもあれだし、粥だけ作って持ってきてくれるかしら」
「わかりました」

 アリアはゆっくりと部屋を出ていく、が外に出て扉が閉まった瞬間にものすごい勢いで走っていく。

「ふふ、アリアも変わったわね」

 昔のアリアは、ただ私に”お人良し”と言って若干呆れている感じだったのに、今回はアリアが自分から彼を助けようとしてくれていた。
 ふと彼を見ると、かぶっているフードが横になる際に邪魔なんじゃないかと思い、フードだけでも取ろうとする。

「ん、んゥ~」

 彼は少しだけ目を開けた状態で目覚めた。そして私を見た瞬間――

「ふッ!」

 ベットの横に置いてあった、花瓶をつかみ、棚にぶつけて割る。花瓶が刃物になった瞬間に彼はそれを私に突きつける。

「なにがァ――カハッ!」

 のどが異常に枯れていたのか、少ししゃべるだけで咳をした。
 でも今動くと刺されてしまうかもしれないし。頬に冷や汗をたらしながらも私は言った。

「もうすぐ、お粥と一緒に水を持ってきてもらってるわ。それまでは安静にしておいて」

 彼は訝しげな顔をしたものの、首に突きつけていた刃物を少しだけ離す。それでもなお警戒の目を解くことはなかった。
 
「少し質問をしてもいいかしら? 声に出さなくていいわ、うなずくか顔を横に振るかの、はいかいいえで答えてもらえないかしら」
「…コク(わかった)」
「ありがとう」

 彼は訝しげな顔を解くことなく渋々うなずいた。

「…あなたは男性よね?」
「…コク(はい)」
「じゃあ、旅人さん?」
「…フルフル(違う)」
「そう」

 旅人ではない人がこんな使い古したようなコートを着ているものなのだろうか。

「じゃあ、あなたは憲兵さん?」
「…フルフル(違う)」

 私を見た瞬間に状況を瞬時に判断して、刃物となるものを作り出した。もしかしたらと思ったのだが、違ったのか。

「うーん、じゃあ失礼かもしれないけれど、あなたは一般家系の出かしら?」
「……フルフル(違う)」
「貴族…ということね」

 貴族の人が、あんなところで倒れているものなのだろうか。コートを着ているものの、隙間から見える顔はだいぶとやせ細っている。

「…虐待?」
「――ッ!」

 少し離していた刃物を、ぎりぎりまで突きつけてくる。今理解したのかもしれない。私は今目の前の彼の恩情によって生かされているのではないだろうか。彼が少しでも私に怒りを抱いたらすぐに私は、死ぬ。冷や汗が止まることを知らないように、滝のように流れていく。
 それでも、私は…。

「……捨てられたの?」

 そう言った瞬間に彼は、私の肩を少し押し、私が倒れている瞬間に少し起き上がり、このままだったら私は顔を刺される。――瞬間

「失礼しま――」

 部屋に入ってきたアリアは、この状況を見た瞬間に目が追い付かない速度で彼の背後におり、彼は気配を察して振り返った瞬間――

「はぁ!!」

 すごい勢いの横蹴りが彼の横腹に見事に当たり、彼が離してしまった刃物になった花瓶を空中でつかみ、アリアは彼の首をめがけて刃物を振りおろ――

「アリア! やめて!」

 アリアは、ぎりぎりのところで刃物を止め、彼は眠るように気絶していた。
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