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第4章 浮気者は叩き潰してやる

アリア・マークヴィスはお嬢様が大好きである

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 つい抱き着いてしまったが、アリアは迷惑ではないだろうか?
 ゆっくりと抱き着いた腕をほどき、アリアの顔を見る。

「あ、アリア?」
「…は、はいっ!!」

 どうやらアリアは放心状態だったらしく、声をかけるとしばらくして掠れた声がアリアの口からでる。

「だ、大丈夫?」
「大丈夫でございますッ!」

 なんかテンションがおかしいような…。まぁいいわ。

「本当に、ありがとうね」

 目を合わせて、しっかりとお礼をする。すると、少し赤かった顔が引いて、真剣な顔でお礼を受け取ってくれる。

 お礼を言って、自室に戻っていく。結婚まで残り6日。時間がない、それでも特に行動ができるわけでもない。失敗もできなければ、実行する前にばれてもいけない。

「やるしかない、もう二度とアリアをあんな顔にさせないために」




 ついアンナお嬢様に抱き着かれてしまって、声が上ずってしまったが私は冷静だ。うん、冷静であります。
 アンナお嬢様に心配をかけてしまいました。反省ですね。
 アンナお嬢様は、企んでいる顔をしながらも自室に戻っていって、私はお嬢様の背を見ているとハッとする。

「あぁ、お嬢様ぁ」

 今たぶん私の顔は、真っ赤に火照っていると思う。きっとそんな姿をアンナお嬢様に見られたら、アンナお嬢様は私から距離を取る。だからこの気持ちはぐっと抑えなくてはいけない。
 アンナお嬢様を守るために、私は私自身の気持ちを抑え込む。
 
「この気持ちはきっともってはいけない感情だから…」

 私が男だったらと何度思ったか、アンナお嬢様に救われてから私の人生は180度変わった。
 自身の家を持たない、いわゆるホームレスのような私をアンナお嬢様は手を差し伸べてくれた。笑顔を向けてくれた。居場所を与えてくれた。
 だから私は、今アンナお嬢様のために生きて、アンナお嬢様のために死ぬ。それがきっと私の幸福で、生きがいなのだから。

 そのためにランガという男を処分しなくてはいけない。アンナお嬢様の人生をあんな男に壊されるのは許せない。きっとアンナお嬢様が壊れていたら、ランガを殺してアンナお嬢様を私のものとしていた。
 残念とも思いながらも、それでもアンナお嬢様が元気でいてくれるなら、またあの笑顔を私に向けてくれるのなら私は――

「あなた様の手となり、足となります」

 見えなくなったアンナお嬢様の背を見て、私はキッチンへと向かう。

「さて、お仕事しましょう…」

 この居場所を失くさないために私は、今日もせっせこ働くとしましょう。

 
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