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第4章 浮気者は叩き潰してやる
訪ねてきたのは浮気者
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カーテンの隙間から照らされる光で私の目は覚めた。
気づいたら寝てしまっていたようだ。自身の服装を見ると血の付いたかつてお気に入りだったドレスだった。
「うっそーん…」
髪までボサボサで、変な寝方をしてしまったのか体が痛む。
コンコンッ
ドアのほうからノックの音がして、ハッとする。だけれど、ノックに答える暇もなく自身の身の回りのお世話をしてくれているアリアは「失礼します」と言って入ってくる。
「ん? アンナお嬢様。お目覚めになっておられたのですね。お食事の準備ができております」
それだけ言って、部屋から出ていこうとするアリアを私は声で制した。
「ねぇ、アリア。昨日のことなのだけれど。覚えているわよね?」
「…はい、覚えております」
「そう、ありがとう」
どうやら昨日のことは一切夢とかではなくて、本当にランガは浮気をしていたようだった。
髪をある程度整えて、着替え、食堂へと向かう。
「おはようございます。アンナお嬢様。こちら今日の朝食でございます」
すると、ワゴンで色々なものが運ばれてくる。パンやら、サラダやら。朝から重たいものはきついからというのを言ってから、朝食が軽いものになった。
目の前に並べられていく食事に手を合わせ、パンを取って一口に千切って食べていく。
ボーっとただ昨日のことやこれからのことを考えながら口にしていく。
食事が終わると、昨日と同じように食べ終わったお皿などをアリアが回収していってくれる。
「ありがとう」
ただそう言って、アリアも頭を少し下げキッチンへと向かっていく。昨日のことが嘘だったかのように昨日と同じ、いつもと同じ風景を眺める。
すると、玄関のほうからノックの音が聞こえる。
来客だ、お父さんのお客さんだろうか。さぁ、自室に戻ろうか。
席を立って自室に向かおうとすると、食堂の扉が開き、今は見たくもないやつの顔を見てしまう。
「おはよう、アンナ。昨日はどうしたんだい?」
少し頬に汗をたらしており、遅れてうちのメイドの一人が来る。
「…何でもないわ、えぇ…」
気のない返事を返すと、ランガはどんどんと近づいてくる。
「そうかい、よかったよ」
そう言って、ランガは私の前に立つと私のせっかく整えた髪に触れる。
少し前の私だったら、きっとうれしい気持ちでいっぱいだっただろう。でも今は――
パシッ!!
手をはじこうとしたら、キッチンに行っていたはずのアリアがランガの手をはじいていた。
「…アリア?」
「ランガ…様、現在アンナ様は少し体調を崩しておられます。ですので今日はもうおかえりください」
アリアは必死に睨みそうになっている眉を押さえて、ランガを見据えていた。
「そうかい、それは大変だ。…今日は帰るとするよ」
ランガはその雰囲気を悟ったのか、はじかれた手をゆっくりと垂らし食堂を去っていく。
「どうしたの? アリア」
いまだに食堂の入り口を、犬のように睨んでいるアリアが少し心配になってくる。
「アンナお嬢様。私はランガを許せません」
いつも”様”をつけていたアリアがここまで怒っていることに、驚きつつ嬉しくなってしまう。
私はアリアにゆっくりと抱き着きながら、耳元で言った。
「ありがとう、アリア。愛しているわ」
気づいたら寝てしまっていたようだ。自身の服装を見ると血の付いたかつてお気に入りだったドレスだった。
「うっそーん…」
髪までボサボサで、変な寝方をしてしまったのか体が痛む。
コンコンッ
ドアのほうからノックの音がして、ハッとする。だけれど、ノックに答える暇もなく自身の身の回りのお世話をしてくれているアリアは「失礼します」と言って入ってくる。
「ん? アンナお嬢様。お目覚めになっておられたのですね。お食事の準備ができております」
それだけ言って、部屋から出ていこうとするアリアを私は声で制した。
「ねぇ、アリア。昨日のことなのだけれど。覚えているわよね?」
「…はい、覚えております」
「そう、ありがとう」
どうやら昨日のことは一切夢とかではなくて、本当にランガは浮気をしていたようだった。
髪をある程度整えて、着替え、食堂へと向かう。
「おはようございます。アンナお嬢様。こちら今日の朝食でございます」
すると、ワゴンで色々なものが運ばれてくる。パンやら、サラダやら。朝から重たいものはきついからというのを言ってから、朝食が軽いものになった。
目の前に並べられていく食事に手を合わせ、パンを取って一口に千切って食べていく。
ボーっとただ昨日のことやこれからのことを考えながら口にしていく。
食事が終わると、昨日と同じように食べ終わったお皿などをアリアが回収していってくれる。
「ありがとう」
ただそう言って、アリアも頭を少し下げキッチンへと向かっていく。昨日のことが嘘だったかのように昨日と同じ、いつもと同じ風景を眺める。
すると、玄関のほうからノックの音が聞こえる。
来客だ、お父さんのお客さんだろうか。さぁ、自室に戻ろうか。
席を立って自室に向かおうとすると、食堂の扉が開き、今は見たくもないやつの顔を見てしまう。
「おはよう、アンナ。昨日はどうしたんだい?」
少し頬に汗をたらしており、遅れてうちのメイドの一人が来る。
「…何でもないわ、えぇ…」
気のない返事を返すと、ランガはどんどんと近づいてくる。
「そうかい、よかったよ」
そう言って、ランガは私の前に立つと私のせっかく整えた髪に触れる。
少し前の私だったら、きっとうれしい気持ちでいっぱいだっただろう。でも今は――
パシッ!!
手をはじこうとしたら、キッチンに行っていたはずのアリアがランガの手をはじいていた。
「…アリア?」
「ランガ…様、現在アンナ様は少し体調を崩しておられます。ですので今日はもうおかえりください」
アリアは必死に睨みそうになっている眉を押さえて、ランガを見据えていた。
「そうかい、それは大変だ。…今日は帰るとするよ」
ランガはその雰囲気を悟ったのか、はじかれた手をゆっくりと垂らし食堂を去っていく。
「どうしたの? アリア」
いまだに食堂の入り口を、犬のように睨んでいるアリアが少し心配になってくる。
「アンナお嬢様。私はランガを許せません」
いつも”様”をつけていたアリアがここまで怒っていることに、驚きつつ嬉しくなってしまう。
私はアリアにゆっくりと抱き着きながら、耳元で言った。
「ありがとう、アリア。愛しているわ」
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