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間章 勇者と森妖精の泡沫の鎮魂歌
第357話 光の魔術
しおりを挟むホテルの屋上
暗雲立ち込める空に近いその場所には二人の人物が慌ただしく床に魔法陣を描いていた。
「ふぅ…ふぅ…」
「フィリア、休憩しながら描きなさい。今回の魔法陣は魔力が大量に抜け出すものです、正直に言うと私ですら辛いのですから貴方はさらに辛いはず、休憩しなければ下の者達より先に息絶えますよ。」
顔に沢山の汗を掻き顔が青ざめた状態で魔法陣を休み無く描き続けるフィリアに同じ様に顔を青ざめさせたマリウスが声をかける。
「い、いえ…大、大丈夫、です!」
フィリアの体から普通を超える魔力が流れ出す。
魔法を超える魔術の領域に入りだしたそれは、ミーリアが想定していたものより出力が大きくなっていた。
(これは…どうなっている?教えられた魔法は中級クラスの結界魔法のはず…いつの間にここまでの出力に…?私の描いているのもフィリアが描いてるのもその魔法陣だ。なのに…)
「どうしてこんなにも魔力を吸う量が多い?」
フィリアがペンを進め、描き上げたそれは本来の三倍もの魔力を吸う「魔術」へと変化を遂げていた。
しかも他の魔術とは違い、一切の闇を感じない。
(魔術クラスの魔法は闇の魔力によって成り立っているはず…それがなぜ…)
困惑に困惑を重ねているマリウスに気づかずフィリアは顔色の悪いまま魔法陣の中心に立つ。すると、主を迎え入れた魔法陣がその機能を発動させ始める。
それに気づいたマリウスが援護をしようと魔法陣の中に入ろうと左手を魔法陣に入れた瞬間、
「ぐぁぁぁぁ!!!」
左手がまるで聖水等の類に触れた時のように焼け焦げた。
それに集中しすぎて一切気づかないフィリアが詠唱を始める。
「『我が身に宿りし光の力よ。我はここに守護の光を解放する。これこそは我の許さぬものを通さぬ壁。退け、愚かなる者達よ。ここは、聖域である!』、『ライトサンクチュアリ』!」
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