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5章 天衣無縫の少女と欲望の町
第228話 エピローグ4 悪夢の夜明け
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翌朝
「それでは、私達は帰ります。」
ディレード、アリスさん、フルル、ハリエスの四人は町に戻ることになった。
「おう、あとは任せときな。」
ディレードの言葉にガレルが答える。彼とルガードの二人はこの町に残る。彼らにはこの町の裏側をいくらか整理してもらわなければならかったので残って貰うことにした。
「私も言ってくれれば残るんですが。」
「お前が連絡つかないとこにいるのは困るだろ。」
「それもそうですね。」
というわけで騎士団に必要なディレードとハリエス、そしてディレードがいないなら帰ると言ったフルルと取り敢えずあちらに戻ることにしたアリスが帰ることになったのだ。
「家のことは任せとくぜ。」
「まあ、いつものことですから慣れてますよ。」
そうして話してる横でもう一組の親子も話をしていた。
「フルル、母さんを頼んだぞ。」
「ん」
「色々と気をつけるんだぞ。」
「ん」
「ディレードに近づきすぎないようにな。」
「いや」
「ぐっ…」
「あはは…」
「まあいい。アリスちゃんもフルルを頼んだよ。」
「あ、はい。任せて下さい!」
そんな風に話しているのを見ているとハリエスがこちらに歩いてきた。
「リリさん、それではお世話になりました。」
「ううん。私のほうが助けられちゃいましたし私のほうが感謝しなくちゃはダメだよ。」
これは本当に本心だ。私も含めて色々助けられた。
「そうですかならいいですけど。」
「うん。」
「取り敢えずなにか困ったことがあったら私に言ってください。助けに来ます。」
「…そっか。よろしくお願いね。」
少しだけ嬉しい。いつも一緒にいられないのは寂しいが呼んだら来てくれるのは嬉しい。
「それと」
少し腰を落とし私の耳元まで顔を寄せてくる。そして小声で囁く。
「悪夢の中でも俺を呼べば行ってやるよ。」
「え…」
聞き返そうとしたときにはもう顔は離れていた。
「団長、帰りましょう。」
「そうですね。それじゃあ失礼しましたエリリス。」
「え、あ、うんお疲れ様…」
そうして彼等は帰っていった。
その後私はポヤンとしたままベッドに入っていた。送り出したのは朝だったのでいつものように眠りに付くことにしていたのだけど、彼の言葉がずっと頭の中をぐるぐると回っていた。
「悪夢の、中でも…寝言聞かれてたの…?」
だとしたら…恥ずかしい…私の一番の暗いものだったから…本当に…。でも…
「試して…みようかな…」
そうしてそのまま目を閉じる。少しするとそのまま夢が始まった。
いつもの夢だ。
それどころか現実になったことで昨日から余計に酷くなっている。名前を呼んでも誰も来てくれなくなって、それどころか呼べば呼ぶほど見ている男達が増えていく。それが心の底から恐怖を生んでいく。怖くて怖くて口を閉じていってしまう縮こまって身を守るために小さくなっていく。
そこで私の口からハリエスの名前がこぼれた。
その瞬間、周りの檻と男達が吹き飛んでいく。小さくなった私を誰かが抱えた。
目を開くとそこにはハリエスがいた。
彼は何も言わず私の方すらも見ない彼は私を抱えたまま走り出す。そうして次の瞬間には、皆がいる場所にたどり着いていた。そこで私を下ろした彼は私の頭を撫でて皆の方に歩いていく。
私はそれを追いかける。彼の横にたどり着いた私に彼は笑顔で迎えてくれた。
そこで目が覚める。
いつも冷や汗でどんな季節でも寒いくらいなのに今回は…胸がドキドキと高鳴っているだけで寒いことはない。
私は窓まで歩いていく。カーテンを開けてみるとギラギラと輝く町のライト、そこを行き交う人々、空には丸い月が浮かんでいた。
「わぁ…」
いつもよりそれは輝いて見えた。鈍く光っているように見えていた町の光は眩しく、黒く見えていた人々は笑顔が輝き生き生きとして、私の世界を示すだけの月は穏やかな光で皆を照らしてくれている。
「この町、こんな綺麗、だったんだ…」
涙が溢れてくる。長い間私を苦しめていた悪夢が世界を変えてしまっていたことに気づいたからだ。
「ありがとう、ハリエス」
5章 END
「それでは、私達は帰ります。」
ディレード、アリスさん、フルル、ハリエスの四人は町に戻ることになった。
「おう、あとは任せときな。」
ディレードの言葉にガレルが答える。彼とルガードの二人はこの町に残る。彼らにはこの町の裏側をいくらか整理してもらわなければならかったので残って貰うことにした。
「私も言ってくれれば残るんですが。」
「お前が連絡つかないとこにいるのは困るだろ。」
「それもそうですね。」
というわけで騎士団に必要なディレードとハリエス、そしてディレードがいないなら帰ると言ったフルルと取り敢えずあちらに戻ることにしたアリスが帰ることになったのだ。
「家のことは任せとくぜ。」
「まあ、いつものことですから慣れてますよ。」
そうして話してる横でもう一組の親子も話をしていた。
「フルル、母さんを頼んだぞ。」
「ん」
「色々と気をつけるんだぞ。」
「ん」
「ディレードに近づきすぎないようにな。」
「いや」
「ぐっ…」
「あはは…」
「まあいい。アリスちゃんもフルルを頼んだよ。」
「あ、はい。任せて下さい!」
そんな風に話しているのを見ているとハリエスがこちらに歩いてきた。
「リリさん、それではお世話になりました。」
「ううん。私のほうが助けられちゃいましたし私のほうが感謝しなくちゃはダメだよ。」
これは本当に本心だ。私も含めて色々助けられた。
「そうですかならいいですけど。」
「うん。」
「取り敢えずなにか困ったことがあったら私に言ってください。助けに来ます。」
「…そっか。よろしくお願いね。」
少しだけ嬉しい。いつも一緒にいられないのは寂しいが呼んだら来てくれるのは嬉しい。
「それと」
少し腰を落とし私の耳元まで顔を寄せてくる。そして小声で囁く。
「悪夢の中でも俺を呼べば行ってやるよ。」
「え…」
聞き返そうとしたときにはもう顔は離れていた。
「団長、帰りましょう。」
「そうですね。それじゃあ失礼しましたエリリス。」
「え、あ、うんお疲れ様…」
そうして彼等は帰っていった。
その後私はポヤンとしたままベッドに入っていた。送り出したのは朝だったのでいつものように眠りに付くことにしていたのだけど、彼の言葉がずっと頭の中をぐるぐると回っていた。
「悪夢の、中でも…寝言聞かれてたの…?」
だとしたら…恥ずかしい…私の一番の暗いものだったから…本当に…。でも…
「試して…みようかな…」
そうしてそのまま目を閉じる。少しするとそのまま夢が始まった。
いつもの夢だ。
それどころか現実になったことで昨日から余計に酷くなっている。名前を呼んでも誰も来てくれなくなって、それどころか呼べば呼ぶほど見ている男達が増えていく。それが心の底から恐怖を生んでいく。怖くて怖くて口を閉じていってしまう縮こまって身を守るために小さくなっていく。
そこで私の口からハリエスの名前がこぼれた。
その瞬間、周りの檻と男達が吹き飛んでいく。小さくなった私を誰かが抱えた。
目を開くとそこにはハリエスがいた。
彼は何も言わず私の方すらも見ない彼は私を抱えたまま走り出す。そうして次の瞬間には、皆がいる場所にたどり着いていた。そこで私を下ろした彼は私の頭を撫でて皆の方に歩いていく。
私はそれを追いかける。彼の横にたどり着いた私に彼は笑顔で迎えてくれた。
そこで目が覚める。
いつも冷や汗でどんな季節でも寒いくらいなのに今回は…胸がドキドキと高鳴っているだけで寒いことはない。
私は窓まで歩いていく。カーテンを開けてみるとギラギラと輝く町のライト、そこを行き交う人々、空には丸い月が浮かんでいた。
「わぁ…」
いつもよりそれは輝いて見えた。鈍く光っているように見えていた町の光は眩しく、黒く見えていた人々は笑顔が輝き生き生きとして、私の世界を示すだけの月は穏やかな光で皆を照らしてくれている。
「この町、こんな綺麗、だったんだ…」
涙が溢れてくる。長い間私を苦しめていた悪夢が世界を変えてしまっていたことに気づいたからだ。
「ありがとう、ハリエス」
5章 END
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