竜の契約者

5章 天衣無縫の少女と欲望の町

第139話 ディレードの家族

あの事件から一日。
事後処理を任せて拠点に戻り、二人と別れたディレードは勇者が召喚されてからまともに帰ってなかった実家に帰って家族に帰宅の挨拶をして、一眠りついたのだった。
つまりその次の朝である。

「兄様、起きて下さい。兄様。」
「ん…」
ディレードのベッドの横に一人の穏やかな印象を与える美少女が立っていてディレードを揺すっていた。
「おはようございますエリル。」
「おはようございます兄様。」
お互いにニコッと笑いながら挨拶をかわす二人。
彼女はエリル・セイン。ディレードの呼び方から分かる通り彼の妹だ。見た目はディレードと同じ金色で背中の真ん中まで行くくらいのロング。身長は男性の中では低い方であるディレードよりも一回り小さいくらいだ。胸は服からは分からないが少しはある。目はこちらもディレードと同じく碧眼である。その美貌はすれ違えばハッと誰でも振り返ってしまう様な美少女だ。年齢は23、ディレードとは3つ違いだ。彼女は普段、教団でお悩み相談室を開いている。

「それでは朝ご飯を作りますので待っててくださいね。」
「はい。」
起きてから着替えたディレードはエリルと一緒に一階へと降りていった。
「おう、我が息子！朝飯作ってくれ！」
すると豪快な声がリビングから聞こえてきた。
「はいはい、今作りますよ。大人しく新聞でも読んどいて下さいお義父さん。」
「おう！もう読んでるぜ！」
そんな会話を義父、ガレル・セインと交わしながらディレードは調理場に入る。
ガレル・セイン、この家の主でありこの家に住んでいる皆を拾ってきた壮年の大男だ。年齢は65。見た目は白髪のオールバックに意思の強そうな金色のツリ目、そして何より２ｍの身長だ。初見ではかなり恐怖を与える見た目をしているが、話してみるとズボラで、お金にだらしなくて、生活力など皆無であることが分かってくる。だが彼はディレードの先代の騎士団長であることから分かる通り周りからのの信頼は厚い。理由は簡単だ。この男、全てのスキルを戦闘とコミュニケーション能力と主人公力に振っているような男なのだ。
それはもう、捕虜になっている人がいれば一番恐怖しているタイミングで助けに入るし、そのくせどんな魔物が相手でも打倒し、それでいて戦闘が終われば明るく話しかけて不安を払ってくれるトーク力、とまさに勇者や英雄と想像する印象そのままなのだ。だが彼には妻はいない。理由は、ごくごく簡単である。主人公力の中には好意に鈍感というものもある。これまで高かったのだ。ゆえに未婚の三人の子供を養う父になっていたわけだ。

「全く、結婚してないのに子供を拾うところまで主人公しなくていいのに…」
「おう？なんか言ったか？」
「別に。」
「そうか！メシ待ってるぜ！」

これでも元聖職者なのだが。