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3章 妖精と勇者の剣舞
第66話 ロマンの話
しおりを挟むラウネ達との遊びを終えた、ニイ達はぐったりとした様子で屋敷に戻ってきた。
「お帰りなさいませファルーグ様、ニイ様。」
『帰ったぞ……』
「ただいま、マリウス……」
二人を出迎えたのはマリウスだった。
「おや?大分お疲れですね、ついにリア様達の訓練に付き合う腹を決めたのですか?」
『そうではなくてな子供達に先程まで遊んでとせがまれて遊んでいたのだ……』
「ああ、子供の体力は遊んでいるときは無限ですからね。」
「ああ…断りきれなくて大変だったよ。」
「それはそれは、ところでニイ様訓練に肯定的になってもらうという目的の方は達成されましたか?」
「それは成功したよ。」
「そうですかそれではリア様に明日から教えていただいてもよろしいですか?そろそろ私では不足してきまして……」
『んー、それくらいならまだいいか。』
「時間を分けてフィリアの剣の訓練は……」
『ならんそれだけはさせられん。』
断固たる意思のこもった言葉だった。
「リア様なら分かるのですが何故フィリアまで?教えるのはニイ様ですよ?」
『勇者が教えるのが問題なのだ……』
「と言われますと?」
「聞いてくれよマリウス、俺がやった修行をフィリアにしようとしたらダメだって言うんだぞ?」
「どのような計画なのですか?」
「俺と死ぬ気の立ち会い。」
「……それ以外は?」
「ないが?」
「……」
フィリアを受け入れた直ぐあとくらいにニイの剣の腕を立ち会いで確かめたマリウスだからこそ誰よりも戦慄しているのである。
なにせ立ち会いで武器と武器をぶつかり合わせる前に一撃でケリがついてしまったのだ。
ニイは簡単に言えば合理性の塊のような戦い方をする。武器と武器で競り合えばわざと力を抜いて自分を切らせたあと拳や蹴りを叩き込み怯んだところで切り裂くという感じである。
型や見た目の良さは一切ない。あくまでも勝つためだけ、生き残るためそういった戦い方をするのがニイなのである。
マリウスも立ち会いならばどれだけ強かろうとつばぜり合いをくらいはするだろうと思っていたのだがフルパワーの踏み込み一つで懐に侵入され叩き切られたのだ。最早立ち会いではなかった。ちなみにレルトと戦ったときはガードを上から一撃で壊してダメージを与えたのでこちらも勝負にはなっていない。
「さすがにそれはやめた方がよろしいかと考えます。」
「んー、皆そう言ってくるんだよなー。」
『フィリアには汝は関わらん方が良いかもな。』
「成長を邪魔したら悪いしそうするか。」
「(フィリアはリア様を羨みそうですね)そうですね、強い力は成長の邪魔ですし好ましくありませんね。」
「そういえば、あいつらは?そろそろいつもならミーリアと一緒に帰ってきてるだろ。」
「今はキューアと一緒に入浴していますよ。」
「あ、そうなのか。」
『覗くか、マリウス、勇者』
「するわけないだろうミーリアとリアに殺されるぞ。」
「そうですよキューアはもう気にしませんけどフィリアは顔を真っ赤にしてしまいますよ。」
『男のロマンがないのだな汝らは……』
「竜に言われたくないですね」
「昔からこうなのか?」
「リア様とキューアが二人で入ってるところを魔法で覗いてばれてリア様に怒られていました。」
「変わらないんだな。」
「はい……」
『むしろ勇者汝は興味がないのか?それとも性欲まで勇者の精霊に渡したのか?』
「どうだろうなー」
『フィリアの最近外で修行をしているから白い肌が程よく肌色になっているところと元々の真っ白なところのギャップや少し成長しつつある胸とかには劣情は湧かぬのか?』
「どうだかなー」
『ならばミーリアの普段一切肌を露出しない服の下にある肌やあの大きな胸が本物かどうかは興味は湧かないのか?』
「それはなんか興味は出てきたがそれこそ真正面から聞けば教えてくれそうじゃないか?」
『バカか汝は!覗いて見るから良いのだろう!?』
「あのなぁ……そういえばリアについて一切語らないなお前。」
『む……?確かにリアは胸は大きいし肌もキメ細やかで白と黒のコントラストが眩しいが今更な感じがするしな。』
「そ、そうか……」
「これがファルーグ様とリア様の関係の発展を邪魔する幼馴染フィルターですね。これさえなければもう、子孫の10匹くらいはいそうなのですがね。」
「これは確かに面倒だな、うん。」
『なんの話だ?まあ、いいか、勇者汝にはやはり男のロマンを……』
「聞く気は無いって言ってるだろ……」
そんな感じでマリウスを巻き込んで食事の時間まで話していた二人だった。
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暇になったので、駄文ですが勢いで書いてしまいました。
設定等ユルユルでガバガバですが、暇つぶしと割り切って読んで頂ければと思います。
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