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2章 捕らわれと解放
第39話 信頼
しおりを挟む「これからどうするんだ?」
「えーと、とにかくこの町を回りましょう!」
「分かった。暗くなったら帰るぞ。」
「はい。」
そうして並んで歩きだした二人。
本来なら仲良く話してお互いのことを知り合うというのが本来の形なのだが……
「……」
「……」
お互いになにも喋らない。
なぜ二人共一言も話さないかというと
(話題なんか別に無いしなフィリアが話しかけてくるまで待つか)
というニイと
(な、なにを話せば良いのでしょう……ニイ様の趣味?いやそれはお城で聞いたことがあります。なら好きな食べ物!はお城で聞いてますし変わってないのはもう確認してますし……)
というニイとは別意味でなにも浮かばないフィリアの心の中が影響している。
そうして歩くこと十分、ニイが唐突に口を開いた。
「そういえばなんだが」
「!はい、なんでしょうか!」
「ど、どうしたんだよそんなにテンションを上げて」
「気まずい空気で死にそうだったとかじゃないですから安心してください!」
「死にそうだったんだな。悪かった。」
「あ、いえその……」
「そんなことは放っておいてフィリアお前って確か魔法の適正検査を改めてやったよな。それって結果どうだったんだ?」
「それはですね……光と風ががかなり高くて火と水と回復がほどほど闇と地が全然でしたね。」
「ふぅん俺とは全然違うんだな。」
「そうですね。人によって本当に違いますからあまり気にすることは無いと思いますよ。」
これはフィリア自身には伝えておらず検査した魔物とニイ、ファルーグくらいしか知らないのだが魔法には隠された適正がありそれが援護と攻撃である。
それぞれの属性に援護魔法も攻撃魔法も存在するのだがこれにも適正が存在する。基本的にはニイのように同じであることが多いのだがこれが酷くバラバラなものがたまにいる。フィリアはまさにそのタイプで光は援護しか出来ないレベルで攻撃が低く風が攻撃しか出来ないくらいなのだ。
あまりこういうのは本人に伝えない方が良いだろうと三人は話し合って話さないことにしたのだった。
「それもそうか。」
「はい。」
「なら」
「?」
「俺に出来ない事が出来るなら必要な時にはフィリアを頼ることにしよう。」
「!はい!お任せください!」
「ああ、任せたよ。」
その時フィリアが見たニイの表情はまるで昔のニイのようなすごく穏やかな微笑みだった。
そうして無言に戻ってしまった二人は屋敷の帰りつくまで黙りっぱなしだったという。だがそれでも二人の心の距離は最初に黙っていた時よりもとても近づいていた。
(私はあんな微笑みを受け取る資格なんて無いのに…私はどうすれば良いのでしょう……)
そんなフィリアの心を置き去りにして二人のお出掛けは終わったのだった。
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