異世界転移して仲間にするなら美少女よりもムキムキのオッサンでしょう

近畿ブロードウェイ

文字の大きさ
上 下
22 / 28

ウサ耳の見習い鍛冶職人(2)

しおりを挟む
 ミルフィーユとパーティー登録したときのように、1人ずつ決済機に手をかざし、ステータスを確認されていく。
 サトウは依頼を受注する度にステータスを見てもらっていたが、特に強くなることもスキルが増えることも無かった。

「はい。パーティー登録完了です。‥‥と、1つお伝えしたいことが。隣町で日本人の目撃情報がありました」

 日本人の目撃情報と聞いてサトウが身構える。
 大丈夫だ。日本人と言えば何かしらのチートを持っているらしい。
 5歳児並みのステータスでスキル無しのサトウが日本人だと思われるわけがない。

「それって日本人が新しく転移してきたってことか?」
「いえ、彼は2年前に現れたとされる日本人ですね。神代のスキルとされる、透明化スキルを所持しているという話です」
「透明化だって?スケスケじゃねーの‥‥」

 あのサトウですら透明化スキルは羨ましいと感じる。

「はい。スケスケです。彼は転移初日から透明化スキルを使いこなしていたため、ギルドを訪れた際、拘束できなかったと報告されています」

「そういえば、初めてギルドに来たとき日本人じゃないか確認する。って言われた気がするけど、あれってボカして伝えないと暴れることもあるんじゃないか?」

 サトウはふと湧いた疑問を口にした。
 あのとき自分は素直にステータスを見せてしまったが、感の鋭い人物なら警戒するのでは。

「各ギルドの門は、その門を通って・・・・・・・内側に入った者のステータスを大幅に低下させる魔導具ですので、暴れられても平気なんですよ」

 冒険者が暴れたときの対策だろうか。
 透明化のようなイレギュラーがない限り、日本人対策も万全とみえる。

「でもスキルは使えるんだよな」

「問題あるまいて。ギルド職員は皆、元Bランク以上の冒険者なのじゃしな」
「マジでか。じゃあ、お姉さんも強いの?」

「ええ。私も元Bランク冒険者ですよ。日本人と応戦したことは一度だけですが、転移直後の日本人であればステータス低下無しでも勝つ自信があります」
「お姉さんって、そんなゴリゴリの戦闘マシーンみたいな感じだったんだ」
「ギルド職員になるには、元Bランク以上の冒険者かつ、徒手空拳で同ランクの冒険者を無力化できることが条件ですからね」
「日本から転移したばかりの甘ちゃんなんて、どんなにステータスだけ高くても相手にならないってことか」

 初日に日本人だとバレてなくて良かった。心の底からサトウは思った。
 左手の指を2本折られるどころじゃ済まなかったかもしれない。

「サトウ殿。話はそれくらいにして儂は早う冒険に出たいのじゃ」
「やる気満々だな。それじゃ、お姉さん行ってきます」

 3人になったサトウパーティーがギルドの外に出る。
 流れるようにミルフィーユが荷車に載り土下座すると、サトウはインラーンに話しかける。

「さて、お爺ちゃん。うちのミルフィーユちゃんは陽の下では土下座してなきゃいけないんだ」
「これは祈りだ」
「いいから黙ってなさい。で、荷車で引いて歩かなきゃいけないんだけど、お爺ちゃんに頼んでいいかな」
「嫌じゃ。フォークより重いものなんて持ったことないのじゃ」

「おいジジイ!武器をガチャガチャ背負ってバカ言うな!」
「嫌じゃ嫌じゃ、そもそも老人虐待なのですじゃ。地域包括支援センターに訴えてもいいのじゃぞ」
「いったい誰の税金で生活できてると思ってやがる‥‥」
「そんなことより儂は早く一人前の鍛冶職人になりたい!そのためには親方に言われた市場調査とやらをこなさねばならんのじゃ!」

 インラーンがずんずん先へ歩いていく。
 パーティーメンバーを増員することで荷車引きから開放されると思っていたサトウだが、変わらずミルフィーユを載せた荷車を引き、老人の後を追うのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...