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ウサ耳の見習い鍛冶職人(2)
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ミルフィーユとパーティー登録したときのように、1人ずつ決済機に手をかざし、ステータスを確認されていく。
サトウは依頼を受注する度にステータスを見てもらっていたが、特に強くなることもスキルが増えることも無かった。
「はい。パーティー登録完了です。‥‥と、1つお伝えしたいことが。隣町で日本人の目撃情報がありました」
日本人の目撃情報と聞いてサトウが身構える。
大丈夫だ。日本人と言えば何かしらのチートを持っているらしい。
5歳児並みのステータスでスキル無しのサトウが日本人だと思われるわけがない。
「それって日本人が新しく転移してきたってことか?」
「いえ、彼は2年前に現れたとされる日本人ですね。神代のスキルとされる、透明化スキルを所持しているという話です」
「透明化だって?スケスケじゃねーの‥‥」
あのサトウですら透明化スキルは羨ましいと感じる。
「はい。スケスケです。彼は転移初日から透明化スキルを使いこなしていたため、ギルドを訪れた際、拘束できなかったと報告されています」
「そういえば、初めてギルドに来たとき日本人じゃないか確認する。って言われた気がするけど、あれってボカして伝えないと暴れることもあるんじゃないか?」
サトウはふと湧いた疑問を口にした。
あのとき自分は素直にステータスを見せてしまったが、感の鋭い人物なら警戒するのでは。
「各ギルドの門は、その門を通って内側に入った者のステータスを大幅に低下させる魔導具ですので、暴れられても平気なんですよ」
冒険者が暴れたときの対策だろうか。
透明化のようなイレギュラーがない限り、日本人対策も万全とみえる。
「でもスキルは使えるんだよな」
「問題あるまいて。ギルド職員は皆、元Bランク以上の冒険者なのじゃしな」
「マジでか。じゃあ、お姉さんも強いの?」
「ええ。私も元Bランク冒険者ですよ。日本人と応戦したことは一度だけですが、転移直後の日本人であればステータス低下無しでも勝つ自信があります」
「お姉さんって、そんなゴリゴリの戦闘マシーンみたいな感じだったんだ」
「ギルド職員になるには、元Bランク以上の冒険者かつ、徒手空拳で同ランクの冒険者を無力化できることが条件ですからね」
「日本から転移したばかりの甘ちゃんなんて、どんなにステータスだけ高くても相手にならないってことか」
初日に日本人だとバレてなくて良かった。心の底からサトウは思った。
左手の指を2本折られるどころじゃ済まなかったかもしれない。
「サトウ殿。話はそれくらいにして儂は早う冒険に出たいのじゃ」
「やる気満々だな。それじゃ、お姉さん行ってきます」
3人になったサトウパーティーがギルドの外に出る。
流れるようにミルフィーユが荷車に載り土下座すると、サトウはインラーンに話しかける。
「さて、お爺ちゃん。うちのミルフィーユちゃんは陽の下では土下座してなきゃいけないんだ」
「これは祈りだ」
「いいから黙ってなさい。で、荷車で引いて歩かなきゃいけないんだけど、お爺ちゃんに頼んでいいかな」
「嫌じゃ。フォークより重いものなんて持ったことないのじゃ」
「おいジジイ!武器をガチャガチャ背負ってバカ言うな!」
「嫌じゃ嫌じゃ、そもそも老人虐待なのですじゃ。地域包括支援センターに訴えてもいいのじゃぞ」
「いったい誰の税金で生活できてると思ってやがる‥‥」
「そんなことより儂は早く一人前の鍛冶職人になりたい!そのためには親方に言われた市場調査とやらをこなさねばならんのじゃ!」
インラーンがずんずん先へ歩いていく。
パーティーメンバーを増員することで荷車引きから開放されると思っていたサトウだが、変わらずミルフィーユを載せた荷車を引き、老人の後を追うのであった。
サトウは依頼を受注する度にステータスを見てもらっていたが、特に強くなることもスキルが増えることも無かった。
「はい。パーティー登録完了です。‥‥と、1つお伝えしたいことが。隣町で日本人の目撃情報がありました」
日本人の目撃情報と聞いてサトウが身構える。
大丈夫だ。日本人と言えば何かしらのチートを持っているらしい。
5歳児並みのステータスでスキル無しのサトウが日本人だと思われるわけがない。
「それって日本人が新しく転移してきたってことか?」
「いえ、彼は2年前に現れたとされる日本人ですね。神代のスキルとされる、透明化スキルを所持しているという話です」
「透明化だって?スケスケじゃねーの‥‥」
あのサトウですら透明化スキルは羨ましいと感じる。
「はい。スケスケです。彼は転移初日から透明化スキルを使いこなしていたため、ギルドを訪れた際、拘束できなかったと報告されています」
「そういえば、初めてギルドに来たとき日本人じゃないか確認する。って言われた気がするけど、あれってボカして伝えないと暴れることもあるんじゃないか?」
サトウはふと湧いた疑問を口にした。
あのとき自分は素直にステータスを見せてしまったが、感の鋭い人物なら警戒するのでは。
「各ギルドの門は、その門を通って内側に入った者のステータスを大幅に低下させる魔導具ですので、暴れられても平気なんですよ」
冒険者が暴れたときの対策だろうか。
透明化のようなイレギュラーがない限り、日本人対策も万全とみえる。
「でもスキルは使えるんだよな」
「問題あるまいて。ギルド職員は皆、元Bランク以上の冒険者なのじゃしな」
「マジでか。じゃあ、お姉さんも強いの?」
「ええ。私も元Bランク冒険者ですよ。日本人と応戦したことは一度だけですが、転移直後の日本人であればステータス低下無しでも勝つ自信があります」
「お姉さんって、そんなゴリゴリの戦闘マシーンみたいな感じだったんだ」
「ギルド職員になるには、元Bランク以上の冒険者かつ、徒手空拳で同ランクの冒険者を無力化できることが条件ですからね」
「日本から転移したばかりの甘ちゃんなんて、どんなにステータスだけ高くても相手にならないってことか」
初日に日本人だとバレてなくて良かった。心の底からサトウは思った。
左手の指を2本折られるどころじゃ済まなかったかもしれない。
「サトウ殿。話はそれくらいにして儂は早う冒険に出たいのじゃ」
「やる気満々だな。それじゃ、お姉さん行ってきます」
3人になったサトウパーティーがギルドの外に出る。
流れるようにミルフィーユが荷車に載り土下座すると、サトウはインラーンに話しかける。
「さて、お爺ちゃん。うちのミルフィーユちゃんは陽の下では土下座してなきゃいけないんだ」
「これは祈りだ」
「いいから黙ってなさい。で、荷車で引いて歩かなきゃいけないんだけど、お爺ちゃんに頼んでいいかな」
「嫌じゃ。フォークより重いものなんて持ったことないのじゃ」
「おいジジイ!武器をガチャガチャ背負ってバカ言うな!」
「嫌じゃ嫌じゃ、そもそも老人虐待なのですじゃ。地域包括支援センターに訴えてもいいのじゃぞ」
「いったい誰の税金で生活できてると思ってやがる‥‥」
「そんなことより儂は早く一人前の鍛冶職人になりたい!そのためには親方に言われた市場調査とやらをこなさねばならんのじゃ!」
インラーンがずんずん先へ歩いていく。
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