異世界転移して仲間にするなら美少女よりもムキムキのオッサンでしょう

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トゥキディデス・オクシモロン・パンスペルミアさ(2)

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 職人街。
 鍛冶屋や工房などの店舗が密集している区画のことを指している。

 サトウはリバーシの相談ができる職人を探すため、ここを訪れていた。
 木工工房の前に荷車を止めると、ミルフィーユを残したまま工房内に入っていく。

「ちょっと仕事の相談があるんだけど今いいかな」
「あぁ?仕事の相談だと?‥‥儲けにならないことはやらんぞ」
「やれやれ。俺の話を聞いてから判断してくれよ」

 サトウはまたリバーシについて説明する。
 どこからどう見ても親方のような男は、無精髭を撫でながら静かに説明を聞いていた。

「つまりボードゲームを作るってことか?」
「そうだ。似たゲームが無いなら売れるんじゃないかと思って」
「帰ってくれ!あと白黒2色の石を裏返し合うのの何が面白いんだ!どっかおかしいんじゃねぇか!?」
「ええ‥‥」

 異世界人とリバーシの相性が悪すぎる。
 サトウも別にそこまでリバーシが好きなわけではないが、ここまで酷く言われると流石にショックだ。

 肩を落として工房から出たサトウに、荷車の上からミルフィーユが声をかけた。

「御主人様、流石にボードゲーム作成は難しかったろう」
「何か理由があるのか?」
「ボードゲームに良いイメージを持つ人間は少ないからな」
「何でだよ、ただのゲームだろ!」

「トゥキディデス・オクシモロン・パンスペルミアさ」
「トゥキ、何、呪文?」



 トゥキディデス・オクシモロン・パンスペルミア。
 1,048,576マスの盤と512の駒を使用するボードゲーム。
 熟達者同士の対局にかかる平均時間ですら72時間・・・。対局開始時、プレイヤーにはその場から離れることができない魔導契約が強制的に締結される。
 その場から離れるためには対局を終わらせるか、魔導契約範囲内の生命反応を1つにするしかなく、大抵は対局を終わらせることができず殺し合いに発展するのだそうだ。

「野蛮すぎる」
「ボードゲームといえばこのゲームでね。新しいゲームを考えても誰も触ろうとしないだろう」
「これもダメか。手っ取り早く金が稼げると思ったんだけどな」
「根気強くパーティーメンバーを募集するしかないさ」

 ミルフィーユはパーティーメンバーの増員を押しているが、サトウが難色を示しているのにも理由がある。
 それは自分たちのパーティー構成のことだ。
 5歳児並みのステータスの男と、二つ名付きの犯罪奴隷の。誰がこのパーティーに入りたいんだ。

「兄ちゃんたち。パーティーメンバーを探してるのか?」

 工房の隣の鍛冶屋から男が顔を出した。
 この都合よく人に話かけられる感じ、すごく異世界っぽい。とサトウはワクワクする。

「それなりに戦える見習いが居てな。今度、市場調査も兼ねて冒険者に同行させてぇなと考えてたんだが、一度会ってみないか?‥‥ウサ耳の見習い鍛冶職人だぜ」

 ウサ耳の見習い鍛冶職人。
 絶対可愛いよ、これ。ウサ耳かつ見習いなんて、可愛くなきゃ許されないもん。
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