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ふふ、これは必殺技ではなく弱攻撃だよ(2)
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ゴブリン。
子どものような体格していて、全身は緑色。森や山中の川辺に棲む魔物。
好戦的な性格をしており、背中への攻撃はほぼダメージが通らないともある。
頭頂部に特徴があるらしいが、サトウはよく知っている生き物な気がしていた。
しばらく森の中を歩くと、水の流れる音が聞こえてきた。
加えて「グエッ、グエッ」という鳴き声のようなものも聞こえる。
木の裏に身を潜めながらサトウが鳴き声の正体を確認する。
緑色の生き物が数体、川辺に集まっていた。
「あれがゴブリン?」
「よくやった御主人様。あれが今回の討伐対象のゴブリンだ」
冊子通りの体格をした緑色の魔物。
背中に甲羅を背負い、手足には水掻き、頭頂部には皿を乗せている。
河童だ。
馴染み深い日本の妖怪。河童だ。
実際に見たことはないが日本人ならよく知っている生き物。河童だ。
「河童って実在したんだ」
「カッパ?」
「こっちの話。で、これからどうする?頭の皿をカチ割ればいいのか?」
「皿は討伐証明のため、剥ぎ取る必要がある」
ここで見ていてくれ、とサトウに耳打ちすると、ミルフィーユは両拳を握って河童の群れへ近づいていく。
「ミルフィーユちゃん!武器は!?」
「私の武器はこの肉体さ。さて、長年の奴隷生活で鈍っていないといいがね」
突然現れた上半身裸のムキムキ大男にゴブリンが気づいたようだ。
そのゴブリンはミルフィーユを指さすと「ギャギャッ」とけたたましく吠えた。呼応するようにその他のゴブリンたちも騒ぎ出す。
亀のような甲羅を背負っているわりに動きが素早い。
あっという間にミルフィーユはゴブリンたちに囲まれてしまった。
ゴブリンがミルフィーユに噛みつこうとしたとき、彼女はゴブリンの下顎を握っていた拳で軽く撫でた。
瞬間、ゴブリンの下顎が弾け飛ぶ。そのまま糸の切れた操り人形のように倒れ、数回短く痙攣すると動かなくなった。
ミルフィーユがゴブリンを撫でると次々に弾けていく。北斗の拳かな。
気づけばゴブリンは残り1匹になっていた。
「グロすぎないか、その必殺技!」
「ふふ、これは必殺技ではなく弱攻撃だよ」
「こんな弱攻撃があってたまるか!」
サトウの声に反応した最後のゴブリンが彼に襲いかかる。
咄嗟にパチンコを構えようとするも、そもそも弾にする小石を拾っていないことを思い出した。
とりあえず手に持ったパチンコで引っ叩こうと構えるサトウ。
そんな彼とゴブリンの間に、ミルフィーユの拳が突き刺さる。
先ほどまで身を潜めていた木が大きな音をたてながら倒れた。
「御主人様、怪我はないか」
「助かった。5歳児並みの戦闘力じゃ勝てるか心配だったんだ」
「もう少し下がっていてく、れ‥‥!?ヌゥウアァ!!」
「どうした!どこかやられたのかミルフィーユちゃん!」
先ほどまで軽快にゴブリンを討伐していたミルフィーユが膝をついた。
苦しげな表情を浮かべ蹲った彼女に、思わずサトウも駆け寄る。
ミルフィーユは土下座していた。
木陰を作っていた木を倒してしまったせいだ。
陽の光に晒されている間、彼女はメッカに向けて祈り続けねばならない。
「ヌゥン!御主人様!気をつけろ、トラップだ!」
「いい加減にしろよ!このハゲ!」
子どものような体格していて、全身は緑色。森や山中の川辺に棲む魔物。
好戦的な性格をしており、背中への攻撃はほぼダメージが通らないともある。
頭頂部に特徴があるらしいが、サトウはよく知っている生き物な気がしていた。
しばらく森の中を歩くと、水の流れる音が聞こえてきた。
加えて「グエッ、グエッ」という鳴き声のようなものも聞こえる。
木の裏に身を潜めながらサトウが鳴き声の正体を確認する。
緑色の生き物が数体、川辺に集まっていた。
「あれがゴブリン?」
「よくやった御主人様。あれが今回の討伐対象のゴブリンだ」
冊子通りの体格をした緑色の魔物。
背中に甲羅を背負い、手足には水掻き、頭頂部には皿を乗せている。
河童だ。
馴染み深い日本の妖怪。河童だ。
実際に見たことはないが日本人ならよく知っている生き物。河童だ。
「河童って実在したんだ」
「カッパ?」
「こっちの話。で、これからどうする?頭の皿をカチ割ればいいのか?」
「皿は討伐証明のため、剥ぎ取る必要がある」
ここで見ていてくれ、とサトウに耳打ちすると、ミルフィーユは両拳を握って河童の群れへ近づいていく。
「ミルフィーユちゃん!武器は!?」
「私の武器はこの肉体さ。さて、長年の奴隷生活で鈍っていないといいがね」
突然現れた上半身裸のムキムキ大男にゴブリンが気づいたようだ。
そのゴブリンはミルフィーユを指さすと「ギャギャッ」とけたたましく吠えた。呼応するようにその他のゴブリンたちも騒ぎ出す。
亀のような甲羅を背負っているわりに動きが素早い。
あっという間にミルフィーユはゴブリンたちに囲まれてしまった。
ゴブリンがミルフィーユに噛みつこうとしたとき、彼女はゴブリンの下顎を握っていた拳で軽く撫でた。
瞬間、ゴブリンの下顎が弾け飛ぶ。そのまま糸の切れた操り人形のように倒れ、数回短く痙攣すると動かなくなった。
ミルフィーユがゴブリンを撫でると次々に弾けていく。北斗の拳かな。
気づけばゴブリンは残り1匹になっていた。
「グロすぎないか、その必殺技!」
「ふふ、これは必殺技ではなく弱攻撃だよ」
「こんな弱攻撃があってたまるか!」
サトウの声に反応した最後のゴブリンが彼に襲いかかる。
咄嗟にパチンコを構えようとするも、そもそも弾にする小石を拾っていないことを思い出した。
とりあえず手に持ったパチンコで引っ叩こうと構えるサトウ。
そんな彼とゴブリンの間に、ミルフィーユの拳が突き刺さる。
先ほどまで身を潜めていた木が大きな音をたてながら倒れた。
「御主人様、怪我はないか」
「助かった。5歳児並みの戦闘力じゃ勝てるか心配だったんだ」
「もう少し下がっていてく、れ‥‥!?ヌゥウアァ!!」
「どうした!どこかやられたのかミルフィーユちゃん!」
先ほどまで軽快にゴブリンを討伐していたミルフィーユが膝をついた。
苦しげな表情を浮かべ蹲った彼女に、思わずサトウも駆け寄る。
ミルフィーユは土下座していた。
木陰を作っていた木を倒してしまったせいだ。
陽の光に晒されている間、彼女はメッカに向けて祈り続けねばならない。
「ヌゥン!御主人様!気をつけろ、トラップだ!」
「いい加減にしろよ!このハゲ!」
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