異世界転移して仲間にするなら美少女よりもムキムキのオッサンでしょう

近畿ブロードウェイ

文字の大きさ
上 下
7 / 28

ケーキ屋さんの今年13歳になる看板娘(1)

しおりを挟む
 あれからどれだけの時間が経っただろうか。5分かもしれないし、1時間かもしれない。
 案内された応接室のソファで一人、サトウは貧乏ゆすりをしながら待っていた。

「サトウ様、お待たせいたしました」
「!!」

 短いノックの後、アッサラームが扉から顔を覗かせた。
 思わずソファから起立したサトウに、アッサラームは笑顔で返した。

「ふふ、そこまで心待ちにしていただいていると、こちらまで嬉しくなりますな」
「心待ちだなんて、やれやれ。ちょっとだけだよ。リトルビットさ」

「さ、ミルフィーユ。ご挨拶なさい」
「はい」

 ミルフィーユが現れる。
 奴隷という身分だからか相手は酷く薄着だ。というか上半身裸だ。

 しかも身長171cmのサトウが首が痛くなるくらい見上げる必要があるほど背が高い。
 また、露出したミルフィーユの胸の高さにサトウの頭がくるため、恥ずかしくなり目線を外した。

 目の前に突き出された胸を見たせいか、ついつい考えてしまう。
 日本に残してきたアメリカ人美女の義母や、金髪巨乳ギャルより確実に大きい。
 それにしても、たくましい胸筋・・・・・・・だった。

「たくましい胸筋?」
「ほほ、サトウ様。そんなに凝視するものではありませんぞ。ミルフィーユも恥ずかしがっております」

「アッサラームさん。構わんさ。私の胸でよければ、いくらでも見るといい」

 バリトンボイス。
 その声を聞いたサトウは自分の両頬を強く叩くと、改めてミルフィーユの姿を確認する。



 200cm以上あるだろう身長。西洋彫刻のように鍛え上げられた肉体。
 それでいて知性を感じる眼差し、厚い唇と、光り輝くスキンヘッド。
 上半身は右胸から右腕にかけてビッシリとタトゥーが刻まれていた。

「満足したかな、御主人様。私はミルフィーユ。自認・・はケーキ屋さんの今年13歳になる看板娘だ。どうか可愛がってくれ」

 ケーキ屋さんの今年13歳になる看板娘を自称する大男を目の前に、サトウは言葉が出ない。
 強いストレスにさらされたせいかもしれない。

「あぁ。右胸の彼が気になるのかな。彼の名はトップ。挨拶を」
「あ、あの、どうも。サトウです」

「サトウ様。ミルフィーユをお気に召していただけましたかな」

「はは、こんなムキムキのおっさん連れてきて何かの冗談か?」

 サトウの言葉に場が静まり返る。
 ミルフィーユは俯き、肩を震わせている。

 外見だけで人の性別を判断する。これは日本においても度々問題になるセンシティブな話題である。
 身長約200cmのスキンヘッドの外見的特徴が男性である人物に対し、軽率に「ムキムキのおっさん」と言い放ったサトウに問題があると言えよう。

「あ、あんたまさかっ!性差別主義者セクシストか!?」
「え、は?何て?」
「出ていけ!‥‥あんたらみたいなイカれた連中に売る奴隷は、この店には居ない!」
「何か誤解してるって。俺はそのセクシス?とかって人間じゃない」

「犯罪者はみんなそう言うんだ。とにかく早く出ていってくれ!」

 先程まで柔和な笑顔をみせていたアッサラームが捲し立てる。
 その迫力に気圧されていたサトウに助け舟を出したのは、他でもないミルフィーユだった。

「御主人様。君は極東人なんだろう?」
「そう。そうなんだよ。極東からこっちに来たばかりでさ」

 その助け舟にすぐさま同調したサトウを、アッサラームが「黙れ!」と一喝する。

「極東から来たばかりとはいえ、さっきの性差別的な発言は連邦法で死刑でもおかしくないんだぞ!それほどの発言だ!ミルフィーユ、お前はこの男を許せるのか!」

「そうだな、私はどうやったってケーキ屋さんの今年13歳になる看板娘なんだ。それをムキムキのおっさんだなんて到底許せることではないよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転移したよ!

八田若忠
ファンタジー
日々鉄工所で働く中年男が地球の神様が企てた事故であっけなく死亡する。 主人公の死の真相は「軟弱者が嫌いだから」と神様が明かすが、地球の神様はパンチパーマで恐ろしい顔つきだったので、あっさりと了承する主人公。 「軟弱者」と罵られた原因である魔法を自由に行使する事が出来る世界にリストラされた主人公が、ここぞとばかりに魔法を使いまくるかと思えば、そこそこ平和でお人好しばかりが住むエンガルの町に流れ着いたばかりに、温泉を掘る程度でしか活躍出来ないばかりか、腕力に物を言わせる事に長けたドワーフの三姉妹が押しかけ女房になってしまったので、益々活躍の場が無くなりさあ大変。 基本三人の奥さんが荒事を片付けている間、後ろから主人公が応援する御近所大冒険物語。 この度アルファポリス様主催の第8回ファンタジー小説大賞にて特別賞を頂き、アルファポリス様から書籍化しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

元勇者、魔王の娘を育てる~血の繋がらない父と娘が過ごす日々~

雪野湯
ファンタジー
勇者ジルドランは少年勇者に称号を奪われ、一介の戦士となり辺境へと飛ばされた。 新たな勤務地へ向かう途中、赤子を守り戦う女性と遭遇。 助けに入るのだが、女性は命を落としてしまう。 彼女の死の間際に、彼は赤子を託されて事情を知る。 『魔王は殺され、新たな魔王となった者が魔王の血筋を粛清している』と。 女性が守ろうとしていた赤子は魔王の血筋――魔王の娘。 この赤子に頼れるものはなく、守ってやれるのは元勇者のジルドランのみ。 だから彼は、赤子を守ると決めて娘として迎え入れた。 ジルドランは赤子を守るために、人間と魔族が共存する村があるという噂を頼ってそこへ向かう。 噂は本当であり両種族が共存する村はあったのだが――その村は村でありながら軍事力は一国家並みと異様。 その資金源も目的もわからない。 不審に思いつつも、頼る場所のない彼はこの村の一員となった。 その村で彼は子育てに苦労しながらも、それに楽しさを重ねて毎日を過ごす。 だが、ジルドランは人間。娘は魔族。 血が繋がっていないことは明白。 いずれ真実を娘に伝えなければならない、王族の血を引く魔王の娘であることを。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN
ファンタジー
それは、ある少年の物語。 ある日、前世の記憶を取り戻した少年が大切な人と再会したり周りのチートぷりに感嘆したりするけど、実は少年の方が凄かった話し。 『僕の兄上はチート過ぎて人なのに魔王です。』 『そういうお前は、愛され過ぎてチートだよな。』 そんな感じ。 『悪役令嬢はもらい受けます』の彼らが織り成すファンタジー作品です。良かったら見ていってね。 隔週日曜日に更新予定。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...