4 / 30
空中にブォン!ってなるタイプのやつ(2)
しおりを挟む
ギルドに向かおうとしたサトウを革鎧の男が呼び止めた。
先ほど受けた暴行の恐怖から、今度は情報料でも取られるんじゃないかと身構える。
そもそも自分はこの世界の通貨を持っているのだろうか、と考えていると男がサトウの左手を掴んだ。
「骨折。治癒魔法をかける前に元の位置に戻す必要があるんだが、ついでだし俺がやってもいいぞ」
「痛い?」
「痛いに決まってるだろ」
「やめて!ほっといて!」
拒絶された男は「どうせなら興奮して痛みが鈍いうちがいいんだけどな」と言いながら頬をかく。
サトウは男に一言礼を言うとギルドに向かって歩き出した。
ギルドまでの道中、サトウは考えていた。
もしかして、この異世界転移って楽しくないかも。
すでに出鼻を挫かれまくっている。
女の子にボコボコにされ、指を2本折られる。こんなこと日本では経験したことがない。
しばらく区画を歩いていると、中心地に木造3階建ての大きな建物が見えた。
これが男の言っていた冒険者ギルドだろう。開放されている大きな扉をくぐる。
広いエントラスでは冒険者風の男女が談笑している。
奥のカウンターを見ると、受付嬢らしき姿も見える。
「ここから俺の冒険が始まるのか」
サトウは足を引き摺りながらエントランスを進む。
他の冒険者からの視線を感じつつも、カウンターに辿り着いたサトウは受付嬢に話しかける。
「この指!治せる人っていないかなぁ!」
サトウは折れ曲がった2本の指を受付嬢に見せつける。受付嬢は「ヒッ」と短い悲鳴を上げるもすぐに笑顔を作った。
受付嬢は笑顔を貼り付けたままエントランスをしばらく見渡し、サトウの問いに答える。
「申し訳ありません。本日、治癒魔法使いは不在なようです」
「そっかぁ。治癒魔法使いの伝手、いや、まずは冒険者の登録がしたいんだけど」
「かしこまりました。登録料5,000ゴールドになります」
定番といえば定番だが、冒険者ギルドへの登録には登録料が必要らしい。
改めてサトウは自分の制服のポケットを探ってみるが通貨らしきものは持たされていないようだ。
「通貨はちょっと持ってなくて。どこかで借りられないかな」
「通貨?あの、ご自分のステータスの確認は可能でしょうか」
「ステータス?」
その言葉がトリガーになったのかサトウの目の前にステータスが表示される。
これも異世界あるあるだ。寧ろなぜ今まで試さなかったのかとサトウは己を恥じた。
「うわぁ!あの、空中にブォン!ってなるタイプのやつだ!」
「そうでございますね。ブォン!ってなるタイプのやつでございますね。それで如何でしょう。所持金の方は」
サトウの所持金の欄には300,000ゴールドとある。
登録料など余裕で払える額だった。
「5,000ゴールドね。払える払える」
「国外から来た方とお見受けします。我が国では硬貨や紙幣は用いず、ステータス決済となりますのでご注意ください」
「ステータス決済か。いったいどんなシステムなんだ?」
「さぁ?神の御業としか」
「こわぁ‥‥」
「それでは、こちらの決済機に手をかざしてください。こちらで決済の方と、念のため日本人でないかの確認を行います」
また出鼻を挫かれそうな予感だ。
先ほど受けた暴行の恐怖から、今度は情報料でも取られるんじゃないかと身構える。
そもそも自分はこの世界の通貨を持っているのだろうか、と考えていると男がサトウの左手を掴んだ。
「骨折。治癒魔法をかける前に元の位置に戻す必要があるんだが、ついでだし俺がやってもいいぞ」
「痛い?」
「痛いに決まってるだろ」
「やめて!ほっといて!」
拒絶された男は「どうせなら興奮して痛みが鈍いうちがいいんだけどな」と言いながら頬をかく。
サトウは男に一言礼を言うとギルドに向かって歩き出した。
ギルドまでの道中、サトウは考えていた。
もしかして、この異世界転移って楽しくないかも。
すでに出鼻を挫かれまくっている。
女の子にボコボコにされ、指を2本折られる。こんなこと日本では経験したことがない。
しばらく区画を歩いていると、中心地に木造3階建ての大きな建物が見えた。
これが男の言っていた冒険者ギルドだろう。開放されている大きな扉をくぐる。
広いエントラスでは冒険者風の男女が談笑している。
奥のカウンターを見ると、受付嬢らしき姿も見える。
「ここから俺の冒険が始まるのか」
サトウは足を引き摺りながらエントランスを進む。
他の冒険者からの視線を感じつつも、カウンターに辿り着いたサトウは受付嬢に話しかける。
「この指!治せる人っていないかなぁ!」
サトウは折れ曲がった2本の指を受付嬢に見せつける。受付嬢は「ヒッ」と短い悲鳴を上げるもすぐに笑顔を作った。
受付嬢は笑顔を貼り付けたままエントランスをしばらく見渡し、サトウの問いに答える。
「申し訳ありません。本日、治癒魔法使いは不在なようです」
「そっかぁ。治癒魔法使いの伝手、いや、まずは冒険者の登録がしたいんだけど」
「かしこまりました。登録料5,000ゴールドになります」
定番といえば定番だが、冒険者ギルドへの登録には登録料が必要らしい。
改めてサトウは自分の制服のポケットを探ってみるが通貨らしきものは持たされていないようだ。
「通貨はちょっと持ってなくて。どこかで借りられないかな」
「通貨?あの、ご自分のステータスの確認は可能でしょうか」
「ステータス?」
その言葉がトリガーになったのかサトウの目の前にステータスが表示される。
これも異世界あるあるだ。寧ろなぜ今まで試さなかったのかとサトウは己を恥じた。
「うわぁ!あの、空中にブォン!ってなるタイプのやつだ!」
「そうでございますね。ブォン!ってなるタイプのやつでございますね。それで如何でしょう。所持金の方は」
サトウの所持金の欄には300,000ゴールドとある。
登録料など余裕で払える額だった。
「5,000ゴールドね。払える払える」
「国外から来た方とお見受けします。我が国では硬貨や紙幣は用いず、ステータス決済となりますのでご注意ください」
「ステータス決済か。いったいどんなシステムなんだ?」
「さぁ?神の御業としか」
「こわぁ‥‥」
「それでは、こちらの決済機に手をかざしてください。こちらで決済の方と、念のため日本人でないかの確認を行います」
また出鼻を挫かれそうな予感だ。
1
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる