異世界転移して仲間にするなら美少女よりもムキムキのオッサンでしょう

近畿ブロードウェイ

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空中にブォン!ってなるタイプのやつ(2)

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 ギルドに向かおうとしたサトウを革鎧の男が呼び止めた。
 先ほど受けた暴行の恐怖から、今度は情報料でも取られるんじゃないかと身構える。
 そもそも自分はこの世界の通貨を持っているのだろうか、と考えていると男がサトウの左手を掴んだ。

骨折これ。治癒魔法をかける前に元の位置に戻す必要があるんだが、ついでだし俺がやってもいいぞ」
「痛い?」
「痛いに決まってるだろ」
「やめて!ほっといて!」

 拒絶された男は「どうせなら興奮して痛みが鈍いうちがいいんだけどな」と言いながら頬をかく。
 サトウは男に一言礼を言うとギルドに向かって歩き出した。

 ギルドまでの道中、サトウは考えていた。
 もしかして、この異世界転移って楽しくないかも。
 すでに出鼻を挫かれまくっている。
 女の子にボコボコにされ、指を2本折られる。こんなこと日本では経験したことがない。



 しばらく区画を歩いていると、中心地に木造3階建ての大きな建物が見えた。
 これが男の言っていた冒険者ギルドだろう。開放されている大きな扉をくぐる。

 広いエントラスでは冒険者風の男女が談笑している。
 奥のカウンターを見ると、受付嬢らしき姿も見える。

「ここから俺の冒険が始まるのか」

 サトウは足を引き摺りながらエントランスを進む。
 他の冒険者からの視線を感じつつも、カウンターに辿り着いたサトウは受付嬢に話しかける。

「この指!治せる人っていないかなぁ!」

 サトウは折れ曲がった2本の指を受付嬢に見せつける。受付嬢は「ヒッ」と短い悲鳴を上げるもすぐに笑顔を作った。
 受付嬢は笑顔を貼り付けたままエントランスをしばらく見渡し、サトウの問いに答える。

「申し訳ありません。本日、治癒魔法使いは不在なようです」

「そっかぁ。治癒魔法使いの伝手、いや、まずは冒険者の登録がしたいんだけど」
「かしこまりました。登録料5,000ゴールドになります」

 定番といえば定番だが、冒険者ギルドへの登録には登録料が必要らしい。
 改めてサトウは自分の制服のポケットを探ってみるが通貨らしきものは持たされていないようだ。

「通貨はちょっと持ってなくて。どこかで借りられないかな」
「通貨?あの、ご自分のステータスの確認は可能でしょうか」

「ステータス?」

 その言葉がトリガーになったのかサトウの目の前にステータスが表示される。
 これも異世界あるあるだ。寧ろなぜ今まで試さなかったのかとサトウは己を恥じた。

「うわぁ!あの、空中にブォン!ってなるタイプのやつだ!」
「そうでございますね。ブォン!ってなるタイプのやつでございますね。それで如何でしょう。所持金の方は」

 サトウの所持金の欄には300,000ゴールドとある。
 登録料など余裕で払える額だった。

「5,000ゴールドね。払える払える」
「国外から来た方とお見受けします。我が国では硬貨や紙幣は用いず、ステータス決済となりますのでご注意ください」

「ステータス決済か。いったいどんなシステムなんだ?」
「さぁ?神の御業としか」
「こわぁ‥‥」
「それでは、こちらの決済機に手をかざしてください。こちらで決済の方と、念のため日本人でないか・・・・・・・の確認を行います」

 また出鼻を挫かれそうな予感だ。
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