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出現!火の魔人?!
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ここ東都は国の東側に作られた10mもの高い外壁を持つ都市であり、その中には電気が張り巡らされ、移動に便利な電車まで走っていた。
曲旋風はここ東都産まれ東都育ちで街の外には出たことがない。
だから聞いた話にはなるが街の外壁の外には魔物が蔓延り、西の都『西都』や北の街『北方領』、南の都市『南部貿易都市』に向かうには傭兵団と呼ばれる戦闘集団に護衛を頼むのが常となっている。
曲旋風の父親は傭兵団の一員だったが、旋風が5歳になる頃、魔物との戦闘で死亡したと聞かされていた。
だから今は母と2人きりで生活しており、母は定食屋『つむじかぜ』を経営していた。
「ただいま母さん。」
「あ。おかえり旋風。ちゃんと手洗いなさい。」
「はぁーい。」
旋風の母は片親ながら旋風を大学にまで行かせてくれた偉大な人である。
そんな母の言葉には逆らえない旋風であった。
「ふぅ。なんとか今日も発掘作業で単位を落とさずにするだよ。」
自分の部屋に入るなり旋風は着いてきた狐のネジに言う。
「大学ってのは勉強しに行くところだろ?発掘作業なんかしてていいのかい。勉強しないと。」
「確かにそうなんだけどさ。遅刻すると毎回、教授に発掘作業に行かされるんだ。」
「へぇ。随分と熱心にその教授はあの地層を掘ってるんだね。スピルの力に興味があったりするのかな。」
ベットに腰掛けて旋風は言う。
「いやスピルのペンダントはたまたまだと思うけど。それにもう一回確認なんだけど、螺旋力って何?」
旋風のベッドによじ登ったネジが言う。
「はぁー。ホントに現代人は螺旋力を失ってしまったんだね。だから科学力が進歩したのか。まぁいいや。人はDNAと言う遺伝情報を持って産まれてくるんだけど、このDNAってのが二重螺旋をしているのさ。」
「DNA?」
「そう。その二重螺旋こそが生物の力なんだ。特に人間はその螺旋の力を扱うのが上手かった。だから森羅万象様々な事象をその螺旋力で制御していたのさ。」
旋風はベットに寝転びながら言う。
「スピルにならなくても森羅万象の力を力が使えたって言うの?」
「あぁ。その通りだ。太古の人々は螺旋力で火をおこし調理をしたり、螺旋力で水を生成して顔を洗ったり、螺旋力で土を操り家を作ったりした。その中でも螺旋力が飛び抜けて強かったのがスピルなのさ。」
旋風は寝返りを打ちながら言う。
「へぇ。太古の人々ってのは凄かったんだな。」
「旋風!何を言ってるんだい?今や君も螺旋力で風の力を扱えるじゃないか。風だけじゃない。今に他の力も手に入れられるさ。」
狐のネジは旋風の腹に乗って言う。
「まずは魔人を倒すための準備だ。他の力の源たるアクセサリーを集めよう。」
「集めようったってなんの情報もないんじゃ集めようがないだろ?」
「大丈夫。時が来ればアクセサリーの方から旋風、君に会いに来るさ。」
「アクセサリーが会いに来るねぇ。」
いまいち釈然としない旋風である。
そこに母から声がかかる。
「旋風、ご飯よー。」
「はぁーい。」
ふと旋風は思い立ってネジに聞く。
「ネジは食事とかどうするの?なんなら食べられる?」
「僕は妖狐だからね。食事は必要ないよ。」
「そうか。んじゃ俺、夕飯食べて来ちゃうから待ってて。」
そう言うと部屋を出て行く旋風。
1人残されたネジは独り言ちる。
「他のアクセサリーも出土されてると考えれば近いうちに力を取り戻したアクセサリーが暴走を始めるぞ。騒ぎが大きくなる前に回収しないと。」
ネジは部屋の窓から外を見る。まるでその視線の先にアクセサリーがあるかのように。
旋風が風のペンダントを掘り出してから1週間が経過したが特に日常生活に変わりは無かった。
いつも通り遅刻ギリギリで大学に行き、時には発掘作業に行かされる。
今日も旋風は遅刻をして発掘作業に向かわされる事になった。
発掘現場に到着した旋風は現場指揮を執っている助教授に挨拶に行った。
「曲 旋風、今日も1日お世話になります。」
「うん。教授から連絡は貰ってるよ。いつも大変だね、君も。」
「いえ。遅刻する自分が悪いっす。」
「そうだね。遅刻は良くない。じゃあ君はA1029区画を頼みます。」
そう言って笑いかける助教授。
旋風はA1029区画に向かうとそこには先客がいた。
「曲 旋風す。今日1日ここで発掘作業させて頂くっす。」
「あら曲君じゃない。久しぶり。」
そう言って振り返ったのは姫野 薫だった。
「あっ。姫野さん。お久しぶりです。」
今日もセミロングの髪をなびかせ、つなぎの胸元がキツそうなくらい自己主張している。
「ねぇねぇ。あれからネジ君とはどう?」
「いやー毎日一緒に来たがるんで、どうにか家に置いてくるのに毎回手間取ってますよ。あんな狐連れ歩いてたらおかしいじゃないですか。」
「じゃあ、今日はネジ君は一緒じゃないんだ?」
「いや。僕はいるよ。」
何もない空間から突如声がした。
旋風と姫野がぎょっとしながら声のした方向を向くと、段々と狐のネジの姿が見えてくる。
「ねじ?どうしてここに?」
「ぼくはいつも君のそばにいるよ。僕は妖狐だからね。姿も消せるんだ。」
「って事は毎日一緒に来てたって事?」
「うん。毎日一緒にいたよ。」
ネジはその場に浮きながら答える。
「だって家に帰ったら部屋にいたじゃん?」
「あれはちょっと先回りして部屋で待機してたように見せてただけさ。」
「なんだよ。じゃあ毎朝のやりとりはなんだったんだよ。」
旋風は頭を抱えて言う。
「旋風がなかなか僕を連れて行こうとしないからね。ちょっと意地悪したくなったのさ。」
「最初から透明になれるって知ってたら連れて来てたのに。」
ため息をつく旋風とは対照的に姫野はネジに興味津々だ。
「ねぇ。ネジ君。透明になったらネジ君には触れないの?それとも姿が消えるだけで触れたりする?」
「それは僕のさじ加減さ。普段旋風について歩いてた時は触れられないようにしてたけどね。」
「ねぇねぇ。もう一回透明になってみせてよ。」
「いいよ。」
段々と姿が消えていくネジ。
そのネジに向かって手を伸ばす姫野。
「あ!本当だ。姿は見えないけど、ここにいるわね。」
「うん。じゃあ次は触られないようにしてみるね。」
空中で何かを掴んでいた姫野の手が空振りする。
「あ!本当だ!触ってたのに消えちゃった。」
「どうだい。僕の能力も凄いだろ?」
段々と姿を表しながらネジが言う。
「凄い。凄い。どういう仕組みで消えているの?それが解明出来たら私の論文も凄いことになるわ。」
「妖気でやってることだからね。君達の言う科学に照らし合わせても理屈はわからないだろうさ。」
「そうか。残念。」
ホントに残念そうに自身のつま先を見る姫野。
頭を抱えていた旋風が立ち直る。
「まぁいいや。これからは朝の押し問答はいらないって事だな。透明になって着いてくるなら何処まででも着いて来いよ。」
「僕も流石にトイレとお風呂の時は着いていってないからな。」
「それは。それで頼むわ。」
旋風は力なく言う。
「さて、今日も発掘作業進めないと、でしょ?」
姫野に言われて思いだしたかのように旋風はハンマーとスコップを取り出す。
「じゃあ私は北側やってるから曲君は東側をお願いね。」
「はい。わかりました。」
二人が発掘作業に戻って暫くした頃、辺りが騒がしくなった。
「きゃー化け物よ!」
「うわー火の化け物に襲われるっ!」
「みんな逃げろー!!」
口々にそんな事を言いながら逃げ惑う人達。
みんな発掘作業チームの人達だ。
「どうしたんでしょうね。」
「火の化け物とか言ってたわよ?」
「旋風!スペルの出番かもしれないぞ。」
「魔人が現れたって事か?」
「いや。これは火のリングの力だろう。とりあえず向かうぞ。旋風!」
「あ。あぁ。わかった。」
逃げる人々とは反対に駆けていく旋風とネジに姫野。
「姫野さんまで?」
「私も地上界防衛隊だから。」
「覚えてたんだね。そうさ。薫も一員さ。」
「まったく。危なくなったら逃げて下さいよ。」
そう言って化け物の前に出て行く旋風達。
確かにそこには体全体に炎を纏い、前傾姿勢で手が地面につきそうな程長い化け物が立っていたのだった。
「旋風!螺旋力解放だ!」
旋風はペンダントを掴み叫ぶ。
「『螺旋解放』!」
その瞬間、旋風の身体が宙に浮いた。
そして身体の周りに二重螺旋を描くつむじ風が生まれ、旋風の身体を完全に隠す。
次の瞬間、眩いばかりの光を発する旋風。
風の束が消え去った後には全身鎧を身に着けた旋風がいた。
こうしてスピルとなった旋風の初の戦闘は開始された。
曲旋風はここ東都産まれ東都育ちで街の外には出たことがない。
だから聞いた話にはなるが街の外壁の外には魔物が蔓延り、西の都『西都』や北の街『北方領』、南の都市『南部貿易都市』に向かうには傭兵団と呼ばれる戦闘集団に護衛を頼むのが常となっている。
曲旋風の父親は傭兵団の一員だったが、旋風が5歳になる頃、魔物との戦闘で死亡したと聞かされていた。
だから今は母と2人きりで生活しており、母は定食屋『つむじかぜ』を経営していた。
「ただいま母さん。」
「あ。おかえり旋風。ちゃんと手洗いなさい。」
「はぁーい。」
旋風の母は片親ながら旋風を大学にまで行かせてくれた偉大な人である。
そんな母の言葉には逆らえない旋風であった。
「ふぅ。なんとか今日も発掘作業で単位を落とさずにするだよ。」
自分の部屋に入るなり旋風は着いてきた狐のネジに言う。
「大学ってのは勉強しに行くところだろ?発掘作業なんかしてていいのかい。勉強しないと。」
「確かにそうなんだけどさ。遅刻すると毎回、教授に発掘作業に行かされるんだ。」
「へぇ。随分と熱心にその教授はあの地層を掘ってるんだね。スピルの力に興味があったりするのかな。」
ベットに腰掛けて旋風は言う。
「いやスピルのペンダントはたまたまだと思うけど。それにもう一回確認なんだけど、螺旋力って何?」
旋風のベッドによじ登ったネジが言う。
「はぁー。ホントに現代人は螺旋力を失ってしまったんだね。だから科学力が進歩したのか。まぁいいや。人はDNAと言う遺伝情報を持って産まれてくるんだけど、このDNAってのが二重螺旋をしているのさ。」
「DNA?」
「そう。その二重螺旋こそが生物の力なんだ。特に人間はその螺旋の力を扱うのが上手かった。だから森羅万象様々な事象をその螺旋力で制御していたのさ。」
旋風はベットに寝転びながら言う。
「スピルにならなくても森羅万象の力を力が使えたって言うの?」
「あぁ。その通りだ。太古の人々は螺旋力で火をおこし調理をしたり、螺旋力で水を生成して顔を洗ったり、螺旋力で土を操り家を作ったりした。その中でも螺旋力が飛び抜けて強かったのがスピルなのさ。」
旋風は寝返りを打ちながら言う。
「へぇ。太古の人々ってのは凄かったんだな。」
「旋風!何を言ってるんだい?今や君も螺旋力で風の力を扱えるじゃないか。風だけじゃない。今に他の力も手に入れられるさ。」
狐のネジは旋風の腹に乗って言う。
「まずは魔人を倒すための準備だ。他の力の源たるアクセサリーを集めよう。」
「集めようったってなんの情報もないんじゃ集めようがないだろ?」
「大丈夫。時が来ればアクセサリーの方から旋風、君に会いに来るさ。」
「アクセサリーが会いに来るねぇ。」
いまいち釈然としない旋風である。
そこに母から声がかかる。
「旋風、ご飯よー。」
「はぁーい。」
ふと旋風は思い立ってネジに聞く。
「ネジは食事とかどうするの?なんなら食べられる?」
「僕は妖狐だからね。食事は必要ないよ。」
「そうか。んじゃ俺、夕飯食べて来ちゃうから待ってて。」
そう言うと部屋を出て行く旋風。
1人残されたネジは独り言ちる。
「他のアクセサリーも出土されてると考えれば近いうちに力を取り戻したアクセサリーが暴走を始めるぞ。騒ぎが大きくなる前に回収しないと。」
ネジは部屋の窓から外を見る。まるでその視線の先にアクセサリーがあるかのように。
旋風が風のペンダントを掘り出してから1週間が経過したが特に日常生活に変わりは無かった。
いつも通り遅刻ギリギリで大学に行き、時には発掘作業に行かされる。
今日も旋風は遅刻をして発掘作業に向かわされる事になった。
発掘現場に到着した旋風は現場指揮を執っている助教授に挨拶に行った。
「曲 旋風、今日も1日お世話になります。」
「うん。教授から連絡は貰ってるよ。いつも大変だね、君も。」
「いえ。遅刻する自分が悪いっす。」
「そうだね。遅刻は良くない。じゃあ君はA1029区画を頼みます。」
そう言って笑いかける助教授。
旋風はA1029区画に向かうとそこには先客がいた。
「曲 旋風す。今日1日ここで発掘作業させて頂くっす。」
「あら曲君じゃない。久しぶり。」
そう言って振り返ったのは姫野 薫だった。
「あっ。姫野さん。お久しぶりです。」
今日もセミロングの髪をなびかせ、つなぎの胸元がキツそうなくらい自己主張している。
「ねぇねぇ。あれからネジ君とはどう?」
「いやー毎日一緒に来たがるんで、どうにか家に置いてくるのに毎回手間取ってますよ。あんな狐連れ歩いてたらおかしいじゃないですか。」
「じゃあ、今日はネジ君は一緒じゃないんだ?」
「いや。僕はいるよ。」
何もない空間から突如声がした。
旋風と姫野がぎょっとしながら声のした方向を向くと、段々と狐のネジの姿が見えてくる。
「ねじ?どうしてここに?」
「ぼくはいつも君のそばにいるよ。僕は妖狐だからね。姿も消せるんだ。」
「って事は毎日一緒に来てたって事?」
「うん。毎日一緒にいたよ。」
ネジはその場に浮きながら答える。
「だって家に帰ったら部屋にいたじゃん?」
「あれはちょっと先回りして部屋で待機してたように見せてただけさ。」
「なんだよ。じゃあ毎朝のやりとりはなんだったんだよ。」
旋風は頭を抱えて言う。
「旋風がなかなか僕を連れて行こうとしないからね。ちょっと意地悪したくなったのさ。」
「最初から透明になれるって知ってたら連れて来てたのに。」
ため息をつく旋風とは対照的に姫野はネジに興味津々だ。
「ねぇ。ネジ君。透明になったらネジ君には触れないの?それとも姿が消えるだけで触れたりする?」
「それは僕のさじ加減さ。普段旋風について歩いてた時は触れられないようにしてたけどね。」
「ねぇねぇ。もう一回透明になってみせてよ。」
「いいよ。」
段々と姿が消えていくネジ。
そのネジに向かって手を伸ばす姫野。
「あ!本当だ。姿は見えないけど、ここにいるわね。」
「うん。じゃあ次は触られないようにしてみるね。」
空中で何かを掴んでいた姫野の手が空振りする。
「あ!本当だ!触ってたのに消えちゃった。」
「どうだい。僕の能力も凄いだろ?」
段々と姿を表しながらネジが言う。
「凄い。凄い。どういう仕組みで消えているの?それが解明出来たら私の論文も凄いことになるわ。」
「妖気でやってることだからね。君達の言う科学に照らし合わせても理屈はわからないだろうさ。」
「そうか。残念。」
ホントに残念そうに自身のつま先を見る姫野。
頭を抱えていた旋風が立ち直る。
「まぁいいや。これからは朝の押し問答はいらないって事だな。透明になって着いてくるなら何処まででも着いて来いよ。」
「僕も流石にトイレとお風呂の時は着いていってないからな。」
「それは。それで頼むわ。」
旋風は力なく言う。
「さて、今日も発掘作業進めないと、でしょ?」
姫野に言われて思いだしたかのように旋風はハンマーとスコップを取り出す。
「じゃあ私は北側やってるから曲君は東側をお願いね。」
「はい。わかりました。」
二人が発掘作業に戻って暫くした頃、辺りが騒がしくなった。
「きゃー化け物よ!」
「うわー火の化け物に襲われるっ!」
「みんな逃げろー!!」
口々にそんな事を言いながら逃げ惑う人達。
みんな発掘作業チームの人達だ。
「どうしたんでしょうね。」
「火の化け物とか言ってたわよ?」
「旋風!スペルの出番かもしれないぞ。」
「魔人が現れたって事か?」
「いや。これは火のリングの力だろう。とりあえず向かうぞ。旋風!」
「あ。あぁ。わかった。」
逃げる人々とは反対に駆けていく旋風とネジに姫野。
「姫野さんまで?」
「私も地上界防衛隊だから。」
「覚えてたんだね。そうさ。薫も一員さ。」
「まったく。危なくなったら逃げて下さいよ。」
そう言って化け物の前に出て行く旋風達。
確かにそこには体全体に炎を纏い、前傾姿勢で手が地面につきそうな程長い化け物が立っていたのだった。
「旋風!螺旋力解放だ!」
旋風はペンダントを掴み叫ぶ。
「『螺旋解放』!」
その瞬間、旋風の身体が宙に浮いた。
そして身体の周りに二重螺旋を描くつむじ風が生まれ、旋風の身体を完全に隠す。
次の瞬間、眩いばかりの光を発する旋風。
風の束が消え去った後には全身鎧を身に着けた旋風がいた。
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