情けない少年の英雄譚

一章

田舎の少年13

　バイレンとラブルがテロムの町へ向かっているころ、テロムの町にいるティナの寮へ一通の手紙が届いた。

　「あら、お父様からだわ。　どうせまた来るとか書いてあるんでしょう」

　ティナは、呆れたように封を開け、読み始めた。
　手紙の内容は、明日、明後日頃に買い出しに町に来ると書いてあった。

　「ほらね。　どうせこんなことだろうと思ったわ。　まったく過保護なんだから」

　手紙に独り言をぶつけるティナは手紙をさらに読み続けた。

　手紙の最後に、今回はラブルも一緒に行くと書いてあった。

　ラブルも来る。
　見慣れない言葉に少し、ティナ少し動揺をした。

　ティナは考えた。
　ラブルは町に対して強う憧れを持っていた。
　せっかくだから、何かしらの楽しい思い出を作ってあげないと。
　何が良いかしら。
　村にはない美味しいものでも食べようかしら。
　後で、外に出て考えよう。

　ティナは身支度を整え、広場へと向かった。

　テロムの町は、広場を中心に町が発展していた。
　広場から延びる道、1つ1つに様々な店が構えられていた。
　ティナが広場の中心部へ差し掛かったころ、脇の道から見慣れた姿が出てきた。
　同じ村出身のバルトだ。

　「あら、バルトじゃない。　何をしているのかしら」

　ティナは、まだこちらに気付いていないバルトへ声をかけた。

　「あぁ、ティナか。　散歩だよ」

　バルトは、歩みを止めて答えた。
　そこから、お互いの近状を離すとティナがバルトへ言った。

　「そういえば、今日お父様から手紙が来て、ラブルが町に来るらしいわよ。　早ければ明日あたり到着するんじゃないかしら」

　その言葉を聞いたバルトは少し俯きかげんになった。

　「そうか。　少しは元気になってくれていると良いんだが」

　バルトは、ラブルが学校を退学になった時の事を思い出していた。

　「大丈夫よ。　うちで使ってあげているんだから。　どうせ、誰しも学校を出たら働くんだから、働くのが早いか遅いかだけだわ」

　ティナは自信満々にバルトへ言った。

　「まぁな。　ラブルの剣じゃ学校に通っていても騎士団には入れないだろうからな」

　バルトは遠くを見つめて呟いた。

　「ラブルの事よろしく頼むな。　親父さんにも良く言っといてくれな」

　そう言うと、バルトは去って行った。

　ラブルが退学になったのはバルトのせいではない。
　ラブル自信の能力のせいだった。
　しかし、バルトはフォロー出来なかった責任を感じている様だった。
　バッカみたい……。
　去っていくバルトを見送りながらティナは思った。

　さて、どこを下見しようかしら。
　ティナは広場から延びた横道を見渡していた。
　食品関係が立ち並ぶ道、衣類関係の道、雑貨関係の道とそれぞれの横道には色があった。

　無難に食品かしら。
　ティナは食品の道へと足を進めた。

　あら、これなんておいしそうね。
　大リザードの串焼きなんて田舎にはないからもってこいだわ。
　ちょっと試食してみようかしら。
　ティナは大リザードの串焼きを買って食べてみた。
　あら、おいしい。
　大味かと思ったら程よく脂がのってきてキメ細かい。
　これなら、ラブルも喜ぶわ。
　ティナは満足して思った。

　寮への帰り道、ティナは雑貨の道へと進んでいた。
　そこで1軒のアクセサリーの店で、1つの指輪が目に留まって足を止めた。
　何のこともない赤いガラスが付いた指輪だったが、ティナの目には素敵に映った。
　誰かこんな指葉をプレゼントしてくれないかしら。
　ティナは指輪に見惚れていた。

　広場の時計台から鐘の音がした。
　現実に戻ったティナは門限が来る前にと店を後にした。

　お店を手伝って少しは立派になったかしら。
　ティナは、ふぅとため息を一つ吐いて寮へ向かった。