11 / 14
一章
田舎の少年10
しおりを挟む
翌日、ラブルはいつもよりだいぶ早い時間にジックス商会に着いていた。
昨日の帰りがけに、バイレンより一緒に町へ仕入れに行くと言われたからだ。
町に行くことを願っていたラブルだった。
昨晩は、町に行けるとの思いが心の中で何度も何度も反芻し、興奮のあまりに中々寝付けずにいた。
やはり建物は大きいのだろうか。
人もたくさんいるのだろう。
貴族とかも見られるかもしれない。
どんな食べ物があるのだろうか。
ラブルは、こんなことを考えながらいつの間にか寝てしまっていた。
朝も予定より早くに起床をした。
朝食をすまし、身支度を整えてもまだ余りある時間だ。
もう家ですることも無くなってしまったラブルは、町への思いにかられ家を後にした。
まだ、辺りは薄暗いがラブルの足取りは軽やかだった。
ジックス商会へ着くが、扉が閉まっていた。
普通は寝ている時間だ。
早く着きすぎたラブルは特にすることもなく、しかたなく店の前で時間を潰していた。
まだ早い時間のせいか通りに人影はほとんどなく、店の壁を背にして少しだけ日の上った空をぼんやりと見ていた。
時たま歩いている人と、今日は早いんだね。
町に仕入れに行くんですよ。
なんて会話をしながらラブルは時間を潰していた。
辺りが明るくなり、通りを歩く人がまばらに増えてきたころ、店の扉が開いた。
「おお、ラブルか。 早いな」
まだ、寝間着姿のバイレンがそこに立っていた。
あくびをしながら背中を掻いていてまさに寝起きといった状態だ。
「おはようございます。 昨日はあまり寝れなくて……朝も早くに目が覚めて来てしまいました」
ラブルの言葉を聞いていたバイレンは、掻いていた手を止めた。
「じゃあ、しばらくここで待っていたのか?」
「はい。 町に行けることが楽しみで……」
ラブルがそう言うとバイレンは、目じりにシワを寄せながらその大きな手でラブルの頭を一撫でした。
「仕事熱心で感心感心。 じゃあ、俺は用意をするから楽しみのしているところすまないが、少し待っててくれ」
バイレンは、店の奥へと戻って行った。
しばらくすると、朝日に照らされながらフルールがやってきた。
「おや、早起きさん。 何を立っているんだい」
ラブルは興奮して寝れなくて、早く店に着いてしまった事をフルールへ話した。
「あんた、遊びに行く前の小さい子供じゃないんだから……」
フルールは、呆れながら言葉を詰まらせた。
「まぁ、それぐらい楽しみにしていたって事だよね。 楽しんでいらっしゃいな。 あたしはお店の準備をしてくるよ」
フルールは、ラブルの横を通り店内へと入って行った。
「やあ、お待たせ」
バイレンが店から出てきた。
マントを羽織り、動きやすそうな服、丈夫そうな革のブーツ。
いかにも旅人と行った風貌だ。
「行きは歩いて行くよ。 帰りは荷物の量によるが、おそらく馬車になると思う。 長い道のりになるが頑張れよ」
バイレンはブーツの紐を結び直しながらラブルへ話しかけた。
ラブルもバイレンにつられて靴の紐を結び直した。
いよいよだと逸る気持ちを押さえつけるように、いつもよりも念入りに力強く結んだ。
「さて、ラブル。 道中少し冷えるだろうからこれを着なさい」
バイレンは紐を結び終えると立ち上がり、ラブルにマントを渡した。
少し年季の入った茶色のマントをラブルは羽織った。
「ありがとうございます。 似合いますか? 旅人みたいですね」
ラブルはマントを羽織り、旅人の様な格好をした自分に少し照れていた。
「旅人だって、商人だって道中は何もかわらないよ。 さて出発しようか」
はいっと大きく返事をすると、ラブルは町への一歩を踏み出した。
昨日の帰りがけに、バイレンより一緒に町へ仕入れに行くと言われたからだ。
町に行くことを願っていたラブルだった。
昨晩は、町に行けるとの思いが心の中で何度も何度も反芻し、興奮のあまりに中々寝付けずにいた。
やはり建物は大きいのだろうか。
人もたくさんいるのだろう。
貴族とかも見られるかもしれない。
どんな食べ物があるのだろうか。
ラブルは、こんなことを考えながらいつの間にか寝てしまっていた。
朝も予定より早くに起床をした。
朝食をすまし、身支度を整えてもまだ余りある時間だ。
もう家ですることも無くなってしまったラブルは、町への思いにかられ家を後にした。
まだ、辺りは薄暗いがラブルの足取りは軽やかだった。
ジックス商会へ着くが、扉が閉まっていた。
普通は寝ている時間だ。
早く着きすぎたラブルは特にすることもなく、しかたなく店の前で時間を潰していた。
まだ早い時間のせいか通りに人影はほとんどなく、店の壁を背にして少しだけ日の上った空をぼんやりと見ていた。
時たま歩いている人と、今日は早いんだね。
町に仕入れに行くんですよ。
なんて会話をしながらラブルは時間を潰していた。
辺りが明るくなり、通りを歩く人がまばらに増えてきたころ、店の扉が開いた。
「おお、ラブルか。 早いな」
まだ、寝間着姿のバイレンがそこに立っていた。
あくびをしながら背中を掻いていてまさに寝起きといった状態だ。
「おはようございます。 昨日はあまり寝れなくて……朝も早くに目が覚めて来てしまいました」
ラブルの言葉を聞いていたバイレンは、掻いていた手を止めた。
「じゃあ、しばらくここで待っていたのか?」
「はい。 町に行けることが楽しみで……」
ラブルがそう言うとバイレンは、目じりにシワを寄せながらその大きな手でラブルの頭を一撫でした。
「仕事熱心で感心感心。 じゃあ、俺は用意をするから楽しみのしているところすまないが、少し待っててくれ」
バイレンは、店の奥へと戻って行った。
しばらくすると、朝日に照らされながらフルールがやってきた。
「おや、早起きさん。 何を立っているんだい」
ラブルは興奮して寝れなくて、早く店に着いてしまった事をフルールへ話した。
「あんた、遊びに行く前の小さい子供じゃないんだから……」
フルールは、呆れながら言葉を詰まらせた。
「まぁ、それぐらい楽しみにしていたって事だよね。 楽しんでいらっしゃいな。 あたしはお店の準備をしてくるよ」
フルールは、ラブルの横を通り店内へと入って行った。
「やあ、お待たせ」
バイレンが店から出てきた。
マントを羽織り、動きやすそうな服、丈夫そうな革のブーツ。
いかにも旅人と行った風貌だ。
「行きは歩いて行くよ。 帰りは荷物の量によるが、おそらく馬車になると思う。 長い道のりになるが頑張れよ」
バイレンはブーツの紐を結び直しながらラブルへ話しかけた。
ラブルもバイレンにつられて靴の紐を結び直した。
いよいよだと逸る気持ちを押さえつけるように、いつもよりも念入りに力強く結んだ。
「さて、ラブル。 道中少し冷えるだろうからこれを着なさい」
バイレンは紐を結び終えると立ち上がり、ラブルにマントを渡した。
少し年季の入った茶色のマントをラブルは羽織った。
「ありがとうございます。 似合いますか? 旅人みたいですね」
ラブルはマントを羽織り、旅人の様な格好をした自分に少し照れていた。
「旅人だって、商人だって道中は何もかわらないよ。 さて出発しようか」
はいっと大きく返事をすると、ラブルは町への一歩を踏み出した。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

異世界でのんびり暮らしたい!?
日向墨虎
ファンタジー
前世は孫もいるおばちゃんが剣と魔法の異世界に転生した。しかも男の子。侯爵家の三男として成長していく。家族や周りの人たちが大好きでとても大切に思っている。家族も彼を溺愛している。なんにでも興味を持ち、改造したり創造したり、貴族社会の陰謀や事件に巻き込まれたりとやたらと忙しい。学校で仲間ができたり、冒険したりと本人はゆっくり暮らしたいのに・・・無理なのかなぁ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる