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一章
田舎の少年8
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朝、ラブルはジックス商会にいた。
今日からここが自分の職場なんだと緊張する心を、すうっと深呼吸をし落ち着かせて店の中へと入った。
開店前の店内は、まだ無人だった。
「おはようございます」
ラブルは、店の奥へ声をかけた。
「はーい、おはようございます」
店の奥から、ラブルより1周りも2周りも大きな男が出てきた。
バイレン=ロングストンである。
バイレンはジックス商会の店主であり、この村指折りの有力者である。
ティナの父親であり、小さなころから面識があった。
大柄な体で、大きな声。
それでいて、柔らかい物腰。
ラブルのバイレンへの印象だ。
ラブルは、これかお世話になる身で粗相のない様に挨拶をした。
「娘から話はよく聞いているよ。 しかし、剣技の方は残念だった」
口に携えた髭を触りながら、残念そうにラブルへ話しかけた。
ラブルは少し伏目になりながらも、愛想笑いを浮かべた。
すると、バイレンはラブルの両肩を掴み目を見て言った。
「でも、卑屈になってはいけないよ。 これからは商いの時代だ。 先にこの世界に入れたことは、聖女様の思し召しだと思って頑張ってくれたまえ」
右手の親指を叩て大きく笑い、店の奥へと戻っていた。
バイレンと入れ変わって、今度はティナがやってきた。
黒を基調とし、首元に赤いリボンのあるタリスデンの一般的な魔法学校の制服を着ていた。
「おはよう。 お父様の声は笑い声は大きくて、朝からだと頭に響くわね」
しかめっ面をして文句を言うティナとは対照的に、彼女の青い髪が朝の爽やかさを強調していた。
「今日は卒業式だからもう行くわね。 ラブルは、お仕事頑張りなさい」
そう言い終えるとティナは店の外へと去って行った。
ラブルは、卒業式か……と羨ましくなりながら見送った。
さて。何をしたら良いのだろうか。
一人になった店先でラブルは途方に暮れていた。
何も指示されていない。
とりあえず、カウンターの中にいればいいのだろうか。
カウンターへ入ろうとしたラブルに、フルールが後ろから声をかけた。
「ラブル、おはよう。 今日からしっかりと頑張りな」
ラブルはフルールへの挨拶をすまし、何をしたらいいか聞いた。
「はじめは、朝晩店の掃除に在庫確認くらいかしらね。 慣れてきたらご主人様と町へ商品の仕入れとかに行くんじゃないかしら」
「町へ?!」
ラブルは大きな声を出してしまった。
もう行くことは無いと思っていた町へ行けるかもしれない。
嬉しくて表情が明るくなるのが自分自身でも分かった。
「お、その顔は良いね。 やはりお客様商売だから、明るくなくちゃね。 まずは、店先の掃除と中の掃除だよ」
にこりとしながら、フルールはラブルに箒とハタキを手渡した。
ラブルは、町に行けるかもしれないとの気持ちがこぼれた顔をしながら受け取り、ハタキを椅子の上に置き店先を履き始めた。
朝の掃除、店内の掃除、在庫確認、終わりの掃除を終え、1日が終わった。
「ラブル、お疲れ様」
フルールが、カウンター越しにラブルへお茶を差し出した。
ラブルはフルールにお礼を言い、お茶を飲んだ。
お茶を飲んだことで緊張の糸が切れたのだろうか。
ラブルは、自身が疲れているに気付いた。
「今日は初日だったから疲れたでしょう。 早く帰ってゆっくり休みなさい」
「ありがとうございます。 また明日、よろしくお願いします」
ラブルは、残りのお茶を一気に飲むと店を後にした。
今日からここが自分の職場なんだと緊張する心を、すうっと深呼吸をし落ち着かせて店の中へと入った。
開店前の店内は、まだ無人だった。
「おはようございます」
ラブルは、店の奥へ声をかけた。
「はーい、おはようございます」
店の奥から、ラブルより1周りも2周りも大きな男が出てきた。
バイレン=ロングストンである。
バイレンはジックス商会の店主であり、この村指折りの有力者である。
ティナの父親であり、小さなころから面識があった。
大柄な体で、大きな声。
それでいて、柔らかい物腰。
ラブルのバイレンへの印象だ。
ラブルは、これかお世話になる身で粗相のない様に挨拶をした。
「娘から話はよく聞いているよ。 しかし、剣技の方は残念だった」
口に携えた髭を触りながら、残念そうにラブルへ話しかけた。
ラブルは少し伏目になりながらも、愛想笑いを浮かべた。
すると、バイレンはラブルの両肩を掴み目を見て言った。
「でも、卑屈になってはいけないよ。 これからは商いの時代だ。 先にこの世界に入れたことは、聖女様の思し召しだと思って頑張ってくれたまえ」
右手の親指を叩て大きく笑い、店の奥へと戻っていた。
バイレンと入れ変わって、今度はティナがやってきた。
黒を基調とし、首元に赤いリボンのあるタリスデンの一般的な魔法学校の制服を着ていた。
「おはよう。 お父様の声は笑い声は大きくて、朝からだと頭に響くわね」
しかめっ面をして文句を言うティナとは対照的に、彼女の青い髪が朝の爽やかさを強調していた。
「今日は卒業式だからもう行くわね。 ラブルは、お仕事頑張りなさい」
そう言い終えるとティナは店の外へと去って行った。
ラブルは、卒業式か……と羨ましくなりながら見送った。
さて。何をしたら良いのだろうか。
一人になった店先でラブルは途方に暮れていた。
何も指示されていない。
とりあえず、カウンターの中にいればいいのだろうか。
カウンターへ入ろうとしたラブルに、フルールが後ろから声をかけた。
「ラブル、おはよう。 今日からしっかりと頑張りな」
ラブルはフルールへの挨拶をすまし、何をしたらいいか聞いた。
「はじめは、朝晩店の掃除に在庫確認くらいかしらね。 慣れてきたらご主人様と町へ商品の仕入れとかに行くんじゃないかしら」
「町へ?!」
ラブルは大きな声を出してしまった。
もう行くことは無いと思っていた町へ行けるかもしれない。
嬉しくて表情が明るくなるのが自分自身でも分かった。
「お、その顔は良いね。 やはりお客様商売だから、明るくなくちゃね。 まずは、店先の掃除と中の掃除だよ」
にこりとしながら、フルールはラブルに箒とハタキを手渡した。
ラブルは、町に行けるかもしれないとの気持ちがこぼれた顔をしながら受け取り、ハタキを椅子の上に置き店先を履き始めた。
朝の掃除、店内の掃除、在庫確認、終わりの掃除を終え、1日が終わった。
「ラブル、お疲れ様」
フルールが、カウンター越しにラブルへお茶を差し出した。
ラブルはフルールにお礼を言い、お茶を飲んだ。
お茶を飲んだことで緊張の糸が切れたのだろうか。
ラブルは、自身が疲れているに気付いた。
「今日は初日だったから疲れたでしょう。 早く帰ってゆっくり休みなさい」
「ありがとうございます。 また明日、よろしくお願いします」
ラブルは、残りのお茶を一気に飲むと店を後にした。
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