情けない少年の英雄譚

耳ふく 耳

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一章

田舎の少年5

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 学校を出たラブルは、すぐに帰宅しようと家に向かっていた。
 机に向かい座っていた時間が長かったせいか、日が沈みかけていて辺りが少し薄暗くなっていた。
 目線は下を向いて、肩を落とし歩幅小さく歩くラブルは、朝の爽やかさとは真逆の感情に支配されていた。
 あぁ、僕は試験に落ちてしまった。
 何年も誰も落ちていないのに、落ちてしまったんだ。
 僕だけ落ちてしまった。
 明日から、どうするか。
 町の剣技学校にはもう入れない。
 色々な思考がラブルの頭の中に渦巻いていた。

 ふらりと、ゆっくり歩くラブルの後ろより小早い足音が聞こえた。

 「ラブル、遅かったじゃないか。 試験はどうだった?」

 バルトが小走りしながら近寄って声をかけてきた。
 ラブルは顔を下にしたまま、ラブルは呟くように答えた。

 「……ダメだった。僕だけ落ちてしまった」

 何年も落ちる者はいない。そう思っていたバルトは、ラブルの予想外の返答に目をそらし道の端の木を見ながら言った。

 「そっか。……残念だったな」

 沈黙が2人の間に流れた。
 ラブルは試験に落ちて落ち込んでいる、町の剣技学校へ進学が出来ない。
 このまま働き口を見つけなくてはならない。
 バルトにはわかっていた。
 ラブルは真面目にやっていた。でも、だめだった。
 残念だった。
 これ以上の言葉がバルトには見つからなかった。
 何分黙っていただろうか。
 先にラブルが声を出した。

 「だから、僕はみんなと一緒に進学出来ない。 バルトは合格して進学するんだから頑張ってほしい」
 ラブルは、震える声を絞り出しすよう続けた。

 「僕も、村で何かしら出来る事をさがすよ」
 泣きそうになるのを堪えながら、ラブルは明るく努めようとした。

 バルトは、湿っぽくならない様にと我慢し、明るくしようと泣きそうなのを堪え声を震わせるラブルに、自身も泣きそうになりながら答えた。

 「でもな……たとえ試験に落ちて同じ道に進めなくとも俺たちは同じ村、同じ年で育った仲間じゃないか。 お互い頑張ろうぜ」

 そう言い終えると、稽古をした時の様にラブルの肩を1回叩き去って行った。
 叩かれた衝撃か、バルトの言葉でかわからないが、ラブルの目から涙がどんどんこぼれた。
 ただ、落ち込んでいる自分に優しい言葉をかけてくれたバルトの優しさがラブルは嬉しかった。

 帰宅したラブルは、すぐにベットへ向かった。
 試験に落ちてしまった現実から逃れるために、一刻も早く寝たかった。
 柔らかいベット倒れこんだラブルは、体を包まれることに安心感を感じていた。
 そして、ベットに身を預けてすぐに眠った。
 とても深く眠った。
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