褒めて強くなる！ 異世界最強バッファーは褒めるだけで人気者

第3話 「冒険者ギルドと、思わぬ騒動」

冒険者ギルドの大きな扉の前で、真人とソフィアは足を止めた。

「ねえ、真人」ソフィアが小声で言った。「あなたが異世界から来たって話、内緒にしておいた方がいいと思うの。目立ちすぎるわ」

真人は少し考えて頷いた。「そうですね。確かに変に注目されるのは避けたいです」

「じゃあ、田舎から出てきた初心者ってことにしましょう」ソフィアは微笑んだ。「私が案内している、ってことで」

二人で話を合わせた後、ようやく扉を開けた。

広間に一歩踏み入れると、活気に満ちた雰囲気が二人を包み込んだ。様々な種族の冒険者たちが、飲み食いをしたり、情報交換をしたりしている。

「わぁ...」真人は圧倒されながらも、興奮を抑えきれない様子だった。

ソフィアは真人を受付へと案内した。「こんにちは、新人の登録をお願いできるかしら？」

受付には、きれいな金髪の女性が座っていた。彼女は優しい笑顔で二人を迎えた。

「いらっしゃいませ。新人さんですか？ 珍しいわね、ソフィア」

「ええ、特別なの」ソフィアは軽く笑った。

真人は少し緊張しながら、必要事項を伝えた。

「スキルはお持ちですか？」受付嬢が尋ねた。

「えっと...『褒める』...でしょうか」真人は少し照れくさそうに答えた。

「褒める？」受付嬢は首を傾げた。

真人は軽く咳払いをして、受付嬢を見つめた。「あの、失礼かもしれませんが...とても素敵な笑顔をされていますね。お客さんを安心させる、温かい雰囲気があります」

受付嬢の頬が少し赤くなった。「あ、ありがとうございます。私はサラと申します」

その瞬間、サラの体が淡い光に包まれた。

ソフィアが急いで声をかけた。「サラ、鏡を見てみなさい」

サラが手鏡を覗き込むと、驚きの声を上げた。「あら...？ 肌のツヤが...今朝よりずっと良くなってる...」

ソフィアは満足げな表情を浮かべたが、その目には少し複雑な色が宿っていた。

サラは身を乗り出し、真人に顔を近づけた。「すごい！ 毎日私を褒めてくれませんか？ お礼はしっかりしますから！」

真人は顔を真っ赤にして後ずさりした。「い、いえ、そんな...」

この光景に、周囲の冒険者たちの注目が集まった。

「おい、サラがあんなに身を乗り出してるぞ！？」
「ソフィアと一緒にいる男は誰だ？」
「なんか、すごい雰囲気だぞ...」

ソフィアは腕を組み、少し不満げな表情を浮かべた。「ほら、サラ。落ち着きなさい、みんな見てるわ...」

サラは我に返り、咳払いをした。「あ、失礼しました。では、登録を承りますね」

手続きが完了すると、ソフィアが真人の肩に手を置いた。その仕草には、少し強い力が込められていた。「私と彼でパーティーを組みたいの。申請書をお願いできる？」

サラは少し残念そうな表情を見せながらも、パーティー申請の手続きを進めた。

その瞬間、大柄な男性が近づいてきた。

「おい、ソフィア！ パーティーを組むのは俺のはずだろ？」

ソフィアは軽くため息をついた。「もう、ゴンタ。何度も言ったでしょ。あなたとは組まないわ」

「なんでだよ！ 俺のほうが強いに決まってるだろ！」ゴンタは真人を睨みつけた。

ソフィアは真人の腕を掴んで、ゴンタに向き直った。その仕草には、明らかな所有欲が感じられた。「ごめんなさい。でも、真人は特別なの。他の男性とは全然違うのよ」

その言葉に、ゴンタは唖然とした表情を浮かべた。周囲からはどよめきが起こった。

真人は困惑しながらも、ソフィアの強い意志を感じ取った。

ソフィアは毅然とした態度で言った。「さあ、行きましょう真人。私たちの冒険はこれからよ」

二人が歩き去る中、ギルド内は騒然となった。サラは少し寂しそうに二人の後ろ姿を見送った。

真人の冒険者としての第一歩は、思わぬ騒動と共に始まったのだった。



【あとがき】
やっぱり誰でも褒めてもらいたいですよね。
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