上 下
37 / 46

第37話 衝撃の事実②

しおりを挟む
凛奈の告白に驚いた陽斗はさらに詳しく話を聞くことにした。

「え?凛奈、Vtuberやってたの?」陽斗は目を丸くして驚くと、凛奈はあっさりと答えた。

「うん、やってたよ。でも今はもうやってないんだ。」

「えっ、なんでやめちゃったの?」

「登録者がなかなか増えないし、増えないとモチベーション上がらないんだよね。クラスの子たちも流行りで一緒に始めたけど、すぐにネタも切れちゃって…。今も続けてるのは本当に一握りの子だけ。」凛奈は肩をすくめながら言った。

興味津々で続きを聞きたがった陽斗だが、凛奈の言葉を聞き納得する。

「たしかにVtuberってたくさんいるもんね。実際、同接一桁で頑張ってるVtuberもいっぱいいるし、応援してもらうのって難しいんだね。」

「うん。みんな最初は収益化だー!って始めたんだけどね。結局続けてる子も収益化まではまだまだかかりそうだし。」

「そうなんだ…。みんな絵とか機材とかってどうしてたの?中学生じゃ買えないんじゃない?」陽斗は疑問を投げかけた。

「今のVtuberって本格的なことしない限りスマホ1台で配信できるよ。だからみんなスマホでやってた。パソコンとかマイクとかしっかりしてないから人気出なかったのかもだけど、用意できないしね。絵は同級生のお姉さんが趣味で描いてて、みんなそお姉さんの絵でやってた。」

「そっか。簡単に始めたら簡単に辞められるし、Vtuberになるのが流行りってなんかすごいね。うちの学校でもやってる人いるのかもしれないのか。」

「そうだね。もしかしたら隣の席のあの人や、後ろの席のあの人が…って感じでね。うちらはみんな公表しながらというか、クラスのみんなでいろいろやってたから周りも知ってるけど、一人でひっそりやってたらわかんないもんね。」

「でも声でわかるんじゃない?」

「うーん、本当に親しい人ならわかるかもだけど、配信とかだと声を作ったりするから意外とわかんないかも。まぁ、うちのクラスが特殊なだけで世間的にはそんな流行りないと思うよ。」凛奈は少し笑いながら言った。

「そうだよね。確かにソラちゃんは学生でVtuberだけど、周りにVtuberやってるって人、凛奈が初めてだしね。なんて名前で活動してたの?」

「陽兄ちゃんに見られるのは恥ずかしいので黙秘します。」凛奈はおどけながらスマホを取り出し、笑顔で言った。「そんなことより、陽兄ちゃんもVtuberやってみたら?秘めたる才能が開花するかもしれないよ。」

「いやいや、俺は見て応援するだけだって。それより名前教えてよ。」

「黙秘ったら黙秘です。いろんなVtuberを見て私を見つけてみたら?声でわかるかもね。」凛奈は楽しそうに言った。

「それこそ星の数ほどいるのに探すのは難しいって。絵だけでも見せてよ。」

「絵見られたらバレちゃうじゃん。でもお姉さんの絵で活動してる友達は何人かいるから教えてあげるよ。…今も活動してるのはこの子とこの子かな。」凛奈はドヤ顔でスマホを陽斗に見せた。そこには、素人目ではわからないほどしっかり書き込まれた可愛いキャラクターたちが並んでいた。

「おお、普通にVtuberしてるね!でもなんで凛奈がそんなに自慢げなのさ。」

「いいじゃん、お姉さんの絵のファンなんだよ。練習に描いたキャラだからって何人分も用意してくれて、好きに使っていいよって言ってくれたの。だからみんなで好きなキャラ選んでVtuberデビューしてたんだ。まぁ、ほとんどのキャラは埋もれちゃったけどね。」凛奈は自慢げな表情で話し始めたが、最後の方にはしんみりとした顔で語った。

「すごいお姉さんだね。凛奈がVtuber続けてて、俺が配信見てる世界線もあったのかと思うと面白いね。」

「知らずに私の事応援してて、今日こうやって帰ってきたときに発覚するとか、世界はそんなに狭くないよ。」

「まぁ、続ける難しさは知ってるから、今応援してる子をしっかり応援してあげてよ。じゃないと辞めちゃうかも。」

「うん。なんか実際やってた人が言うと重みがあるね。辞めちゃうとか考えたことなかったけど、頑張って応援するよ!」

「でも、どうやって応援してるの?普通に見てコメントするだけ?」

「まあ、それもあるけど、切り抜き動画を作ってアップしたり、コメントで盛り上げたりしてるよ。まだチャンネル登録者は少ないけど、少しでも広まればいいなって思ってさ。」陽斗は照れくさそうに答えた。

「え、陽兄ちゃん切り抜き動画作ってんの?今度は私が驚く番じゃん。」

「始めたばっかだし、ホントにただ切り抜いて貼り付けてテロップ入れてるだけだよ。」

「それでも十分だよ。ほんとにちゃんと応援してるじゃん。」

「力になれてるのかわからないけど、力になれてたらいいなと思ってる。」

「いやー、陽兄ちゃんとVtuberの話でこんなに盛り上がるとは思わなかったなー。」

「俺もだよ。まさか従妹がVtuberやってたなんて、後で友達に報告しなきゃ。」

「もう昔の話なんだし恥ずかしいからやめて。」凛奈は少し照れくさそうに笑った。

と話をしていると、下からご飯ができたから降りてくるように呼ぶ声が聞こえた。

「はーい!」凛奈が大きな声で返事をして立ち上がる。リビングに戻ると、祖父母や両親が楽しそうに話をしている。

「陽斗、Wi-Fiのパスワード、わかった?」母が尋ねると

「うん、凛奈が教えてくれたよ。もうバッチリ繋がってる。」陽斗は微笑んで答えた。

その日の夜、陽斗は祖父母や家族との温かい時間を胸に、静かに眠りについた。帰省初日から衝撃的な事実を聞かされたが、これからの数日間が楽しみで仕方なかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

機械娘の機ぐるみを着せないで!

ジャン・幸田
青春
 二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!  そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。

ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした

黒足袋
青春
インターネット上で†吸血鬼†を自称する最強ゲーマー・ヴァンピィ。 日向太陽はそんなヴァンピィとネット越しに交流する日々を楽しみながら、いつかリアルで会ってみたいと思っていた。 ある日彼はヴァンピィの正体が引きこもり不登校のクラスメイトの少女・月詠夜宵だと知ることになる。 人気コンシューマーゲームである魔法人形(マドール)の実力者として君臨し、ネットの世界で称賛されていた夜宵だが、リアルでは友達もおらず初対面の相手とまともに喋れない人見知りのコミュ障だった。 そんな夜宵はネット上で仲の良かった太陽にだけは心を開き、外の世界へ一緒に出かけようという彼の誘いを受け、不器用ながら交流を始めていく。 太陽も世間知らずで危なっかしい夜宵を守りながら二人の距離は徐々に近づいていく。 青春インターネットラブコメ! ここに開幕! ※表紙イラストは佐倉ツバメ様(@sakura_tsubame)に描いていただきました。

優秀賞受賞作【スプリンターズ】少女達の駆ける理由

棚丘えりん
青春
(2022/8/31)アルファポリス・第13回ドリーム小説大賞で優秀賞受賞、読者投票2位。 (2022/7/28)エブリスタ新作セレクション(編集部からオススメ作品をご紹介!)に掲載。 女子短距離界に突如として現れた、孤独な天才スプリンター瑠那。 彼女への大敗を切っ掛けに陸上競技を捨てた陽子。 高校入学により偶然再会した二人を中心に、物語は動き出す。 「一人で走るのは寂しいな」 「本気で走るから。本気で追いかけるからさ。勝負しよう」 孤独な中学時代を過ごし、仲間とリレーを知らない瑠那のため。 そして儚くも美しい瑠那の走りを間近で感じるため。 陽子は挫折を乗り越え、再び心を燃やして走り出す。 待ち受けるのは個性豊かなスプリンターズ(短距離選手達)。 彼女達にもまた『駆ける理由』がある。 想いと想いをスピードの世界でぶつけ合う、女子高生達のリレーを中心とした陸上競技の物語。 陸上部って結構メジャーな部活だし(プロスポーツとしてはマイナーだけど)昔やってたよ~って人も多そうですよね。 それなのに何故! どうして! 陸上部、特に短距離を舞台にした小説はこんなにも少ないんでしょうか! というか少ないどころじゃなく有名作は『一瞬の風になれ』しかないような状況。 嘘だろ~全国の陸上ファンは何を読めばいいんだ。うわーん。 ということで、書き始めました。 陸上競技って、なかなか結構、面白いんですよ。ということが伝われば嬉しいですね。 表紙は荒野羊仔先生(https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/520209117)が描いてくれました。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

冬の水葬

束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。 凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。 高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。 美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた―― けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。 ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。

処理中です...