切り抜き師の俺、同じクラスに推しのVtuberがいる

第13話 大きな目標（陽斗視点）

冴木陽斗は学校へ向かう途中で中村亮太を見かけた。亮太は手に持っていたスマートフォンを見せながら興奮気味に話しかけてきた。

「陽斗、今日の夜、サクラちゃんの300万人達成記念ライブがあるんだよ！一緒に見ようぜ！」

陽斗は笑顔で頷きながら答えた。

「もちろん！俺もサクラちゃんのライブ、見ようと思ってたんだ。」

陽斗と亮太は学校の授業を終えた後、陽斗の家で一緒にサクラのライブを見ることにした。陽斗の部屋に入ると、二人はライブの開始時間に合わせてパソコンをセットアップし、飲み物やお菓子を用意して準備を整えた。

18時、ライブが始まる時間が近づくにつれ、二人の興奮は高まっていった。暗い闇が会場を包み込み、静寂の中で期待に胸を膨らませる。1万人の観客たちが一斉に息を呑んだ。

突如、ステージに設置された巨大スクリーンにカウントダウンが表示され、10、9、8…と数えるうちに、観客の興奮はピークに達する。そして、ゼロの瞬間、光が爆発し、華やかな音楽とともにステージに立つのは、虹ライブ所属4年目のVtuber「サクラ」。彼女の姿が現れた瞬間、会場は歓声で揺れ動いた。

「みんな～、集まってくれてありがとう！そして300万人達成記念3Dライブへようこそ！」

サクラは感謝の言葉を終えると代表曲を披露。観客たちは光るペンライトを振りながら彼女を応援する。サクラの声は力強く、同時に優しさを持ち合わせていて、画面越しに見ているオンライン視聴者たちにもその感動が伝わった。同時接続者数は瞬く間に10万人を超え、彼女の人気の高さを物語る。

「うわあ、サクラちゃん、本当に最高だな！」亮太は目を輝かせていた。「これが300万人の力ってやつだよ、陽斗！」

陽斗は亮太の興奮を共有しながらも、心の中で静かに考えていた。（ソラちゃんも、いつかこんな大規模なライブができたらいいな…）

曲が終わると、スクリーンには彼女の4年間の活動を振り返る映像が流れた。デビュー当初の初々しい姿、初めてのライブ、そして様々な挑戦を続ける姿が次々と映し出され、観客たちは感動に包まれる。サクラ自身もその映像を見ながら泣きそうな声で、「皆さんのおかげでここまで来られました。本当にありがとうございます」と感謝の言葉を口にする。

次に披露されたのは、ファンからのリクエストが多かった曲だった。この曲は彼女のデビュー1周年記念に発表されたもので、ファンにとっても特別な思い出が詰まっている。観客たちは一体となってペンライトを振り、その光景はまるで一つの大きな家族のようだった。

「この曲、あってこそのサクラちゃんだよな！」亮太が興奮気味に言った。

「うん、サクラちゃんの代表曲の一つだもんね。」陽斗は頷きながら返事をした。

ライブは続き、オリジナル曲やカバー曲が次々と披露される。特に盛り上がったのは、彼女が最近リリースした新曲。この曲の間、会場はまるで宇宙にいるかのような幻想的な演出が施され、観客たちはその美しさに酔いしれた。

「こんな演出、すごいな…。ソラちゃんもいつかこんな風にできたらいいのに。」陽斗が興奮気味に言う。

「そうだよな。だけど、ソラちゃんもきっとできるよ。陽斗がこんなに応援してるんだからさ。」亮太は励ますように言った。

トークコーナーでは、サクラがこれまでの活動を振り返り、思い出深いエピソードを語る。彼女の人柄が滲み出るその語り口に、観客たちは笑い、時には涙を流した。そして、事務所の先輩や後輩から寄せられたメッセージを紹介し、その温かい声援に感謝し、涙を流す。

「サクラちゃん、本当にみんなに愛されてるんだな。」陽斗は感心して言った。

「そうだよ。だからこそ、こんな大きなライブができるんだ。」亮太は頷いた。

ライブも終盤に差し掛かり、最後の曲が始まる。この曲は、彼女がデビュー2周年の際にファンへの感謝の気持ちを込めて作ったもので、ファンにとっても彼女自身にとっても特別な曲。歌い終えた後、サクラは深々とお辞儀をし、涙を流しながら震える声で感謝の気持ちを述べた。ついに同時接続者数は20万人を超えた。

「今日ここに集まってくれた皆さん、そしてオンラインで見てくれている皆さん、本当にありがとうございます。皆さんの応援があって、私はここまで来ることができました。次は、400万人記念ライブでお会いしましょう！」

その言葉に会場は再び歓声と拍手の渦に包まれる。観客たちはペンライトを振り、彼女の名前を叫び続けた。サクラはその光景を見つめ、心の中で次の目標に向けて決意を新たにする。

ライブが終わり、亮太は興奮冷めやらぬ様子で陽斗に話しかけた。

「すごかったな、陽斗！サクラちゃんのライブ、最高だったよ！」

「うん、本当にすごかった…。サクラちゃんのライブを見て、俺ももっと頑張らなきゃって思ったよ。」

「ソラちゃんのライブも、きっとこんな風に盛り上がるよ。お前が一生懸命応援してるんだからさ。」

陽斗は亮太の言葉に勇気づけられた。彼は心の中で、ソラのためにもっと努力しようと決意を新たにした。

その日の夜、陽斗は自室でパソコンの前に座り、自分の作った星野ソラの切り抜き動画見ていた。サクラのライブの影響で、彼の中に新たな情熱が芽生えていた。

「もっと良い動画を作って、ソラちゃんのファンを増やそう。」


次回、美優紀視点でサクラのライブが入ります。