御簾越しの君

八月 美咲

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   するりと絹紐が解かれ、帝が下袴と下着を脱ぎ捨てる。

 現れた帝自身はすでに引き締まった腹部に到達するほどそそり立っている。

 その大きさに佐理は怯む。

 だから帝はあんなにしつこく佐理の後ろを慣らしたのだ。けど、それでも本当にあんなものが入るのだろうかと怖くなる。

 帝は自分自身もたっぷりと蜜で濡らす。

 刻一刻とその時が近づいてくる。

「佐理、後ろからか前からかどちらがいい? 初めての時は後ろの方が楽だが」

「前がいいです」

 それは最初から決めていた。体勢的に楽なのは後ろだと分かっている。

 けれど帝の顔が見える前からがよかった。それに顔が見えないのは怖い。

「分かった」

 帝は少しだけ眉毛を八の字に下げ、口元を緩ませ微笑んだ。

 帝が覆いかぶさってきても佐理は上半身を起こしたまま、長いまつ毛を伏せている。

「佐理、怖いか?」

 佐理は小さく頭を振ったが、本当はここから逃げ出したいほど怖かった。

「私が佐理を愛してしまったばかりに、すまない」

 帝は佐理の頬を包むと、優しく口づけた。そのままゆっくりと佐理の身体を押し倒す。

 佐理の緊張をほぐすようにしばらく口づけを交わす。

 帝の唇が離れると、膝を立てた状態で足を大きく開かされる。

 佐理は羞恥で顔を横に倒した。

 帝は佐理の足の間に割って入ると、佐理の細腰を掴んで自分の方へ引き寄せた。

 確認するように佐理の菊口を一度指で撫でると、帝自身をそこへあてがう。

 帝が佐理の様子を伺っているのが分かった。

 頭の部分が押し付けられるが、固く窄んだそこがそれを押し返す。

「佐理、もう少し緩めてくれないと入らない」

 その声は優しい。

 もう一度帝が試みるが、同じように弾き返される。

 帝は自身をあてがったまま、佐理の頬に口づけた。

「佐理……」

「帝……」

「宗尊(むねたか)だ」

「むね……たか?」

「私の名前だ、佐理」

 帝の頭が佐理の菊口をぐっと押し開く。

「む……ね……」

 これ以上ないほど広げられ、圧迫感で息が止まりそうになる。

「たか、さ、ま……」

 佐理の唇が帝の唇で覆われる。

 ぐぷりと大きな頭を呑み込まされる。

 佐理の唇が開き、帝の舌が佐理の舌に巻きつく。

 一旦動きを止めたそれが、深い口づけとともに徐々に奥へと侵入してくる。

 無意識に帝の下から逃れようとするが、唇を奪われ、身体の中心に帝の熱い塊を打ち込まれビクとも動かない。

 愛する帝のものだと分かっていても、身体の中に入ってくる侵入者の圧倒的な存在感に怯えが引いてくれない。

 佐理の動物的な本能が懸命にあがくが、抵抗虚しく身体に深い雷(いかづち)が打ち込まれていく。

 今までに感じたことのない痛みとそこから迫り上がってくるような圧迫感、半端ない異物感に気が遠くなりそうになる。

 固く閉じられた目尻から、つっと涙が伝う。

「佐理」

 耳元で帝がうわずった声で囁く。

「全部、入った」

 うなずこうとしたが、瞬きをするのがやっとだった。

 帝はそのまま動かずに佐理を抱きしめ、佐理の目尻に伝う雫を小鳥がついばむように口づける。

 その優しさが佐理の中で猛り狂っているそれと、あまりにも相反していて、微かに口元に笑いがこぼれた。

「何がおかしい?」

 帝は佐理のわずかな表情の動きも見逃さない。それだけ佐理を労わりながら行為に及んでいるのだ。

「宗尊さま……、好きです」

 佐理の中で帝が大きく膨らんだ。

「佐理、動くぞ、少し我慢してくれ」

 佐理がうなずくと、帝は深く突き刺したものをそっと揺らした。次第にその揺れを大きくしていく。

 優しすぎる帝の愛し方に佐理は帝の背中に手を回ししがみついた。

「もっと激しくしてください……」

「ダメだ、佐理を壊したくない」

「壊して……」

 帝が佐理の中でカッと熱くなったのを感じ、いきなり激しく突き上げられる。

「後悔しても知らないぞ」

 大きく引き抜かれ、内臓ごと引きずり出されるような感覚に懸命に耐えていると、奥までいっきにえぐられる。

 それを何度も繰り返され、その度にあっ、あっ、と短い声が出た。

 鋭かった痛みが痺れを伴い、鈍痛に代わるがそれでも痛いのには変わりない。

 けれど帝によってもたらされている痛みだと思うと、もう怖くはなかった。自分の中に帝がいるのだと思うと嬉しかった。

 このままずっと帝を離したくない。

 佐理の内側が出ていく帝にすがるようにまとわりつく。

「佐理……そんなに……」

 帝が低い声で喘ぐ。

 佐理の両足を自分の肩にかけると、体重を乗せて佐理を貫く。

 深い挿入に喉がひっと鳴った。佐理の奥深い神域を帝はたて続けに犯す。

 リズミカルにゆすられ声がひっきりなしに漏れる。

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