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院長は玲衣に会ったのだろうか?
もし会ったなら、なぜそれを玲衣の家族に知らせないのだろうか?
草むしりなんてやっている場合じゃなかった。広い敷地の中で、誰も煌を見張っている者はいなかった。
煌は門を突破した。迷いはなかった。
少年院の周りで玲衣を探したが、玲衣は見つからなかった。通りがかりの人に尋ねると、玲衣らしき人物を駅のホームで見かけたという。
それが下りホームだと聞いて、煌はピンときた。玲衣が向かおうとしている場所がどこであるかを。
「玲衣、会いたかった。すごく」
「僕も、僕も煌に、あい、うっ、ひっく、たっ」
ちゃんとしゃべりたいのに、また涙が邪魔をする。
「差し入れありがとう、すごく嬉しかった。漫画のメッセージもちゃんと気づいたよ」
あの日、護送車に乗せられて行ったのは、やはり煌だった。
煌も玲衣に気づいていたが、両脇を警官に固められ、どうすることもできなかったという。
さっきまで煌も泣いていたのに、玲衣とは対照的に今は落ち着いて玲衣に静かに語りかけてくる。
「俺、ずっと玲衣に聞きたいことがあるんだ。玲衣がその、俺が警察に連れて行かれる時、最後にしてくれたあのキスって、どういう意味?」
「煌のことが好きだから……キスした」
ごくりと煌が唾を飲み込む音がした。
玲衣は煌を見上げた。
「煌が好きだからキスした。煌が、すっ」
煌は自分の唇で玲衣の唇を塞いだ。
「俺も玲衣が好きだ」
早口でそう囁くと、すぐにまた玲衣の唇を奪う。
『煌、大好きだよ』『俺も玲衣が好きだ』
何度も交わした同じセリフに、今、初めて命が宿る。
友情や親愛といった幾重ものオブラートに包んで隠していた、その言葉の本当の意味。
想いを堰き止めて、堰き止めて、これ以上耐えられないと決壊したような、激しく長い口づけだった。
窓の外に夕日が落ちていった。
二人は段ボールのベッドの上で抱き合い、いろんな話をした。
二人の夏の思い出話もたくさんしたし、お互いの今の話もした。そしてこれからのことも。
話しながら途中、何度もキスをした。
明け方になって少しだけ眠った。
やっと煌と会えたのだから眠りたくない、もっと話していたいと玲衣が言うと、煌は、続きは夢の中で話そうと笑った。
春先の夜明け前は寒い。
二人はしっかりと抱き合い体温を一つにして、同じ夢の中へと落ちていった。
目覚めると、すぐ目の前に煌の顔があった。
煌はすでに起きていて、玲衣を愛おしげに見つめていた。ふと、煌が撮った玲衣の動画のことを思い出した。
カメラの向こう側で、煌はこんな目をして玲衣のことを見つめていたのだろうか。
「おはよう玲衣」「おはよう煌」
微笑み合うとキスを交わす。
最初は小鳥のように優しくついばむだけのキスだったのが、次第に深くなっていく。
煌はいきなり玲衣を突き放すと顔を背けた。
「悪い玲衣、これ以上すると俺……」
煌はぎこちなく自分の下半身に手をやったが、煌の大きな手でも隠しきれないほど、それは服の下で膨れ上がっていた。
「僕が……して……あげる」
玲衣は煌の下半身に手を伸ばした。
「駄目だ、そんなの」
煌は玲衣の手を払いのけ、激しく抵抗した。
「どうして?」
「玲衣に、そんなことさせられない」
唇を噛み締め、顔を背ける煌の顔は苦しげだった。
「お願い、煌。させて」
煌は首を横に振る。
玲衣は煌の手に自分の手を重ねると、煌の頬に口づけながら囁いた。
「煌を気持ちよくしてあげたいんだ。ねぇ、いいでしょ」
玲衣の甘い懇願に、煌の手がゆるゆると解けていく。
煌の様子をうかがいながら、玲衣はゆっくりと膨らみを撫でた。
ぎゅっと目を閉じた煌の瞼がかすかに震えている。
しばらく同じ動きを繰り返すと、玲衣はそっとジッパーを下ろし、下着の上から煌に触れた。
「れ、玲衣っ」
煌が戸惑った声を上げたが、玲衣はそのまま煌の形を確かめるように撫でると、するりと下着から煌を取り出した。
もし会ったなら、なぜそれを玲衣の家族に知らせないのだろうか?
草むしりなんてやっている場合じゃなかった。広い敷地の中で、誰も煌を見張っている者はいなかった。
煌は門を突破した。迷いはなかった。
少年院の周りで玲衣を探したが、玲衣は見つからなかった。通りがかりの人に尋ねると、玲衣らしき人物を駅のホームで見かけたという。
それが下りホームだと聞いて、煌はピンときた。玲衣が向かおうとしている場所がどこであるかを。
「玲衣、会いたかった。すごく」
「僕も、僕も煌に、あい、うっ、ひっく、たっ」
ちゃんとしゃべりたいのに、また涙が邪魔をする。
「差し入れありがとう、すごく嬉しかった。漫画のメッセージもちゃんと気づいたよ」
あの日、護送車に乗せられて行ったのは、やはり煌だった。
煌も玲衣に気づいていたが、両脇を警官に固められ、どうすることもできなかったという。
さっきまで煌も泣いていたのに、玲衣とは対照的に今は落ち着いて玲衣に静かに語りかけてくる。
「俺、ずっと玲衣に聞きたいことがあるんだ。玲衣がその、俺が警察に連れて行かれる時、最後にしてくれたあのキスって、どういう意味?」
「煌のことが好きだから……キスした」
ごくりと煌が唾を飲み込む音がした。
玲衣は煌を見上げた。
「煌が好きだからキスした。煌が、すっ」
煌は自分の唇で玲衣の唇を塞いだ。
「俺も玲衣が好きだ」
早口でそう囁くと、すぐにまた玲衣の唇を奪う。
『煌、大好きだよ』『俺も玲衣が好きだ』
何度も交わした同じセリフに、今、初めて命が宿る。
友情や親愛といった幾重ものオブラートに包んで隠していた、その言葉の本当の意味。
想いを堰き止めて、堰き止めて、これ以上耐えられないと決壊したような、激しく長い口づけだった。
窓の外に夕日が落ちていった。
二人は段ボールのベッドの上で抱き合い、いろんな話をした。
二人の夏の思い出話もたくさんしたし、お互いの今の話もした。そしてこれからのことも。
話しながら途中、何度もキスをした。
明け方になって少しだけ眠った。
やっと煌と会えたのだから眠りたくない、もっと話していたいと玲衣が言うと、煌は、続きは夢の中で話そうと笑った。
春先の夜明け前は寒い。
二人はしっかりと抱き合い体温を一つにして、同じ夢の中へと落ちていった。
目覚めると、すぐ目の前に煌の顔があった。
煌はすでに起きていて、玲衣を愛おしげに見つめていた。ふと、煌が撮った玲衣の動画のことを思い出した。
カメラの向こう側で、煌はこんな目をして玲衣のことを見つめていたのだろうか。
「おはよう玲衣」「おはよう煌」
微笑み合うとキスを交わす。
最初は小鳥のように優しくついばむだけのキスだったのが、次第に深くなっていく。
煌はいきなり玲衣を突き放すと顔を背けた。
「悪い玲衣、これ以上すると俺……」
煌はぎこちなく自分の下半身に手をやったが、煌の大きな手でも隠しきれないほど、それは服の下で膨れ上がっていた。
「僕が……して……あげる」
玲衣は煌の下半身に手を伸ばした。
「駄目だ、そんなの」
煌は玲衣の手を払いのけ、激しく抵抗した。
「どうして?」
「玲衣に、そんなことさせられない」
唇を噛み締め、顔を背ける煌の顔は苦しげだった。
「お願い、煌。させて」
煌は首を横に振る。
玲衣は煌の手に自分の手を重ねると、煌の頬に口づけながら囁いた。
「煌を気持ちよくしてあげたいんだ。ねぇ、いいでしょ」
玲衣の甘い懇願に、煌の手がゆるゆると解けていく。
煌の様子をうかがいながら、玲衣はゆっくりと膨らみを撫でた。
ぎゅっと目を閉じた煌の瞼がかすかに震えている。
しばらく同じ動きを繰り返すと、玲衣はそっとジッパーを下ろし、下着の上から煌に触れた。
「れ、玲衣っ」
煌が戸惑った声を上げたが、玲衣はそのまま煌の形を確かめるように撫でると、するりと下着から煌を取り出した。
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