神様の悪戯

八月 美咲

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 岳の眼光は尖ったガラスみたいだった。

「え、逆になんでダメなのか聞きたいんだけど」

 岳は七凪のことを好きでいるのがそんなに嫌なのだろうか。もしそうだったら、ちょっと、いや結構傷つく。

 岳はベッドに上ってくると、七凪の肩をトンと突いた。人形のように七凪はそのまま後ろにパタリと倒れ込む。

「七凪、友情と愛情の違いを知ってるか」

 岳は七凪の頭を挟むように両手をついた。熱のこもった鋭い目で見下ろしてくる。

「そ、それは……」

「セックスだよ」

 岳は真顔でそう言った。その声は低く、怒っているように聞こえた。

「こいつとヤリたいと思うかそうじゃないか、それが友情と愛情の違いだよ。このままでいい? 共存? なんでダメなのか分からない?」

 けっ、と、岳は吐き捨てた。

「が、岳……?」

 岳はにやりと口角を上げた。

「なんだ、七凪がそのつもりなんだったら、俺も遠慮することなんてなかったんだな。嘘っぱちの媚薬なんかを飲んでる状態でするのは七凪も嫌だろうと思ってたけど、なんだ、俺なんかより七凪の方が積極的だったってことか。今まで我慢してきて俺、馬鹿みてえ」

「岳、なに言って……」

 岳はゆらりと倒れるようにして覆い被さってくると、七凪の耳元に唇を寄せた。

「共存、するんだろ?」

 七凪の耳たぶを噛むと、そのまま首筋に吸いついてきた。

「ちょ、ちょっと岳」

 岳を押しやろうとする手は、簡単にベッドに縫いつけられる。

「動画みたいに、激しくしたい」

 耳元で岳にそう囁かれ、全身がカッと熱くなる。

 岳は噛みつくようなキスの雨を七凪の首筋に降らせながら、骨太い指が服の上からせわしなく七凪の身体をまさぐる。

「ま、待って、岳」

「七凪は奥が好きだったな」

 鎖骨でうろついていた舌が、いきなり耳の奥に侵入してくる。

「うわっ」

 たまらずに大きな声が出る。

「もっとこの前みたいに甘い声出せよ」

 耳の縁に強く歯を立てられる。

「痛っ」

 岳の口が離れた一瞬の隙に、七凪はイヤイヤと頭を振った。

 すると再び首に噛みつかれる。岳の指は、服の下で頭をもたげかけた七凪の小さな新芽を見つけると、ぐりぐりと円を描きながら押してきた。

「や、やめろよ」

「こんなに固くなってるのに?」

 着ていたTシャツをいきなりめくられ、七凪の薄いピンク色の新芽があらわになる。

「七凪の乳首の色、薄くてゾクゾクする」

 じゅるっと、音を立ててしゃぶりつかれ、背中が反りそうになるのを、押さえつけられる。

 身体を捻ってもがいても岳はビクともしない。

 岳が真っ黒な大きな岩のように思えた。

「岳、こんなの嫌だよ」

「子どもはできないから安心しろ、俺たちの未来は何も変わらない」

 岳の手が七凪の下半身に伸び、ボタンを外す。

「ちょ、ちょっと」

 強引に下着ごと引きずり下ろさると、七凪の手の届かない遠くに投げられた。

 この時になって、七凪は岳が本気なのだとようやく悟った。

 はっきりとした恐怖が生まれる。

「ローションとかなんかある? 滑りをよくするやつ」

「な、何に使うんだよ、そんなの」

「いっか、一回出させるからそれ使おう」

 七凪の怯えた中心をぐにゃりと掴まれる。

 ひっ、と喉の奥が鳴った。

「おい、そんな声出すなよ。レイプしてるみたいじゃないか、俺たち両想いなんだろ」

 岳の指が後ろの窄まりに触れた。七凪の身体が硬直する。

「これからたっぷりここを使って七凪を抱いてやるよ。ハマるとめっちゃ気持ちいいらしいよ。どうする? 女で満足できない身体になっちゃったら子どもできないぞ。そうなったら未来が変わっちゃうな」

 岳は自分の唾液を七凪の縮こまった中心に垂らすと、手でしごき始めた。

「岳、やめて……」

「さっきから、嫌とか止めてとか、もっと可愛い反応できないのかよ」

 岳は手の動きを早めながら、七凪の新芽を音を立てて吸う。

 快感とはほど遠い痛みに七凪は奥歯を噛みしめる。

 岳とのセックスを考えたことがないわけじゃなかった。

 けれど、それはこんなのではなかった。決して、こんな形では。

 身体に与えられる刺激より鋭い痛みが七凪の胸に走る。

 七凪はぎゅっと目を閉じた。

 閉じた瞼の裏に、岳の後ろ姿が浮かんだ。

 サッカー部の部室で、みんなから少し離れたところにポツンといた岳。

 その背中は、とても苦しそうだった。

『あれ見た時、俺、めちゃくちゃ七凪のこと、そういう目で見てるんだって自覚して、これ以上七凪のそばにいたら俺、何するか分からないと思って』

 岳はちゃんと言葉にして伝えてくれたのに、その後も岳の苦しそうな視線を感じていたのに、気持ちを隠さなくていいから楽になったとか、一緒にいると居心地がいいとか、七凪は自分の身勝手さを激しく後悔した。

「岳、ごめん」

 ひっっく。

 嗚咽が漏れた。
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