俺たちの誓い

八月 美咲

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 数日前のことだった。

 学校の帰り道、暖は今年も暖のお父さんはイヴは仕事だと琥珀に伝えてきた。去年までだったら、それは今年も琥珀の家でクリスマスを過ごすという意味だが、今年は違う。

 だからうちには来るなよ。

 そう釘を刺されたのだと琥珀は理解した。

 暖は好きな子と暖の家で一緒に過ごすつもりなのだろうか? もしかしたらその子が暖のためにクリスマスディナーを作ってくれるのかもしれない。

 琥珀は精一杯の笑顔を作り、なんとか言葉を吐き出した。

「わかった。頑張れよ、暖」

 無理矢理作った琥珀の顔が妙だったのか、暖は変な顔をした。

「最近さ、琥珀、女子と一緒にいることが多くないか?」

 突然暖は話題を変えた。

 女子に一緒にいるというか、付きまとわれているというか、脅されているというか。

 暖の好きな子が誰であるかを探っている女子たちだったが、さすがに暖本人に特攻をかける勇気はないらしく、その代わりに彼女らが矛先を向けたのが琥珀だった。

 メロスとセレヌンティウスを演じた琥珀と暖が親友なのは周知の事実で、女子たちは暖の相手を琥珀が知っていると思っているようだった。

 琥珀は何度も知らないと言ったが、男子は暖の秘密を守ろうとしている、と聞く耳を持ってくれなかった。

 まるで琥珀が悪いことをしたかのように詰問され、しまいには嘘つきは地獄に落ちろなどと罵られた。

 この前なんて、階段で後ろから誰かに突き飛ばされて、危うく転げ落ちるところだった。あの時は階段下に地獄の炎が見えた。

 いつか大怪我をするか、本当に死んでしまうかもしれない。

 親友のために自らの命を捧げる。

 まるでメロスとセレヌンティウスだ。

 少し前の琥珀だったらこの状況に酔いしれていたかもしれない。が、今の琥珀は悪酔いしたように気分が悪かった。

 耐えきれずにおえっと吐くと、今まで見たことがないくすんだ色をした感情が出てきた。

 好きという気持ちがこんな色をしているとは驚きだった。恋はもっと真っ白で優しいものだと思っていた。

 琥珀の憧れる男同士の友情がいっそう美しく輝いて見えた。

 暖をただの親友だと思っていた時の自分に戻りたかった。あの時は、毎日が楽しくて、暖のそばにいられるのが嬉しくて、まさかこんなことになるとは思わなかった。

 今の琥珀は暖がそばにいると苦しくなる。

 なのに暖から離れたくないし、もっと近くに寄りたいと思ってしまう。

 一メートルという暖との距離が何倍もの長さに感じた。

 近くにいるのに遠い暖。

 琥珀は暖から一メートルの距離を保って暖の周りをぐるぐるするだけだった。
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